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「東京五輪への推薦状」第34回:今季Jスカウト最注目の“屋久島の星”FW高橋大悟は、いざ日の丸を目指す

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神村学園高FW高橋大悟

 2020年東京五輪まであと4年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

 鹿児島市から南に約135km、島自体が世界自然遺産となっている人口1万人余りの小さな島がある。この屋久島にて生まれ育ったのが現在、鹿児島の神村学園高でプレーするFW高橋大悟(2年)である。

 1年生だった昨季からその名は九州に轟いていた。切れ味鋭いドリブルとゴールへ向かうどん欲な姿勢、左足から繰り出す鋭いシュートを武器にしてゴールを量産。サイドアタッカーとしてアシスト役にも回れる幅の広さを見せながら、プリンスリーグ九州で17試合21得点を記録して得点王を獲得するなど、各大会で結果を残してきた。

 すでにJクラブのスカウト陣からも自然と注目を集める存在となっており、開催中の第38回九州高校(U-17)サッカー大会でも高橋のプレーを観るために多くのスカウトが会場に集まっており、そのプレーに熱視線を送った。このオフ期間を利用してキャンプにも参加しており、そこでも高評価を獲得している。

 もっとも、本人の感触はまるで違っていた。

「高校年代でできていることがプロの中だとできなくなった。少し勘違いしていた。トータルの体力面にも差を感じたし、プレースピード、判断のスピード、パスのスピード。全部が足りていない」(高橋)

 神村学園・有村圭一郎監督が「キャンプに行かせてもらったことは大きかった」と語るように、帰って来てからは一段高い意識を持ってのプレーを見せている。今大会は1トップの後ろのシャドーの位置を任されているが、「あのポジションで課題が出ることが楽しい」と新しいトライに意欲的。突破からのシュートという持ち味は残しつつも、パスで魅せる場面が増えており、「自分を使いながら周りを使う意識」(高橋)の中で輝くなど、ワンランク上の質を見せるようになった。スカウト陣からは「パスがいい」という言葉も出ていたほどである。

 163cmと体格的には恵まれていないだけに、クレバーさで勝負できることはプロで戦う上でも絶対に必要な資質。今大会は厳しいマンツーマンマークを受ける中で、アイディアをひねり出しながら対応している様も印象的だった。単に上手いだけではない、強い向上心と創意工夫のマインドを持っているのも、高橋が強く注目されている理由である。その成果で、オフ・ザ・ボールの動きは着実に進歩している。

 中学時代にJFAエリートプログラムにも名を連ねていた経験を持つが、代表チームとはこれまで縁が薄かった。自身も「『別に代表なんて』という気持ちだった」と、それに対する欲も小さかったと言うが、今は少し変わってきているという。その理由は同じ鹿児島県のDF生駒仁(鹿児島城西高)がU-18日本代表に名を連ねていることである。

「(生駒)仁とは親友なんです。小4で県トレセンに初めて選ばれて島から出て来たとき、最初にできた友達が仁でした」(高橋)

 同県ライバル校のキャプテン同士であり、親友でもある生駒の存在が「代表に入りたい」という意欲に火をつけている。そしてもちろん、自身が生まれ育った場所への思いもある。

「屋久島を代表する気持ちはあります。島でサッカーをしている小さい子たちのためにも、僕のことを応援してくれている本当にたくさんの人たちのためにも」(高橋)。今季の高校サッカーで指折りの注目度を集める男は、小さな体に大きな期待と夢を背負い、さらなる進化に向けて走り続ける。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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