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2冠王者・青森山田も「力負け」認める内容。1年後の全国タイトル獲得狙う尚志が東北新人戦制す!!

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東北制覇を果たした尚志高イレブン

[1.30 東北高校新人選手決勝 青森山田高 0-1 尚志高 相馬光陽サッカー場A]

 第16回東北高校新人サッカー選手権決勝が30日に相馬光陽サッカー場(福島)で行われ、16年度のプレミアリーグと全国高校選手権優勝の青森山田高(青森1)と尚志高(福島1)が対戦。前半4分にMF長谷秀皐(2年)が決めた決勝点によって尚志が1-0で勝ち、2年連続2回目の優勝を飾った。

 青森山田の指揮を執った正木昌宣コーチが「試合だけでなく個の部分でもほとんど負けていた。我々は選手権が終わってすぐだったこともありますけれども、それは言い訳にはできない。単純に力負けしたかなと思います」と語り、2冠メンバーのCB小山内慎一郎主将(2年)も「尚志さんにはフィジカルだったり、技術だったり、勝っている部分はなかった」と首を振った。今月9日に選手権決勝を戦った青森山田の準備が雪の影響などもあって十分ではなかったことは否めない。それでも、尚志は現状のベストメンバーでタイトルを取りに来ていた青森山田に思うようなサッカーをさせずに快勝した。

「東北では負けられない」という青森山田の意地と、「全国王者を倒す」とモチベーションが非常に高かった尚志との戦い。両校は試合前のウォーミングアップから張り合うかのように声を出し合っていた。そして、より入り良く試合をスタートした尚志が4分に先制点を奪う。

 中盤で浮き球をコントロールしたMF松本雄真(2年)が右サイドのスペースを突いた長谷へパス。切り返しから中へ仕掛けた長谷が思い切り良く左足を振り抜くと、ボールは手前のDFに当たって跳ね上がり、前目にポジションを取っていたGKの頭上を越えてそのままファーサイドのゴールネットに吸い込まれた。

 尚志の指揮を執った西田潤コーチは「入りが良かったので。10分戦えれば流れは来ると思っていた。(球際の攻防では)僕も思っていた以上に戦えるんだなと」。その言葉通り、球際の攻防や、攻守の切り替えの速さの部分含めて、試合に上手く入った尚志が波に乗る。特に効果を発揮していたのが守備面だった。

「FWが相手のSBを切って、ボランチが中盤のパスコースを消してロングボールを蹴らせる」(松本)という策が的中。加えて、今年は走れる選手が多いという尚志はFW中井崇仁主将(2年)を筆頭としたプレッシングで相手を狭い局面へと追い込んで行く。そして、青森山田がロングボールを選択した際には174cmの強力ヘディンガー、CB功刀舜也(2年)が豪快なヘッド。そして、コンビを組んだCB石井龍平(2年)や松本らがセカンドボールを良く拾って攻撃に繋げていた。

 青森山田は狭いスペースでのパス交換にチャレンジするが、なかなか前にボールを運ぶことができない。織り交ぜていたサイドチェンジもスピードが上がらず。ボールを握っていた時間帯もあったが、相手に対応されてクロス、シュートの数も増やすことができない。セカンドボールを引き寄せていた尚志はMF吉田泰授(1年)の鋭い仕掛けなど個々が自分の持ち味を出してチャレンジ。細かいパスで相手のファーストDFを剥がすなど簡単にボールを失わなかったこともあって前半は尚志ペースで進んだ。

 だが、青森山田も一瞬の隙を突いてチャンスをつくる。28分、相手の守りを上手く広げると、右中間のMF東城雅也(2年)が落としたボールから1トップのFW小松慧(1年)が抜け出す。だが決定的な左足シュートはGK宗像利公(2年)正面。後半8分にはこの日U-18日本代表に選出されたエースMF郷家友太(2年)が右足FKを狙うが、壁に阻まれた。

 尚志の中井は青森山田について「球際と空中戦は凄い強かったですね。DFの間合いとかやりづらくて。ここはファウルもらう場面とか、共通理解が凄かったと思います」。王者を良く封じ込んでいた尚志だが、それでも脅威を感じていたという。だが、彼らの「山田さんも泥臭くやってくるので自分たちも球際、寄せるところ、声出すところは負けないと前提にしてやっていた」(中井)という姿勢、鋭いアプローチは後半半ばを過ぎても変わらなかった。

 青森山田はMFバスケス・バイロン(1年)の強引な突破が2人がかりで止められるなどゴールが遠い。後半17分には192cmFW三国ケネディエブス(1年)を投入し、終盤にはCB蓑田広大(2年)を前線に置いてパワープレーで相手ゴールをこじ開けにいった。後半は青森山田が攻め続けていたが、高さを活かし切ることができず、逆にカウンターを食らって尚志MF加瀬直輝(1年)に決定的なシュートを放たれるシーンも。青森山田は後半アディショナルタイム、左FKにファーサイドで反応した蓑田が決定的なヘディングシュートを放ったが、シュートは枠右へ外れてしまう。結局、選手交代によって3ボランチや5バックも駆使しながら1点リードを守りきった尚志が1-0で勝利。2冠王者・青森山田に早くも黒星をつけた。

 中井が「山田さんは全国制覇していますし。ここで勝ってという気持ちは強かった」という青森山田戦勝利を達成。尚志の西田コーチは「俺たちもやれるんだという自信がついたと思います。全国優勝しているようなチームに対して俺たちもやれるんだと思えるようになる」とこの勝利による、さらなる効果を期待した。

 達成感のある1勝だったが、尚志の選手たちが試合後に口にしていたのは「もっとできた」という言葉。もっと落ち着いてプレーすれば、もっと良いサッカーで勝てるという手応えが選手たちにはある。目標はあくまで1年後の選手権制覇。そのために夏の全国高校総体でも4強以上を掲げるなどチームの意識は高い。だからこそ、中井は強敵撃破の直後に「ここはまだ通過点だと思っている。ここで満足したら終わりだと思うのでまた明日から引き締めてトレーニングしていきたい」。西田コーチが指摘したように守備面やビルドアップの課題も改善しなければならない。チームは選手権で10番を背負ったMF加野赳瑠(2年)やFW伊藤綾汰(1年)ら今回不在だった実力者たちも加えてまた貪欲に競争。今回、自信を手にした尚志がライバル以上の成長を遂げて、今度は自分たちが東北地方に全国タイトルをもたらす。

(取材・文 吉田太郎)

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