beacon

磨き上げてきた技術で静岡準決勝突破!夏の日本一4回の清水東が25年ぶり全国出場へあと1勝!

このエントリーをはてなブックマークに追加

勝利を告げる笛が鳴り響くと清水東高の選手たちが両手を空へ突き上げた

[5.28 全国高校総体静岡県予選準決勝 常葉大橘高 1-2 清水東高 草薙陸上競技場]

 平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(7月開幕、宮城)への出場権を懸けた静岡県予選は28日に準決勝を行い、全国総体優勝4回の伝統校・清水東高常葉大橘高に2-1で勝利。19年ぶりとなる決勝進出を果たした清水東は、6月4日の決勝で静岡学園高と戦う。

 2-1とリードして迎えた後半はまさに「現代版・清水東スタイル」の真骨頂だった。選手間の距離感を非常に短くして、奪いに来る相手DFをショートパスでいなして、いなしてボールを繋いでいく。
 
 判断せずにパスをするのではなく、パスが難しければ身体を使ってボールキープ。スペースがあれば1年生FW佐野由尚やMF尾崎壮大(3年)、MF坂本翔(2年)がそれを縫うようなドリブルで前進していく。ゴール方向へ向かっていく動きやボールを保持する部分もまだまだ物足りない部分はあるが、それでも常葉大橘のDFは簡単にボールを奪うことができない。大半の時間帯で清水東がボールを保持したまま時間は進んでいった。

 例えミスでボールを失っても切り替え速い守備でインターセプト。さすがに勝利を意識したか、終盤はやや押し返される時間帯もあった。だが、最後までリードを守り抜いて2-1で勝利。責任感の強さを感じさせる守備で相手のカウンターを跳ね返したCB小林誉貴主将(3年)は「本当に嬉しいです。ずっと遠ざかっていたのでベスト4まで来たことが信じられなかったんですけど、ここで勝てて、また信じられなかったですね」。伝統の青いユニフォームをまとった「ブルーイレブン」はスタンドからの祝福の声と拍手の中で喜びを爆発させていた。

「寝ても覚めても全国だといつも言っている」と渡邊勝己監督が口にするように、目標は決勝進出ではなく、92年以来25年ぶりとなる全国大会出場。その伝統校は試合開始直後の先制点で乗った。5分、左サイドを縦に突いたSB永島周汰(3年)がDFを振り切ってクロス。これをファーサイドでフリーの右MF古島佑樹(2年)が1タッチでゴールへ押し込んだ。

 幸先良くリードを奪った清水東は落ち着いてゲームをコントロール。常葉大橘は足元の技術優れるFW大山幸央(3年)や俊足FW水野颯太(2年)が清水東の高いディフェンスラインの背後を狙って反撃する。清水東は小林とCB伊藤和哉(2年)の両DF中心に相手の攻撃を跳ね返していたが24分、常葉大橘はスピードに乗ってPAへ切れ込んだ大山がPKを獲得。これを自ら右足で沈めて同点に追いついた。

 この後、常葉大橘は大山のスルーパスでMF鈴木樺月(3年)が抜け出して決定機を迎えるなど、相手の背後を突く攻撃が効いていた。清水東にとってはやや苦しい時間帯となったが、その重い雰囲気をSB永島が圧巻の一撃で振り払う。

 33分、清水東は尾崎が右サイドでのワンツーなどを交えてボールを中央へ運ぶ。そして後方へボールを落とすと、「ミドルシュートを打つために」左サイドから中央にポジションを取っていた永島が右足一閃。弾丸ライナーの一撃がゴール左上に突き刺さると、清水東の指揮を執る長澤和明ヘッドコーチは高らかに両手を突き上げ、ベンチから一斉に選手、スタッフたちが飛び出した。駆け寄った永島中心にできた歓喜の輪。スーパーミドルによって清水東が勝ち越しに成功した。

 後半、清水東はボールを保持しながら攻める中でMF出口大瑶(2年)の左アーリークロスにMF松永駿平(3年)が飛び込んだり、カウンターから尾崎がPAへ切れ込むなど決定的なシーンをつくる。一方、常葉大橘も14分に左サイドを抜け出した水野が右足でゴールを破るも、オフサイドの判定。15分にはMF鈴木大晟(3年)が入れたFKがゴール前の混戦を抜けてゴールを捉えたが、清水東GK岡本和龍(3年)の好反応によって阻まれた。

 清水東は右SB良知敏也(3年)が相手FW水野とのマッチアップで粘り強く対応していたほか、坂本ら個々が粘り強い守備も見せる。「ねばれ はしれ 清水東」の横断幕の前で伝統の力も発揮。常葉大橘は終盤にMF高橋馨希(1年)がバイシクルショットで清水東ゴールを脅かしたが、これがGK岡本の正面を突くと、最後まで清水東にボールとゴールを守られ、初の決勝進出は果たせなかった。

 長く全国から遠ざかっていた清水東は15年に元磐田監督でOBの長澤ヘッドコーチを招聘。静岡県屈指の進学校である清水東はトレーニングも限られた時間の中でのものになっているが、「技術はテクニックだけじゃない。頭で考える、駆け引きもある」という長澤ヘッドコーチの下で徹底して頭と足元の技術を磨いてきた。

 県内上位で戦った経験の少ない選手たちはこれまで力を発揮できずに敗れてきた。だが渡邊監督が「力はあると思っている。それを出せていなかったですけれど、今はその力を出せている」。磨かれてきた力を表現できている今大会は選手権代表校の藤枝明誠高、名門・藤枝東高、そして中高一貫指導の強豪・常葉大橘も撃破。FW高原直泰(現沖縄SV)やDF内田篤人(現シャルケ)の時代も成し遂げられなかった全国復帰に王手をかけた。

 渡邊監督は「若者も清水東というと、おっと思ってもらえるようにしたいですね」。オールドファンの人気は絶大。この試合は在校生に清水の高校サッカーファンたちも加わって5000人を越える観衆が会場に駆けつけた。その後押しも受けての決勝進出。小林は「周りの人も期待してくれている。(決勝進出は)嬉しいですけど、全然満足していないです。来週勝って、全国でも勝って復活だと思っている」。地元の期待も背に戦う清水東は、決勝で昨年度全国8強の静岡学園と激突。この日、楽しみながら自分たちのサッカーを全うした清水東が決勝でも強敵に挑戦して、全国切符を掴み取る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

TOP