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[新人戦] 「強く、賢く、謙虚に」挑戦する武南が浦和南との伝統校対決を逆転勝ち

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後半34分、武南高はFW長谷川魁哉(9番)が決勝点

[2.5 埼玉県高校新人大会準々決勝 武南高 2-1 浦和南高 埼工大G]
 
 伝統校対決は武南が制す。平成28年度 埼玉県高校サッカー新人大会は5日に準々決勝を行った。ともに全国高校選手権優勝の歴史を持つ武南高浦和南高との伝統校対決は武南が2-1で逆転勝ち。武南は12日の準決勝で昌平高と戦う。

 今、チームに必要なのは自信と経験。武南は苦しい戦いを乗り越えて、また一つ、真剣勝負する機会を得た。この日は後方からボールを繋ぐ意志あるサッカーを徹底。だが、大山照人監督が「力が無いからそこの途中に起こるミスが多々あってね、苦しんでいるんですけれども。今は単純にボールのもらい方、受け方、基本からやらないといけない。時間かけてやっているんですけど、それができない」と説明するように、まだまだミスが多く、攻めきれないシーンが続いた。

 前半は主導権を握って攻めていたものの、32分にセットプレーからカウンターを受けて失点。浦和南はGK畠山拓海(2年)がキャッチから素早く左サイドのMF北郷誠一朗(1年)へ鋭いキックを通すと、北郷のスルーパスで抜け出したFW狩集洸哉(1年)が右足シュートをゴール右隅へ流し込んだ。

 だが、武南は失点から1分後に同点に追いつく。中央後方からCB岡野颯主将(2年)がFKをPAへ蹴り込むと、混戦から右サイドへこぼれたボールを10番FW金子海斗(2年)が振り向き様にクロス。ライナー性のボールをMF大山諒(2年)が上手く頭で合わせて1-1とした。

 それでも武南は乗り切れない。浦和南は自陣でボールを奪い取ると、素早く前線にボールを入れて速攻。キープ力高い10番FW直野椋太(2年)が起点を作り、北郷や交代出場のMF高橋亜総(2年)が抜け出してくる。これに左利きの司令塔・MF村岡功敏(2年)の絶妙な配球や右SB白井克樹(2年)の攻撃参加なども交えて武南ゴールへ迫った。

 それでも前に強いCB羽田蓮央(2年)と岡野中心に相手の攻撃を跳ね返した武南は後半19分に切り札のMF小島俊介(2年)を投入。中盤を独力で打開し、鋭いターンからシュートへ持ち込むなど存在感を放った小島によって攻撃が活性化した。その小島や左SB清水颯(2年)の正確なプレースキックも交えて相手に圧力をかけた武南は後半34分、左サイド後方からのFKをニアサイドへ飛び込んだエースFW長谷川魁哉(2年)が頭で合わせる。これがDFに当たってそのままゴール左隅へ。武南が逆転で4強入りを果たした。

 武南の大山監督はまだまだ選手たちがピッチで大人しいことを残念がる。「ピッチに立つとおとなしい。結局、自信がないと思う。自分で指図するのがいない。寂しい。まずは何かの機会で自信をつけていかないといけない」。接戦をものにしながら、少しでも自信をつけて、変わること。昌平や正智深谷高、西武台高など埼玉を勝ち上がって再び全国へ出場するためには現時点で差をつけられているライバルが多いが、まずはどの大会でもしぶとく準決勝、決勝まで勝ち上がる力をつける。そして上位との戦いの中で成長して埼玉を再び制覇する。

 長谷川は「開校以来(最も)弱いと言われている。その分みんなで頑張っていくこと。一人ひとりが上手くないと思うので、みんなの力を合わせて勝っていくしか無いと思います。それができたから今日も苦しい時間を乗り越えて勝つことができたと思う」と語り、岡野は「最弱なりの頑張りとかは大事かなと思います。今年一年の目標として『強く、賢く、謙虚に』というのがあってそれは常に意識しています。謙虚に、どの相手でも下からチャレンジャーで行く」と誓った。

 武南の名前で相手を飲み込むほどの力はない。それは選手たちも自覚している。だからこそ、どんな厳しいトレーニングでも食らいついて成長することだけを考えている。「リーダーとして引っ張っていけるように。声が少ないので自分が筆頭になって出していきたい」という岡野主将は「(周囲を)見返してやりたいというのはあります。必死に食らいついて、レベル高くどんどん吸収していきたいです。新人戦で言えば一戦一戦大切に戦ってタイトル取れればいい。まずは目先の試合を勝っていきたい」。個々の意識は高く、練習の最後に行われる21本のダッシュもスピードが上がってきたという。指揮官も選手たちの頑張りについては認めているだけに時間がかかっても着実に強さを身に着けていくこと。伝統校・武南は「強く、賢く、謙虚に」成長してタイトルを狙う。

(取材・文 吉田太郎)

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