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「東京五輪への推薦状」第33回:新シーズン注目の“赤い迎撃機”、東福岡CB阿部海大

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東福岡高の注目CB阿部海大

 2020年東京五輪まであと4年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

 記録だけ見れば、準々決勝敗退。優勝を狙ったチームとして悔恨しか残らない結末にも思えるが、第95回高校サッカー選手権大会に臨んだ東福岡高において、確かなインプレッションを残した選手もいる。大会優秀選手にも名を連ねたDFの名は、阿部海大(2年)と言う。

 182cm、71kgという登録情報より、ピッチ上での姿はもう少し大きく見える。初戦となった東邦高との2回戦、惜敗となった東海大仰星高との準々決勝と自チームがボールを支配する流れの中で相手陣内から次々と飛んでくるロングボールをことごとく撃墜していく様は、そうした印象を後押しした。単に打点が高いだけでなくジャンプのタイミングも良く、落下点にも素早く入れる。「確かに安定感が出てきた」と森重潤也監督も認めるとおり、大会トップクラスの“迎撃機”だったのは間違いない。

 大分の強豪街クラブ・スマイスセレソンの出身で、元々は攻撃的な選手だった。小学生時代は主にMFとして、中学に入ってからはFWとしてプレーしていたのだが、中学最終学年を迎えてから「急に『ちょっとやってみろと言われた』」というセンターバックへチャレンジすることに。持ち前の身体的な特長が生きたこともあり、守備の楽しさを覚えながら、徐々に自分のポジションにしていった。

 今季開幕時点では主将の児玉慎太郎の相方が誰になるかは未知数の状態だったが、ハイレベルなポジション争いを制して、高円宮杯プレミアリーグなどを通じて自信を蓄えていく。「最初のころは先輩に萎縮してばかりだった」と振り返るものの、試合の中では「プジョルやチアゴ・シウヴァの戦う姿勢に憧れる」という負けん気の強さを発揮し、名門のレギュラーにふさわしい選手へと着実に成長してきた。

 自らの持ち味については「カバーリングやロングフィード」と、戦う姿勢や空中戦の強さについては言及しない。「自分では強いと思っていない」と言うように、基準点をより高いところに設定しているからだろう。利き足とは逆の左足から繰り出すロングボールも味があるのだが、この点についても「上手くないです」と納得できない表情を浮かべていたのも印象的だった。

 新チームでは守備の中心のみならず、チームの核となることも求められる。厳つい風貌とは異なる穏やかな語り口ながら、「しっかり守備を堅くして、1-0で勝ち切れるチームになりたい」と語る。その上で、近く結成されるU-18日本代表についても「選ばれてしっかり活躍したい」と意欲を隠さなかった。

 タフな空中戦、素早いカバーリング、両足での好フィードを備える新年度の高校サッカー界で期待大の注目株は、むき出しの向上心と共に飛躍を狙う新シーズンへ挑むこととなる。


執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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