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[新人戦]三重の注目、海星FW三輪翔真が選手権で得た収穫

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[1.28 三重県高校新人大会準々決勝 海星高1-0 近大高専 伊勢フットボールヴィレッジ]

 三重県高校サッカー新人大会の準々決勝が1月28日に行われた。今冬の全国高校選手権出場校である海星高と近大高専が対戦。海星が1-0で勝利し、2月4日に行われる宇治山田商高との準決勝へと駒を進めた。

「厳しい試合になるはず」。試合前、青柳監督が選手にかけた言葉が的中した。選手権に出場したため、新チームの発足は他に比べて遅く、連係はままならず。初戦となった先週の3回戦もスコアこそ3-1の快勝となったが、満足の行く内容とは言えなかった。加えて、今週は体調不良で練習参加できない選手も多く、この日は立ち上がりから右のMF桜井天海や、左のDF小澤和真がサイドを仕掛けたが、フィニッシュまで持ち込めない場面が続いた。前半32分にはPA左を抜け出したMF倉田人夢がゴール前に決定的なパスを入れたが、味方と合わず、スコアレスで前半を終えた。

 決定打が出ないまま迎えた後半は、序盤から肝を冷やす場面が続く。2分にPA左外で近大高専にFKを与えると、DF福永聖也が左足で直接シュート。鋭い軌道を描いた一撃だったが、わずかに枠を外れ、失点を回避した。勢いづいた近大高専は以降も左MF山中慧と右MF田中蒼竜がスピードに乗った突破からゴールを狙ったが、「選手権に出た海星に勝ちたいという想いが強すぎ、空回りしたせいで、本来のプレーが出せなかった」(亀井俊彦監督)ことから、要所でのミスが続きゴールが奪えない。

 耐える時間が続いた海星だったが、苦しい流れを断ち切ったのは10分のこと。昨季の選手権予選で5試合17得点を奪い、全国行きの立役者となったエースFW三輪翔真のプレーだった。チームメイト同様に今週は体調の不良のため満足に練習ができず。万全の状態とは言えなかったため、自身が主役になるのではなく、「声を出してチームを引っ張っていこうと考えていた」。また、本来は相手DF裏への飛び出しに長けたタイプだが、「今日はあえて、パスを多めにした」と新たに2トップを組むFW矢萩ルーカスを活かすべく、頻繁に後方に下がり、パスで攻撃を盛り上げた。引き立て役としての色を濃くする中でも要所はきちんと抑え、10分に右CKを獲得すると、利き足とは逆の左で上げたクロスをDF山田晋平が頭で合わせて先制に成功。終盤のピンチもあったが、無失点を保ち、白星を掴んだ。

 結果としては無得点で終わったが、三輪は「(得点とアシストの)どっちもできる選手になりたいので、今は練習と思って割り切っている」と意に介さない。初めての全国大会となった昨季の選手権は緊張から持ち味を発揮できず、無得点のまま初戦の聖和学園高戦で涙を飲んだ。悔しさを口にする一方で収穫も掴んでおり、「全国を経験したことで、気持ち的に楽になった。今日もこれまでよりも緊張しなかったので、選手権の経験は大きい。プレー面でもボールを持ったら、やれる手応えはあったし、強豪ともやり合える気はした。あとはメンタルや組織力を上げれば、全国でも勝てると思う」と口にする。

 主将を託された今季は、先輩に頼る部分も多かったこれまでとは違い、彼にかかる負担は大きい。「全て自分でプレーするくらいの気持ちでいる」と口にするように、点取り屋からなんでもできる絶対的な存在への変貌を誓う。イメージするのは京都橘高から京都サンガF.C.へと進んだFW岩崎悠人。この日は決して万全の出来とは言えない一戦ではあったが、「自分で点を決めて、周りも活かせる選手になりたい」という意気込みを十分に感じさせてくれる一戦であったことも確かだ。

(取材・文 森田将義)

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