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[新人戦]逆境乗り越えて「強くなる」という思い。立正大淞南が2度のビハインド跳ね返して延長V!!:中国

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2度のビハインドを跳ね返して優勝した立正大淞南高イレブン

[3.20 中国高校新人大会決勝 立正大淞南高 3-2(延長)岡山学芸館高 広島スタジアム]

 立正大淞南が2年ぶりの中国新人制覇!! 第9回中国高校サッカー新人大会(広島)決勝が20日に行われ、立正大淞南高(島根1)が延長戦の末、3-2で岡山学芸館高(岡山1)に勝利。2年ぶりの優勝を果たした。

 2度のビハインドを追いついて延長V。主将のMF松下昇太(新3年)は勝因について「昨日(準決勝)も最初先制されて、(監督の)野尻先生から『4-0、7-0の試合だけじゃなくてトーナメントでは難しい試合がある。それを乗り越えて強くなる』と言われていたので、先制されてもみんな慌てずにできたと思います」と強くなるために、逆境を乗り越えようとした力が大きかったと分析した。

 最初の試練は試合開始早々に訪れた。3分、岡山学芸館は右CKのクリアボールを拾ったMF浅野達郎(新3年)がクロス。これをニアサイドのMF前田光輝(新2年)が頭で合わせて岡山学芸館が先制した。

 だが、失点しても立正大淞南は慌てない。奪ったボールを次々と前線へ入れ、セカンドボールをMF岩田大和(新3年)らが回収。立正大淞南の前線の選手達が味方の縦パスやロングフィードに対して迷わず走り出している一方、岡山学芸館守備陣は準備が遅れ、出足の部分で完全に後手を踏んでしまった。

 岡山学芸館も敵陣のサイド深くまでボールを運んでクロスまで持ち込むものの、立正大淞南ペースで進んだ試合は前半34分、スコアが振り出しに戻る。立正大淞南はゴールキックの際にCB山田祐樹(新2年)が素早くボールをセットすると、すでに助走していたGK宮島岳(新3年)が間髪入れずにロングキック。このキック一本で左中間を抜け出したFW安野真央(新3年)が右足シュートへ持ち込む。これは岡山学芸館GK久保剛瑠(新3年)が止めたが、こぼれ球をMF福島颯斗(新3年)が繋ぎ、最後は3分前に投入されていたFW衣川絢誠(新3年)がGKをかわして同点ゴールを流し込んだ。

 後半も立正大淞南が圧力ある攻守を披露。特にCB竹中響哉(新3年)とCB山田の両DFの存在感が光り、岩田や交代出場の衣川が躍動感ある動きを見せた。一方の岡山学芸館も守備の準備に対する意識が高まり、また攻撃面でもサイドでのサポートが厚くなったことで持ち返す。そして立正大淞南GK宮島、岡山学芸館GK久保の両守護神の好守もあって1-1のまま進んだ試合は22分、右サイドから攻撃参加した岡山学芸館SB木下紘希主将(新3年)が絶妙な切り返しでPKを獲得。これを注目の10番MF池平直樹(新3年)が難なく右足で蹴り込んで岡山学芸館が再び勝ち越した。

 立正大淞南にとっては2度目のビハインド。だが、宮島が「失点したあとに粘り強く全員が走れたと思う、後ろは身体張って、前はその分点を決めることができた」という立正大淞南は失点から3分後の25分、MF山口海都(新3年)の左CKをCB竹中がマークしたDFよりも頭一つ上の高さから圧巻ヘッド。再び同点に追いついた。だが、岡山学芸館は怯まない。3点目を目指して攻めると、今大会通じてキレのある動きを見せていた浅野がドリブルシュート。そしてアディショナルタイム突入後の38分には左アーリークロスでFW川西真斗(新3年)が抜け出す。だが、立正大淞南GK宮島が果敢に飛び出して至近距離からのシュートをストップ。試合は2-2のまま延長戦に突入した。

 延長前半、岡山学芸館は浅野の左足シュートがゴールを捉えたが、GK宮島がファインセーブ。岡山学芸館の高原良明監督が「何度かサイドから崩せて決定的なところは作れたんですけれど、決めきれなかった」と悔やんだように、互いに一歩も引かずにゴールを狙いあった試合で次の1点を奪ったのは立正大淞南だった。

 延長後半5分、縦パスで抜け出したFW安野を岡山学芸館DFがファウルで止めて立正大淞南にPKが与えられた。このPKを安野が自ら右足で左隅に決めて今大会4戦連発となる勝ち越しゴール。この後、岡山学芸館は反撃したが、池平の右足コントロールショットがわずかに枠を外れるなど同点に追いつくことができなかった。

 2年ぶりの優勝を果たした立正大淞南の野尻豪監督は「これをどっちに今から進めていくか。(満足してしまうのではなく)もう一回冷静に自分を分析して、チームを分析してできないと『何なん、この優勝は』となるんで」と引き締めた。チームのベースにある走る部分、球際の部分に加えて、個人個人が自分の良さを出すことにチャレンジした今大会。指揮官は決勝の舞台に立って自分自身が成長のために何が必要か気づいた選手達、そして決勝戦をベンチやスタンドで見守ったサブ組の選手達を含めた競争激化を期待した。

 昨年からチームの主軸を担う山田は「明日の練習からもっと上げていって中国大会で満足せず、インターハイへ向けて、その先の選手権へ向けてやっていきたいです」と語り、松下は「中国新人で勝てたのは大きい。でも、それを無駄にしないために練習から全員でやっていく」と宣言。“中国地方で勝てなければ全国では絶対に勝てない”と中国王者獲得にチャレンジしてきた立正大淞南が、次は全国制覇を目指してさらなる成長を遂げる。

(取材・文 吉田太郎)

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