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「全員の力でここまで来ることができた」市立尼崎が明石商に競り勝ち、初の全国出場へ王手!:兵庫

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決勝点を奪った市立尼崎高MF広沢泰樹(8番)が応援団と喜びを分かち合う

[6.9 全国高校総体兵庫県予選準決勝 明石商高 0-1 市立尼崎高 アスパ五色]

 平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技への出場権を懸けた兵庫県予選準決勝が9日に行われ、明石商高と市立尼崎高が対戦。1-0で勝利した市立尼崎が11日に行われる決勝へと駒を進めた。

 昨年の選手権代表の滝川二高、プレミアリーグに所属する神戸弘陵高、新人戦王者の三田学園高……優勝候補だった私立勢が早期敗退し、ベスト4に残った公立の4チーム。「ここまで来たら、やるしかない」。主将のGK森本直樹(3年)がそう意気込む市尼崎が粘り強い試合運びで、頂点に王手をかけた。

 開始早々にMF羽當瑛智(3年)が左足シュートを放つなど、勢いよく試合に入った市尼崎は、MF松角尚悟(3年)を起点にテンポの良いボール回しからピッチの幅を使った攻撃で試合を支配。相手を押し込む時間が続いたが、MF広沢泰樹(3年)が「粘り強く守ってきた相手に対し、センタリングがうまく行かなかったし、こぼれ球も拾えなかった」と話したように、主将のDF春名雄大(3年)を中心にブロックを固めた明石商の守りに苦しみ、決定機まで持ち込めない。

 守備でもボールロストから、「上手くて、キックから怖かった」とDF前野恵吾(2年)が評した明石商MF山本恵司(2年)を起点としたカウンターを受ける場面も見られるなど、思い通りの試合を進めることができなかった。前半終了間際に市立尼崎は自陣から前方にロングボールを展開。MF上野輝人(2年)がGKとの空中戦に競り勝ったボールが、無人のゴール方向に流れたが、相手DFにクリアされ、無得点で前半を終えた。

 前半同様、市尼崎が主導権を握った後半は、「この1週間、練習から意識していた」(前野)サイド攻撃の回数が増加。DF尾曲辰斗(3年)とのコンビネーションから前野が左サイドを攻撃に参加することで見せ場を作ると、17分には、前野の左クロスから上野がヘディングシュートを放つが、均衡を崩せない。それでも、「後ろがしっかり守っていれば、前が必ずやってくれるだろうと思っていた」(森本)と守備陣が集中を切らさず、無失点を保つと、歓喜の瞬間が訪れたのは30分。前野がゴール前に入れた右CKを広沢が頭で合わせて先制した市尼崎が、そのまま逃げ切り、タイムアップを迎えた。

 昨年、神戸弘陵に屈した準決勝を見事に乗り得た市尼崎だが、近藤照男監督が「決勝に行けたのは嬉しいけど、昨年と比べて今年は力がない。初戦から苦戦が続く中、なんとかここまでやって来られた」と明かすように、今年は決して強いチームではない。力を補うべく、取り組んでいるのは、精神面での成長。「人間として成熟できるように、大人になれるように口酸っぱく言ってきた。試合に出られなくても、何をするのか考え、出ている選手はチームのためにどうするのか。皆に応援してくれるような人間になれるように行動しなさいと伝えている」(近藤監督)。

 粘り強く、勝ち星を拾ったピッチの選手と共にこの日は、選手をスタンドからサポートする応援も印象的だった。森本が「しんどい時でも横を見れば応援団が来て、反対を見れば保護者の方がたくさんの赤色で染めてくれていた。試合に出るのは、11人だけど、応援の存在も非常に大きい。全員の力でここまで来ることができた」と感謝を示したように、選手をサポートする声援が、最後まで戦い抜く原動力となった。昨年度の選手権予選同様、タイトルが目の前に迫り、選手のモチベーションも高まっている。「何としてでも次も勝って、市尼の歴史を変えたい」と前野が意気込んだように、ピッチとスタンドが力を合わせて、初の全国行きを掴むつもりだ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2017

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