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「明確な目標を持って生活しなさい」…学校の教諭から贈られたエジル少年への教え

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アーセナルのMFメスト・エジル

 プレミア屈指の司令塔としてアーセナルの攻撃をチームメイトのアレクシス・サンチェスとともに牽引するドイツ代表MFメスト・エジルレアル・マドリーに続き、アーセナルというビッグクラブでその才能をいかんなく発揮し続けるエジルが、まだゲルゼンキルヘンの街中の金網に囲まれたピッチでボールを蹴っていた頃のエピソードを、小学校時代の教師が語っている。

 シャルケのホームスタジアムであるフェルテンス・アレナにほど近い場所にゲサムットシューレ・ベルガ―・フェルド小学校にエジル少年は通っていた。エジルのクラスの担任を務めていたクリスティアン・クラッベ教諭は、当時を振り返りながら「メストは積極的に発言する子ではなく、いつもシャイな子だった。でもピッチ上の彼は一際目立っていた。ひとたびボールを持てば、別人のようになってしまうんだ」と話し、小学校時代からすでに彼が現在に続く才能の片鱗を覗かせていたことを明かした。

 エジルは、当時の自宅から3本の道を挟んだ場所にあった、3mほどの金網に囲まれたコンクリートのピッチでそのボールコントロールを磨いた。少年時代のエジルのもっとも身近な目標は、ともにそのピッチに通い詰めた兄のムトゥルだ。ムトゥルは「晴れていようが雪が降っていようが関係なく、時間があればボールを蹴っていた」と、当時を振り返る。

 エジルが初めて所属した地元のクラブチーム、DJKウェストファリアでコーチを務めていたラルフ・マローンは、エジルにとって初めての監督だ。彼はクラブのバーの一角に飾られた少年時代のエジルを写した写真を眺めながら、「メストを初めて見たとき、小さくて静かで内気な少年だという印象を受けた。でもピッチではとても積極的で、チームの中での存在感は一番だった」と話した。彼は得意げに「メストは間違いなくチームのエースだった」と続けた。

 現在は生命保険会社に勤務する25歳のミルコ・ランゲは、エジルの当時のチームメイトだ。彼は、「ボールを持てば彼(エジル)はなんでもできた」と話し、さらに続けた。「テクニックはずば抜けていた。当時から先のプレーを読む力も備えていたね。でも彼はさらにうまくなるために努力を欠かしていなかった」。

 エジルが11歳のころから5年間、教室で彼を指導する立場にあったクラッベ教諭は、今でもエジルとメールのやり取りをする間柄だという。彼は「生徒が将来サッカー選手になろうとトラック運転手になろうとパン屋の主人になろうと、私の仕事は生徒の人間性を育てることだ」と、自身の今も変わらない理念を話したうえで、次のようにエジルについて話している。

「メストはムスタファ(エジルの父)という最高のモデルを身近に置いていた。ムスタファはまさにイスラムの教えを地上で体現しているような人間だった。だから私はエジルがその父から受けた教えに沿って人間的に育てようと考えていた」

「私は彼が卒業する時に、『短期間で大金を稼ぐことを目標にするな』と、彼に伝えた。お金は重要ではないと強調したよ。彼ほどの才能の持ち主が、将来サッカーで大金を稼ぐことは明らかだった。だから金額にこだわるのではなく、明確な目的を持って生活し、その目的に沿うように稼いだお金を使うように教えたんだ。人生の目標や夢を持つべきで、きっと今の彼も彼自身の人生計画に基づいて行動しているはずだ」

 クラッベ教諭は先日行われたロシアワールドカップ欧州予選のトルコ戦の後にエジルに勝利を祝福する内容のメールを送ったらしい。するとエジルはすぐに感謝の返事を返したようだ。

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