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[プレミアリーグWEST]神戸U-18は持ち味の繋ぎ欠くも、もう一つの武器で昇格組・米子北を攻略

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後半20分、FW小田裕太郎の決勝点を喜ぶ神戸U-18イレブン

[4.8 高円宮杯プレミアリーグWEST第1節 神戸U-18 1-0 米子北高 金鳥スタ]

 8日、高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2017 プレミアリーグWEST第1節で13年優勝のヴィッセル神戸U-18(兵庫)とプレミアリーグ初昇格の米子北高(鳥取)が対戦。神戸が交代出場のFW小田裕太郎(1年)が決めた決勝点によって1-0で勝ち、開幕戦を白星で飾った。

 試合後、勝った神戸の野田知監督は「選手にも話したんですけれども、課題がたくさん出た試合だったかなと。ただ勝ち点3取れたのは大きな結果だったと思います」とホッとした表情を見せた。緊張の開幕戦でなかなか思うようなサッカーを展開できなかった神戸だが、昇格組の米子北を撃破。勝ち点3を奪取した。

 技術、判断レベルの高い選手たちがしっかりとボールを保持しながら、長短のパスで相手の守りをこじ開ける魅力のある神戸だが、この日は「相手は(守備で)しっかりとスライドしてきてSBが絞ってくる。中央よりも徹底してサイドから揺さぶって行こうという指示は出していました」(野田監督)。だが、SHとSBの距離感が遠く、連動して攻めるシーンはわずか。MF佐藤昴(3年)を中心としたパスワークも攻め切る前にミスが起こってしまうなど、なかなか良い形の攻撃を増やすことができなかった。

 一方の米子北は相手の攻撃に対して集中した守りを見せていたが、中村真吾監督が「僕としては2人で(ボールを取りに)行ってほしいところで見ちゃって取り切れなかったり、ボールを奪えない。ボールの奪い方が綺麗じゃない」と語ったように、良い形でボールを奪いきれないために、カウンターから攻め切ってしまうことができず。失ったボールをすぐに奪い返そうとする神戸の前に、ボールを下げてしまったり、精度を欠いてタッチラインを割るなどチャンスを増やすことができなかった。

 神戸は27分に縦パスでFW秋山駿(3年)が完全に抜け出したがシュートは枠右へ。0-0で前半を終えると、後半開始から1年生ドリブラーの小田を右サイドへ投入した。その神戸はFW池田修志(3年)が左サイドからの仕掛けで相手の脅威に。野田監督も「スピードと仕掛けが彼らの特長なので、池田にしても、小田にしても特長は出してくれたと思います」と讃えた池田と小田の仕掛けなどによって後半に攻撃が好転した神戸が、そのサイド攻撃で先制点を奪う。

 20分、神戸は左サイドから素早いパス交換でPAを強襲。米子北DFが何とか足に当てるが小さくなったクリアを拾ったMF佐藤が左足を振り抜く。これは米子北GK佐藤壮太(3年)が反応良く弾いたが、こぼれ球を小田が右足で押し込んで神戸が待望の1点を奪った。

 米子北は後半開始直後にFW城市太志(3年)が連続シュート。守備ではCB三原貫汰主将(3年)の身体を張った潰し、また司令塔のMF佐野海舟(3年)が守備センスの高さを発揮するなどよく持ちこたえていたが、相手のサイド攻撃に対応が後手後手となり、痛恨の失点となった。それでも終盤、セカンドボールを傾けた米子北は左MF坂田二千翔(3年)の小刻みなタッチのドリブルなどで攻め返す。

 そして29分には三原からのボールが前線のMF高橋諒(2年)の足元に入る。上手く相手DFラインの前に出た高橋が右足を振り抜いたが、シュートはGK坪井湧也(3年)の正面。中村監督からチャンスで自ら仕掛ける「勇気」の部分も指摘されていた米子北は、対人の強さを見せるSB前川智敬(3年)やU-17日本代表CB小林友希(2年)ら神戸DF陣の前に最後まで1点を奪えず、プレミアデビュー戦は0-1での敗戦となった。

 米子北は1点差での敗戦だったが、中村監督は「これで良かった、結構できたと思わないで欲しい」と指摘。そして「ちょっとのことをやらないとウチは勝てない。ちょっと気を緩めたらやられるということに気づいてもらわないと」。勝敗や得失点に繋がるわずかな部分を徹底することを求めていた。

 一方、神戸の野田監督は勝ち点3獲得については評価していたものの、内容に対しては個人、チームに対して課題を口にしていた。特に神戸の生命線である繋ぎの部分はまだまだ。「きょうとかもなかなか出せなかったですね。判断レベル、技術レベルが物足りないのはあります」。この日はもうひとつの特長であるワイドからの攻撃を活かして勝ち点3を獲得したが、より“神戸らしく”勝つこと、それを表現できる選手を育成するために時間をかけてチーム、個をレベルアップさせていく。

(取材・文 吉田太郎)
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