beacon

[MOM429]九州選抜FW儀保幸英(2年)_Jクラブ練習参加のFW、九州選抜ただ一人の沖縄組

このエントリーをはてなブックマークに追加

九州2部得点王のFW儀保、大会2日目では幾度も決定機に絡んだ

[2.18 第31回デンソーカップチャレンジサッカー刈谷大会 九州1-1(PK4-3)北海道・東北選抜 刈谷]

 自分で選んだ道に胸を張り、ひたすらにゴールを目指す。九州選抜で唯一の“沖縄組”であるFW儀保幸英(沖縄国際大2年=流通経済大柏高)は「個人としてFWは結果を残さないとアピールにならない」と言う。流通経済大柏高から沖縄国際大へ進んだFWはブレることなく、プロ入りを見据えて歩みを続ける。

 高校3年生時に流通経済大柏から東京学芸大への進学を希望。勉強に励んでいたが故障の影響などで、必須の実技試験を受けることができず。望みは叶わなかった。進学先を考える中、エスカレーターでの流通経済大への進学も選択肢にはあったが、「みんなと違う環境にいって、自分なりに成長した姿を見せたい」と地元・沖縄へ戻ることを決意した。

 そして沖縄国際大へ進学。「関東リーグもありますけど、自分は九州リーグで1年生から試合に出て、デンソーカップチャレンジとかの地域選抜にも選ばれて、たくさんの人が見る前でアピールしたい」。そう誓ったとおりに1年生時からチームでは主力に定着。チームは九州1部から降格してしまったが、1部の得点ランク4位タイとなる19戦16点を挙げていた儀保は九州選抜にも抜擢された。

 しかし関東1部校などと沖縄国際大の練習の質には差があった。「正直、沖縄の自分の大学は関東に比べたらレベルは低い。練習の時は“質が低いな”とか、“関東にいけばよかったかも”と思ってしまうときもあります」と言う通りだ。それでも「そういう考えは、自分で決めた道に対して甘い。そういう環境で何ができるかは自分次第」と前を向いて取り組んだ。

 そして大学2年目。沖縄国際大は1年での1部復帰を果たし、2部で得点王となる9戦14得点を挙げていた儀保は、2年連続でデンチャレを戦う九州選抜に選出された。大会初戦はSHで起用され、なかなかバイタルエリアで好機に絡めずにいたが、2戦目の北海道・東北戦では青木竜監督(鹿屋体育大)から「きょうは前で起用する」と言われていたとおりに待望のFWで途中出場した。

 1-1の後半20分からピッチへ入り、幾度も決定機に絡む。同27分にはDF綿引康(鹿屋体育大1年=前橋育英高)の右クロスからファーサイドでフリーで合わせるも枠外。終了間際のアディショナルタイム2分には左サイドからの折り返しをフリーで受ける絶好の決定機。しかしトラップで流れたボールをMF佐々木亜門(福岡大3年=福岡U-18)と“お見合い”する形となり、シュートで終われなかった。

「今日の試合を振り返って一番悔しいのは、最後のワンプレー。亜門さんと被ってしまった。トラップしたボールに二人で被って、どちらが打つか迷ってしまった。そこを思い切って打っていれば、PK戦へ持っていかずに勝てたと思うので、そこが悔しい。これから、そういうシーンがあったら絶対に譲らずにいきたい」

 1-1で90分を終え、試合はPK戦へ突入。両守護神が1人ずつ止め、北海道・東北4人目のシュートはクロスバー。PK3-3で最終キッカーの儀保へ順番は回ってきた。決めれば勝利、外せばサドンデス。プレッシャーのかかるシーンだったが、儀保は難なくGKの逆を突き、低い弾道のシュートをゴール右へ決めた。90分のなかでは悔しさあるシーンが続いたが、最後を持っていったのは沖縄で戦うストライカー。チームメイトたちの歓喜の輪の中心に儀保はいた。

 日常的に様々なJクラブと練習試合ができる関東や関西とは、また違った環境が沖縄にはある。沖縄で大学サッカーに打ち込む“メリット”として、儀保はJクラブのキャンプ地になっていることを挙げた。実際に冬にJクラブが沖縄キャンプを行った際に儀保は横浜F・マリノス湘南ベルマーレから呼ばれ、練習参加を果たしている。

「Jクラブへアピールする意味では九州選抜に入るのは大事。選抜に入って、結果を残せば“沖縄にもいい選手がいる”と思ってもらえるし、Jクラブのキャンプにも呼んでもらえる。呼ばれた先のキャンプでで示せたら、さらにいいアピールになるので、そういう部分で沖縄は恵まれているなと思います」

 また昨年はFC琉球から特別指定選手の打診はあったものの、大学1年生ゆえに授業などとの兼ね合いで練習参加がなかなかできずに見送った経緯がある。しかし、2017シーズンは長期休暇などを使い、練習に参加できる見込み。「どんどん成長したい」と上のカテゴリーでプレーできることに夢弾ませて、地道にアピールしていくつもりだ。

 高校時代を戦ってきた仲間たちとともに関東の強豪校へ進学するのではなく、沖縄で戦うことを選んだ。「今のところは良かったと言えます」と迷いない表情で話した儀保は「今回のデンチャレを振り返ったら、まだまだだなと思いますけど……この選択が間違ってないということを証明するためにあと2年、頑張りたい」と誓った。自らの足で、ゴールで未来を切り拓く。


(取材・文 片岡涼)
●第31回デンソーカップチャレンジ刈谷大会特集

TOP