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[MOM437]駒澤大MF坂本和雅(3年)_「左足だけなので」と自虐連続も、出場10分のMFが決勝点

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強烈な左足を持つ駒大・坂本

[5.3 関東大学1部L第3節 慶應義塾大1-2駒澤大 江戸陸]

 ヒーローは「左足だけなので……」「左足しか使えないので」と苦笑いで繰り返していた。謙虚な態度をみせるのは駒澤大のMF坂本和雅(3年=聖和学園高)。後半35分に途中出場すると、同42分に得意の左足一閃で2-1の勝ち越しゴール。チームへ勝利をもたらした。

 関東大学リーグ第3節の慶應義塾大戦。先制した駒澤大だったが追いつかれ、一進一退の攻防が続いた。「もう少し早い時間帯に投入すべきかどうか迷っていた」という駒澤大の秋田浩一監督だったが、「残り10分くらいなら全力でやれるかな」と後半35分に坂本を入れる決断を下した。

 指揮官は「相手も疲れていましたし、彼(坂本)はスピードとドリブルが武器。左足のキックはものすごいパワーと切れ味がある。右足は“からきし”ですけど。外したりしても、一回だけチャンスを決めてくれれば」とワンチャンスにかける思いで24番を送り込んだ。

 1点を争う展開で“託された”坂本だったが、本人は至って平常心。「自分はあまり貪欲にいくタイプじゃないので、試合に出れたら頑張ろうかなと思っていました」と飄々と試合へ入った。

 「貪欲にいくタイプじゃない」という言葉とは裏腹に、坂本は積極的に勇猛果敢にドリブルで仕掛けた。この投入で潮目は変わる。MF大村英哉(4年=聖隷クリストファー高)とともに右サイドからチャンスを演出。すると後半42分、敵陣右で相手ボールをカットした大村が横パス。正面のSB熱川徳政(4年=藤枝東高)がためてからPA左へスルー。抜けた坂本が得意の左足シュートをネットに突き刺した。これが決勝点。駒澤大は2-1で勝利した。

「苦しいなか、1-1で試合に入っていって、勝ち点3が取れたのは良かった」とはにかんだ坂本は、得点シーンを「サイドからの攻撃でボールをつけてくるかなと準備していて、ファーストタッチがいいところにいったのでよかったです。フリーなのはわかっていたので前を向いて打つだけでした」と振り返った。

 “ジョーカー”として仕事を果たした3年生MF。今後は先発出場を目指しているのかと思いきや、「スタミナが続かないので……それは徐々にで」と苦笑い。「大学サッカーはみんなかなり走るので、自分はスタミナがついたら(先発で)出たいです」とマイペースを崩さなかった。

 本人は「右足は本当に蹴れない。左足だけなので」「左足しか使えない自分が」と自虐的に繰り返すが、その強烈な左足は坂本にしかない何よりもの武器。駒澤大が苦しいとき、救世主となるのはきっとその左足だ。

(取材・文 片岡涼)
●第91回関東大学1部L特集

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