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勝負どころで示した攻撃力と逞しさ。湘南特別指定FW新井擁する市立長野が決勝進出!:長野

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後半26分、市立長野高は勝ち越しゴールを決めたMF木内駿兵(2番)とFW新井光が肩を組んでゴールを喜ぶ

[6.3 全国高校総体長野県予選準決勝 市立長野高 3-1 上田西高 長野Uスタジアム]

 3日、平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(7月開幕、宮城)長野県予選の準決勝が行われ、連覇を狙う市立長野高がMF山中麗央の2得点とMF木内駿兵の決勝ゴールによって、3-1で上田西高に勝った。市立長野は4日の決勝で松本一高と対戦する。

 勝利の瞬間、市立長野の選手たちは抱擁やハイタッチを繰り返し、心の底から勝利を喜んでいた。試合展開はほとんどの時間帯でボールを握って攻める市立長野に対し、守りを固めた上田西は良く人について対応。ボールを奪い取ってから速攻にチャレンジした。最終的に攻め続けた市立長野が押し切る試合となったが、昨年度の選手権予選準々決勝で上田西に0-1で敗れている市立長野の選手たちにとって、大きな壁を乗り越えたことには格別の喜びがあったようだ。

 湘南ベルマーレ特別指定選手のエースMF新井光は「後半、絶対に自分たちの方がチャンスが来ると(芦田徹)監督も言っていたので、焦らずにやって、こういう結果になって良かったです」とホッとした表情を見せていた。

 試合開始から非常にスピード感のあるパスワークと連動してスペースを狙う動き、そして高速ドリブルと正確な1タッチパスなど一段階上のパフォーマンスを見せる新井やFW赤塩浩純ら個も噛み合う市立長野が主導権を握った。そして、4分にはDF芳田竜之介の縦パスで右サイドを突いた山中がカットインで中央へ潜り込む。そして、マークの甘いDFを外してそのまま左足シュートをゴールへねじ込んだ。

 一気に市立長野が飲み込むかと思われたが、前半8分に早くもMF大場陸を投入して守りを修正した上田西が同点に追いつく。10分、自陣からのカウンターで持ち上がった10番FW根本凌が独力でDF2人を抜き去ってPAまで持ち込み、左足シュート。これは市立長野DFが何とか阻止したものの、上田西は直後の右CKをMF丸山圭大が左足で蹴り込むと、中央のDF田辺岳大が豪快なヘディングシュートでゴールへ突き刺して同点に追いついた。

 上田西はその後も根本ら前線に素早くボールを入れて攻めようとする。だが、市立長野は芳田やDF義家匠が厳しいチェックを見せるなど、ゴールに近づけない。そしてボールを握った市立長野はMF山口亮太らが仕掛けのパスを連発。29分にはPAでボールを受けた新井が決定機を迎える。だが、上田西はこの日、チームを鼓舞する声と再三の好守で目立っていたDF大久保龍成主将がシュートコースを遮って得点を許さない。

 1-1で迎えた後半、上田西はFW田嶌遼介のロングスローやロングボールから相手DFに圧力をかける。また、守備面では大久保と田辺中心に堅い砦を築き続けた。23分に市立長野はFW小林恭也の右クロスから新井が決定的なヘディングシュートを放ったが、ボールはゴール左外へ。一方の上田西も直後にショートカウンターから右クロスを田嶌が頭で合わせたが、枠に飛ばすことができない。

 特に攻め込みながらも得点できない市立長野にとってはストレスの溜まるような試合展開。慌てて攻めてボールを失うシーンも少なくなかった。だが、芦田監督が「多少、逞しくなってきました」と評するチームは攻撃で上手く行かなくても、相手アタッカー陣に守備で圧力をかけて前を向かせず、ボールを奪い切るなど自陣ゴールに近づけなかった。そして相手に研究された中で沈黙し、守り切られた昨年度の選手権予選と違う姿を見せる。

 26分、市立長野は小林が新井とのパス交換から右クロス。これを中央で赤塩が競ると、最後はこぼれ球を木内が頭で押し込んで勝ち越した。芦田監督が「赤塩が潰れてくれましたし、木内も良く詰めていた」と讃えた1点。市立長野イレブンは控え選手の下へ駆け寄った木内を中心に喜びを爆発させていた。

 その後、上田西は田辺を前線に上げて反撃。1チャンスを狙い続けると35分、根本のキープから右中間でパスを受けた田嶌が仕掛けて右足を振り抜く。だがシュートは右ポストをかすめて外側へ。対して、市立長野はアディショナルタイム突入後の37分、一瞬足の止まった相手の隙を逃さなかった新井が山中へスルーパスを通し、勝負を決定づける3点目を奪い取った。

 上田西の徹底した攻守を打ち破った市立長野が決勝進出。まずは決勝で勝利することに集中するが、全国上位とも言える攻撃力を備えた今年、選手たちはその先の躍進を本気で狙っている。同じく圧倒的な攻撃力で長野を制して全国大会初出場を果たした昨年は1回戦で瀬戸内高に1-5で完敗。選手たちはその悔しさも忘れていない。新井は「(昨年の全国初戦敗退は)チーム全体で忘れていないですし、まずは明日の試合で絶対に勝って全国で1勝でも多くというのは目標にしている」と語り、山中も「全国行っても自分たちのボールポゼッションを上手く使って圧倒的な攻撃力を見せて勝っていきたい」と誓った。目の前の難敵・松本一の壁を破って、全国に再挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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