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[MOM2100]青森山田FW中村駿太(3年)_転校から1か月弱の逸材ストライカー、「エースとして点を」の声に応える2発!

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後半28分、青森山田高FW中村駿太がこの日2点目のゴールを喜ぶ

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.22 高円宮杯プレミアリーグEAST第3節 大宮ユース 0-3 青森山田高 NACK5]

「エースとして点を取ってくれ」

 柏レイソルU-18から今年3月末に加入してまだ1か月弱。だが、青森山田高のFW中村駿太はその声に強い責任感を持って向き合い、貪欲にゴールを目指している。開幕戦(2-3浦和ユース)でのゴールに続き、この日は2発。自身のゴールによって、今回はチームを白星へと導いた。

 0-0で迎えた後半8分、青森山田はMF佐々木友が右サイドを強引に突破。そのラストパスを大宮ユースDFが右コーナー方向へクリアしようとしたが、ボールの先には青森山田の背番号11がいた。

「たまたま自分のところに来たと思うんですけど、(ボールが飛んでくる位置が)分かるというか、来るなと思ったところに行くと、来ることが多い」。その得点嗅覚でボールを感じ取った中村は、「迷ったらいつも外してしまう」と、迷わずに狭いニアサイドへヘディングシュートを叩き込んで先制点をもたらした。

 そして1-0のまま迎えた28分に再びチームに歓喜をもたらす。再び右サイドを強引に抜け出した佐々木の折り返しに反応。「GKとの距離が近くて身体を倒してファーに流し込まなければならない状況だったんですけれども、あの距離で決められなきゃ他の距離は決められない」と身体を倒しながらの左足ダイレクトでゴール左隅へ流し込んだ。

 勝負どころで決めた2ゴール。それは仲間達の期待に応える2発だった。いずれのゴール時もベンチのチームメートの下へ駆け寄って喜んだFWは「チームはギリギリで入ってきた僕を受け入れてくれて、『エースとして点を取ってくれ』と期待してくれて。まだ1か月経っていないんですけれども、ずっと一緒にやっているように僕のことを認めてくれて、『点を取って来い』と後ろから後押ししてくれるキャプテン(DF小山内慎一郎)だったり、仲間達がいて凄いありがたい。きょうもみんながゼロで抑えてくれたので、もうあとは僕が決めれば勝てるという状況にここ何試合かなってきているので、僕は点を取り続ける、結果を出し続けるだけかなと思います」

 柏U-12時代からゴールを奪い続け、“柏のロナウド”とも評されてきたストライカーは、U-16からU-19まで各年代別日本代表を経験。昨年のAFC U-19選手権に17歳で“飛び級”で招集されてU-19日本代表のアジア初制覇にも貢献している。柏トップチーム昇格が有力視されていたが、1年時のプレミアリーグから通算4度対戦して3敗している青森山田に「他には無いもの」を感じ、黒田剛監督の書籍やインタビュー記事を読むなどして「もっともっと成長したい」の思いを持って青森山田への転校を決意したという。突然の“移籍”だったが、青森山田の選手達は受け入れ、自身を「エース」として扱ってくれた。この日中村の2得点を演出した佐々木は「1-0とか0-0という拮抗した中で点を取ってくれるのは嬉しいし助かっていますね」と素直に讃えていたが、仲間への感謝、期待に応えたいという中村の思いが結果にも結びついている。

 黒田剛監督が「覚悟をもってきた分、受け入れも早いし、素直だし、対応力もある。素晴らしい人間」と評価する姿勢。柏U-18と青森山田とでは求められてくるものも変わってくるが、その中で自身の実績に奢ること無く、中村は全力で取り組み、走る部分での成長と課題を感じている。この日は1-0の後半18分にMF檀崎竜孔の左クロスに身体を投げ出して飛び込んだが、シュートはクロスバー直撃。「せっかく竜孔が攻守にハードワークしてくれた。それなのに、(自分が)どこかで1秒抜いてしまった」と唇を噛んだ。自分が走りきっていれば、チームメートの奮闘に応えることも、自身がハットトリックすることもできただけに悔しがった。

「他のメンバーに比べて走力が足りない。もっともっと攻撃でも最後のスプリントできなきゃいけないと思っている。練習から厳しい練習をしているので、毎試合毎試合スプリントの回数だったり後半のスプリントは増えているんですけど、まだまだ攻守に走れるはず。プレスバックだったり、プレッシャーかけたり、そして攻撃で走ることは足りない」。類まれな得点嗅覚に走力を加えて、どんな相手からでもゴールを奪えるFWになる。

 プロのスカウト達の存在、視線は無意識のうちに気になってしまうだろうと感じている。その中で何より優先することは決定的な仕事をし続けること。「チームの勝利に貢献する決定的な仕事ができればチームも勝てるし、僕もいい思いもできると思うので、『チームのために僕が』という気持ちで頑張っていきたい」と言い切った。明確なことは「最後のところで仕事をするということだけはどこにいても一緒」ということ。試合後にチームメートや父母たちから招かれて記念写真に収まっていた中村は、支えてくれている人達のために走って、何度も、何度もゴールを決め続ける。

(取材・文 吉田太郎)
●2017 プレミアリーグEAST

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