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伝統の4原則を徹底。そして「勝ちたい」想いの強さで勝った鹿児島実が、鹿児島城西との「決戦」を延長戦で制す!

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延長後半アディショナルタイム、MF副島龍太郎の決勝点を喜ぶ鹿児島実高イレブン

[5.26 全国高校総体鹿児島県予選準決勝 鹿児島実高1-0(延長)鹿児島城西高 鹿児島県立サッカー・ラグビー場A]

 26日、平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(宮城)鹿児島県予選は準決勝を行い、延長戦の末、鹿児島実高が前回優勝の鹿児島城西高に1-0で勝利。鹿児島実は27日の決勝で2年ぶりの全国総体出場を懸けて神村学園高と戦う。

 0-0で突入した延長戦の後半9分に鹿児島実は好守を連発していたGK有村海斗(3年)を“PK戦要員”のGK林幹太(3年)へスイッチ。緊迫した攻防戦はPK戦決着へ向かおうとしていたが、アディショナルタイムにこの試合唯一のゴールが生まれる。

 鹿児島実は中央から連続攻撃。MF副島龍太郎(2年)、MF福井悠(2年)が立て続けにシュートへ持ち込もうとしたが鹿児島城西の青い壁がいずれもブロックする。試合を通してほぼ決定機を作らせていなかった鹿児島城西だが、「最後ついていけなかったですね」(小久保悟監督)。クリアしきれなかったボールがゴール前にこぼれ、最後は副島が右足で冷静に名手・泉森涼太(3年)の右横を破った。

「ずっと応援してもらっていたので感謝の気持ちを込めて行きました」という副島が大応援を繰り広げていた応援席へ向かって歓喜のダッシュ。ベンチ前では森下和哉監督やコーチングスタッフ、控え選手達が飛び上がって喜び、大興奮のスタンドの前では鹿実イレブンの笑顔が弾けていた。

 森下監督が「決戦」「決闘」と評していた鹿児島城西との伝統校対決。試合後に森下監督は改めて「戦いなんで。サッカー云々ではない。どっちが勝ちたいかの試合」と強調していたが、その言葉通りの「戦い」となった。

 ボールを保持して攻める鹿児島城西がサイドから攻撃を繰り出したのに対し、鹿児島実は球際激しい守りで迎撃。気持ちが前に出すぎてファウルになることも少なくなかったが、鹿児島城西に自由な攻撃を許さない。

 そして攻撃ではロングボールを蹴り込んでセカンドボールを自分たちに傾けようとする。これは鹿児島城西のU-18日本代表CB生駒仁主将(3年)らに跳ね返されていたが、それでも生駒が「自分たちはセカンドボールをなかなか拾えずに2次攻撃、3次攻撃を受けてしまっていた時があった」と振り返ったように、堅守・鹿児島城西に圧力をかけることにも成功していた。

 鹿児島実は前半19分、DFと上手く入れ替わったMF峰松朋哉主将(3年)がPAへ潜り込んだが、シュートは生駒が身体を張ってブロック。内転筋の痛みを抱えたまま強行出場した生駒がベストのコンディションではなかった鹿児島城西だが、それでも相手に飲み込まれることなく守り、決定機を作らせない。

 ボールを奪い合う展開が続く中、徐々にボールを支配する時間を増やした鹿児島城西はFW津留優晴(3年)が局面を幾度か打開。後半8分には右サイドをMF今福晃生(1年)が突破し、最後は10番MF大脇瑞城(3年)が抜け出したが、身体を投げ出して守った鹿児島実守備陣の前にシュートを打つことができない。

 森下監督が「信じて見ていられました。(戦術的な指示はなく)運動量や競り合いなど負けたらダメなところだけを言っていた」という鹿児島実はCB徳田順哉(3年)やCB市来原涼(2年)を中心に集中力を切らさず、ファイトを続けて、1チャンスをものにしようとする。

 鹿児島城西は後半アディショナルタイム、右CKをファーサイドの生駒が決定的な形で合わせたが、赤い壁に阻まれてゴールは奪えず、試合は0-0のまま延長戦へ突入。「延長になった時に監督から勝ちたいという気持ちが強い方が勝つというのを教えてもらって、みんなが一つになれたかなと思います」と峰松が振り返った鹿児島実は、延長後半5分に左から右サイドへボールを振られてPAでMF濱田康成(1年)に決定的なシュートを浴びる。そしてこぼれ球を津留に押し込まれそうになったが、GK有村が執念のセービングでゴールを阻止した。

 逆に、サイドからの仕掛けで相手を脅かすシーンも作り出していた鹿児島実は延長後半アディショナルタイムに森下監督が「最後に中を突破したのは大きかった」という中央からの攻撃を敢行。そして副島が劇的な決勝点を奪って大熱戦を制した。

「試合前に球際、セカンド、空中戦、1対1というところを必ずやれば勝てると監督から教えてもらっていたので、あとは勝ちたいという気持ちでどっちが上回るかというところでできたかなと思います」と振り返った峰松は、2年ぶりの全国大会出場を懸けた決勝へ向けて「決勝は鹿実の伝統である球際、セカンド、空中戦、1対1この4つをまず一人一人が意識して、負けないこと。最後は勝ちたいという気持ちを全員が持って、出れないメンバーも、出ているメンバーもみんなで優勝を取りたいと思います」と宣言。泥臭く勝利をもぎ取った鹿児島実が決勝でも“鹿実らしく”戦い抜いて全国切符を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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