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終盤にはブーイングを浴びるも…“大人になった”U-20日本代表が第一関門突破

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U-20日本代表はグループ3位で決勝トーナメント進出を決めた

[5.27 U-20W杯GL第3節 U-20日本 2-2 U-20イタリア 天安]

 当然試合には勝ちたい。しかし、チームの目標はあくまで決勝トーナメント進出。そのためにU-20日本代表は、イタリア戦の試合終盤は“大人の戦い”に徹した――。

 グループ3位でイタリア戦を迎えた日本は、勝てば文句なしで決勝トーナメント進出を決め、得点を奪って引き分ければ他グループの結果により、グループリーグを突破する状況だった。難しい状況での試合に向けて内山篤監督は、「引き分けでもOKという余裕を持たないと」と選手たちをピッチへと送り込んだ。

 しかし、いきなりプランは狂う。前半3分にイタリアに先制点を献上すると、同7分には追加点を奪われて、早々に2点のビハインドを背負ってしまう。だが、同22分にMF堂安律(G大阪)の得点で1点差に詰め寄ると、後半5分に再び堂安がネットを揺らして2-2の同点に追い付いた。

 この状況でグループ内の順位は2位イタリア、3位日本と試合前と変わらず。しかし、日本は得点を奪ったことで、2-2のまま試合を終えれば決勝トーナメントに進出することに。ここで指揮官は「(引き分けにするかは)私が伝えました。2-2になった瞬間に、すかさず計算した」と慎重な試合運びを選択した。

「勝つに越したことはない中で、決勝トーナメントに勝ち上がるという、それが2位だろうが、3位だろうが、頭では勝ち点のことを意識しつつ、実際のピッチに立った時にプレーに代えるのが一番難しい。メンタルはこの大会を勝ち抜くうえで非常に大事。その部分の判断を彼らに2年半、ずっと言い続けてきた」

 その後、試合はこう着状態が続く。さらに後半40分過ぎには引き分けでも2位が決まるイタリアが最終ラインでボールを回す時間が続き、日本も無理にプレッシャーを掛けることはない。変化のない試合を見守る観客からはブーイングが飛ぶだけでなく、スタジアムを後にする姿も目立ち始めたように、決して終盤の試合内容は見応えのあるものではなかった。

 選手たちはもどかしさを感じつつも、すべては“決勝トーナメント進出”のためにと割り切っていた。2得点を奪った堂安が「あれもサッカーだし、自分たちが上に行くための作戦、戦い方。見ている人が楽しいプレーをするのはもちろんですが、勝ち上がるためにはああいう戦い方も大事」と語れば、1アシストを記録したMF遠藤渓太(横浜FM)も「あの時間は楽しくなかった」と苦笑しつつも、「これもサッカー」と続ける。

「本当は仕掛けたかったけど、自分だけの大会ではない。誰一人サッカーを楽しめていなかったと思うけど、これもサッカーだと思う。本当に勝つことよりも、ある意味、大きな経験ができたと思う」(遠藤)

 “大人の戦い”を実践して見事に第一関門を突破した日本。「新しい景色の中でトライできるのは非常に楽しみ」と決勝トーナメントに視線を移そうとする指揮官は、「引き分けがOKの中で引き分けにするのは非常に難しい。どうプレーしないといけないか、実際にピッチに立ってどういう状況になったらどのプレーを選択しないといけないか。そういう意味では素晴らしい90分だった」と“大人”になった選手たちを労った。

(取材・文 折戸岳彦)
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