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偉大なるレアルとC・ロナウド…未知の領域を歩む者たちの金字塔

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FWクリスティアーノ・ロナウドは不朽の名声を得るための道を築き始めた

 世代最高の選手を擁する最高のチーム――。

 そのフレーズが、UEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL)において12回目の優勝を獲得したレアル・マドリーとFWクリスティアーノ・ロナウドを表す唯一の言葉と言っていいだろう。

 ジネディーヌ・ジダンは1958年以降のレアルの歴代監督のなかで最高の結果を手にした。1958年、当時のルイス・カルニグリア監督はその前年にホセ・ビジャロンガが成し遂げたのと同様にリーグとヨーロッパカップの2冠を達成した。それ以来、これまで国内リーグと欧州CLの2冠を獲得した監督はいなかった。

 アリゴ・サッキの率いたミランの偉業に匹敵するチームが現れるまでかかったのは27年。そして、このレアルに匹敵するチームは現代には存在していない。

 昨今、ファイナルへの道は危険に満ちており、どんなチームであれ簡単に進むことは不可能だ。レアルでさえ例外ではない。しかし、彼らはその見えない壁を突き破って見せたのだった。

 試合は決勝らしく拮抗するものになると思われた。カーディフに到達するまでの道のりでユベントスが許したゴールはわずか3つであり、バルセロナとの2試合ではともに無失点に抑えていたのだから。

 しかしこの夜、レアルは4度ネットを揺らしてみせた。ロナウド、カゼミーロ、マルコ・アセンシオが次々とスーパーなゴールでジャンルイジ・ブッフォンを破る。ユベントスは国内のタイトルと合わせての3冠獲得を狙っていたチームであったが、この日の彼らはまるで違うチームのようであった。

 レアルが見せた安定感やのしかかるプレッシャーへの対処、といったものは一朝一夕で簡単に手に入れられるものではない。勝つことに慣れたチームのみが得られるものであり、彼らにとってはたとえファイナルという特別に思えるような舞台であっても、そう捉えないでいられるのである。

 試合前、ユベントスは綿密に、そして入念にウォーミングアップをしていたが、レアルのほうは異なった。リラックスした雰囲気でロンド(ボール回し)に興じ、チームメイト同士で抱き合ったり、笑顔も多く見られた。彼らはもう何度もこの舞台を経験してきたのだ。チャンピオンズリーグ決勝を戦いに来た、というよりも彼らが書き連ねてきた脚本を仕上げに来たと言うほうが間違いはないのかもしれない。

 もちろん、決勝に進出したチームとして、ユベントスもなんとか手を尽くしてはいた。ブロックを崩し、紫のユニホームを身にまとった相手チームのリズムを崩そうと脅威を与えたものの、それは長続きしなかった。欧州CL決勝史上最高のゴールの一つと言っても良いほどのマリオ・マンジュキッチのスーパーゴールが勝負を決めるウィナーのものとならなかったことは残念と言うほかない。結果的にカーディフを沸かせたアクロバティックな得点は、レアルの勢いを削ぐことにはつながらなかったからだ。確かに、彼らが普段戦っている相手とは程遠いほどのクオリティを持つ相手であり、ユベントスがそのレベルに近づくためには魔法が必要だったといっても良いだろう。

 レアルは、彼ららしい試合をした。彼らは終始試合をコントロールし、ゴール前では破壊的なプレーを見せた。ロナウドの先制ゴールの際、ユベントスの守護神、ジャンルイジ・ブッフォンにできたのはわずかに彼の履いているショートパンツを汚すだけであった。

 ユベントスは自分たちを信じ、そして希望を胸にこの決勝に挑んだが、ポルトガルの生んだ天才の一撃が彼らの希望を打ち砕いた。

 C・ロナウドにとっては4度目のチャンピオンズリーグ制覇だ。3度はレアル、そしてもう1度はマンチェスター・ユナイテッド時代に経験したものである。2ゴールを挙げたこの日を含み、彼は3度の決勝でゴールを挙げ、そのいずれもでビッグイヤーを掲げた。そして今季はノックアウトラウンドだけで10ゴールを記録した。多くのストライカーにとって、それはキャリア通算のものだとしても満足できるほどのものにもかかわらず、彼は一つのトーナメントで達成してしまったのだ。

 C・ロナウドは、常にリオネル・メッシとの間で比較されてきたが、レアルの文脈で捉えるならば、アルフレッド・ディステファノやフェレンツ・プスカシュとの比較がなされるべきである。彼は地球外生物のようなもので、我々は彼のような選手を見ることはもう2度とないだろう。

 素晴らしかった選手時代のように、ジダンは監督として同じ道を歩んでいる。レアルの選手たちは近代最高、史上最高として歴史に名を残す選手たちとなるだろうか。少なくとも欧州CL史上初の連覇を成し遂げたという偉業が忘れられることはない。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

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