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雪もパワー、精神的な支えにした青森山田、選手権史上最北の王者誕生

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黒田剛監督を胴上げする青森山田高イレブン

[1.9 全国高校選手権決勝 青森山田高5-0前橋育英高 埼玉]

 95回を数える全国高校サッカー選手権史上、最北に位置する優勝校が誕生した。東北地域からはかつて57年度(第36回大会)、66年度(第45回大会)の秋田商高(秋田)、そして06年度(第85回大会)の盛岡商高(岩手)という2校の優勝校が生まれていたが、本州最北端に位置している青森県の青森山田高が初優勝。20年連続選手権出場中、過去には全国高校総体優勝などを果たしている「北の名門」がついに悲願の選手権日本一に輝いた。

 黒田剛監督は「雪国ということで日常の生活から楽ではない状況を強いられてやってきましたけれど、雪が我々のパワーになり、精神的な支えになり、(選手たちは)ストレスを感じながらもポジティブにやってくれました。かつての優勝校、秋田商業、盛岡商業がありますが、最北端ということで新たな雪国としての歴史を刻めたことが嬉しいです。雪国の豪雪地帯の中で選手たちが良く成長してくれたと思います」

 今冬も11月末のある日、青森市内は一面雪に覆われていた。高校サッカー界を代表する強豪校のひとつとは言え、常に満足な環境でサッカーができる訳ではない。雪に加えて、プレミアリーグEASTのアウェー戦では関東まで600km、700kmある距離を9時間、10時間かけてバスで移動。過酷な環境にあるが、FW鳴海彰人(3年)が「雪国だから雪国でしかできない練習もある。下半身が雪で鍛えられた。他のチームではできない身体を作ることができた」と語るなど、そのような中でも選手たちは貪欲に成長することを目指してきた。

 MF高橋壱晟(3年、千葉内定)は言う。「雪国なので関東だったり、関西だったり、雪のないところに比べたら厳しい環境だと思うんですけど、それをポジティブに捉えて厳しい練習をすることで山田は強いんだと思いますし、そういうことをやってきたからこそ、自分たちも試合で勝てるという自信が生まれてきています」。

 自分たちの置かれている環境に言い訳をするのではなく、プラスに考えてアドバンテージとしてきた青森山田。絶対に諦めないメンタリティーも日常によって育まれた。Jクラブユースの強敵と対戦するプレミアリーグや選手権で優勝するためにポゼッション、堅守速攻、セットプレーの攻守など何でもできるチームになるとこだわってトレーニング。MF住永翔主将(3年)が以前「一つひとつ細かいところを、細部にこだわると言いますけれど細かいところにこだわってやっていきたい」と語っていたが、選手一人一人が細部まで妥協せずに詰める努力をしたことでハンディキャップも埋めて見せた。

 黒田監督は「逆境とか我慢、辛抱という環境があればあるほど選手は良く考えるし、工夫するし、良く伸びる」。豪雪地帯という環境の中でも、自分たち次第で成長し、全国制覇することもできる。プレミアリーグと選手権の2冠で青森山田の選手たちは逆境の中で「良く考え、工夫し、伸びた」ことを証明した。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)

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