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「応援してくれた人に申し訳ない」。世代代表するCB、鹿児島城西DF生駒仁は“強行出場”も県予選で姿消す

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鹿児島城西高のU-18日本代表CB生駒仁主将(中央、5番)は鹿児島県予選で無念の敗退となった

[5.26 全国高校総体鹿児島県予選準決勝 鹿児島実高1-0(延長)鹿児島城西高 鹿児島県立サッカー・ラグビー場A]

 今年の高校サッカー界を代表するCBは、夏の全国大会に出場する権利を掴むことができなかった。鹿児島連覇を狙った鹿児島城西高は、延長後半アディショナルタイムの失点によって鹿児島実高に0-1で敗戦。鹿児島城西のU-18日本代表CB生駒仁主将(3年)は敗戦の瞬間、天を仰ぐと、一瞬膝に手をつき、その後悔しさを振り払うように歩きだすと、チームメートたちに声を掛けながら整列へと向かっていった。

「自分のコンディションも自分の力だと思うので言い訳にはできないです」。試合後、負傷の影響を尋ねられた生駒は前を向いて言い切った。1か月ほど前から感じていた股関節、内転筋の痛みは一時回復が見られていたというが、再発。総体予選は3回戦まで欠場し、前日の準々決勝(対鹿屋高戦)で初めて14分間だけプレーした。

 この日対戦した鹿児島実は前線とダブルボランチに180cm台の大型選手が並べて、ロングボール主体の攻撃。生駒の状態はベストの状況ではなかったが、小久保悟監督は先発起用を決断する。

 生駒は前半19分に迎えたPAでのピンチを、シュートコースを切ってのカバーリングで阻止。その後も空中戦で相手の前に立ちはだかったり、突破を一人で止めたりするシーンもあった。また、攻撃ではCKから決定的なヘディングシュートも放ったが、走ることも、跳躍することも、蹴ることにも痛みが出て思うようなプレーができない。

「相手はロングボールが多いという情報もあったので、自分はそこで競り勝ってセカンドボールを拾わせようとしていたんですけど、競り負けたりしていたところもあったのでまだまだだと思います」。

 本来ならば、空中戦でも、対人でも、カバーリングでも違いを示して一人で守りきってしまうほどの逸材CBは、チームを勝たせたいという思いだけで身体を動かしたが、結果は惜敗。「鹿実、神村に勝って優勝と言う形が一番理想なんですけど、その手前で負けてしまったので応援してくれた人に申し訳ないと思っています」と唇を噛んだ。

 1年時冬、2年時の夏冬と鹿児島制覇を経験してきた生駒だが、今夏はチームに栄冠をもたらすことができなかった。今後の目標は冬のタイトル奪還。「コンディションも含めて全体的にチームも、個人もレベルアップして、何としても優勝しなければいけない。(近年)城西高校で一冠も取れていない代はないと思うので、選手権で優勝という目標に向かって頑張っていかないといけないと思います」と力を込めた。

 小久保監督は「点を取れる形がない」と語り、攻撃の質などの向上をチームに求めた。また生駒については「まず直させないと」と回復に専念させることを明言。注目CBはまずコンディションを回復させて、その後、冬へ向けて特に「ボールを奪い取る力」を向上させていくことを誓っていた。

 この日、Jリーグの複数クラブの強化担当者が会場で生駒のプレーを確認。生駒自身も将来への思いが強いが、「高校卒業して一番はプロに行きたいという気持ちがあるんですけど、今は(27日に3位決定戦が行われる)総体、選手権に向けて頑張りたいです。それが将来につながっていく」。

 何よりも鹿児島城西の勝利が優先。この日敗れた鹿児島実、そしてライバル・FW高橋大悟主将擁する神村学園高など、今年の鹿児島は全国屈指の激戦区となっているが、生駒は選手権予選で必ずチームメートたちと勝ち抜いて、真価を証明する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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