beacon

選手たちが成長した80分間。技と魂兼ね備え、逸材FWも擁する浦和学院が昨秋準Vの浦和南撃破!!:埼玉

このエントリーをはてなブックマークに追加

FC東京特別指定選手の注目FW田中和樹(10番)擁する浦和学院高が大一番を制した

[6.11全国高校総体埼玉県予選2回戦 浦和南高 0-1 浦和学院高 浦和南高G]

 平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技埼玉県予選は11日、2回戦を行った。昨年度全国高校選手権予選準優勝の浦和南高と、FC東京特別指定選手の注目FW田中和樹(3年)擁する浦和学院高との「浦和決戦」は、FW齋藤雅之(3年)の決勝ゴールによって浦和学院が1-0で勝った。浦和学院は17日の3回戦(ベスト16)でふじみ野高と戦う。

「素晴らしい、の一言」。大熱戦を制した試合後、浦和学院の森山泰行監督は選手たちに向けて最上級の褒め言葉を伝えていた。かつて名古屋や海外クラブなどで活躍した元日本代表FWの指揮官にそう言わしめた80分間。浦和学院はアウェーで浦和南の圧力を跳ね返し、攻めて、攻めて、ゴールをこじ開け、最後は退場者を出しながらも10人で守り切った。
 
「小手先だけじゃなく、心を鍛えていく」(森山監督)。上手いだけでは勝てない。気持ちだけでも勝てない。両方を鍛えてきたからこそ、掴んだ勝利。森山監督は、「サッカーをするだけじゃなくて、勝負するんだと見せてくれた。今日だけで成長したと思います」と選手がこだわって掴んだ白星に表情を緩めていた。

 序盤から浦和南はFW直野諒太とFW田沼俊輔(ともに3年)の大型2トップにボールを集め、敵陣でスローインを獲得すると右SB山口翔太(3年)が5本、6本とロングスローを投げ込んだ。19分の飲水タイムまでは圧力をかけて攻め続けた浦和南ペース。だが、浦和学院はCB古澤亮平(3年)とCB中里竜也(2年)中心に怯まず、その攻撃を跳ね返していく。

 そして、セカンドボールを回収した浦和学院が反攻に出た。田中のダイナミックな突破のほか、初戦は“温存”されていたMF小船岳清(3年)が中盤から一気に飛び出して決定機に絡む。23分には田中とのワンツーから小船がPAへ侵入。こぼれ球をMF森氷河(3年)が狙ったシュートは浦和南GK桒原丞(2年)のビッグセーブに阻まれたが、その後も浦和学院の勢いは止まらない。

 特に田中、齋藤、そして2年生の技巧派ドリブラーMF信太英駿のドリブルがキレを見せ、34分にはPAへ切れ込んだ田中が切り返しから右足シュート。そして38分には自陣での競り合いで相手選手を“ふっ飛ばした”田中がさらにDF2人を跳ね除けて右前方へスルーパスを送る。そして、小船の落としを受けた齋藤の右足シュートが左ポストをかすめた。

 決定機を作られながらも凌いだ浦和南は後半、MF大坂悠力や交代出場のMF北郷誠一朗、FW狩集洸哉という技巧派の2年生たちを中心にグラウンダーのパスワークで勝負に出る。ショートコンビネーションでDFを外すシーンもあったが、奪ったボールを浦和学院の小船や球際の強さを見せたMF安居海渡(3年)に引っ掛けられるなど良い形で攻めきることができない。

 逆に浦和学院は9分、インターセプトした田中が持ち上がり、最後はスルーパスで抜け出した小船がポスト直撃の左足シュート。そして26分、浦和学院はついにスコアを動かす。田中が右サイドへ開いて起点をつくると、信太が斜めのスルーパスを通す。これを受けた齋藤が持ち出してから右足シュート。これがDFに当たり、ゴール右隅へと吸い込まれた。

「後ろが頑張ってくれていたので、自分たちが決めないといけないという気持ちがありました」という齋藤は熱い応援を繰り広げていた控え部員の下へ駆け寄り、歓喜を大爆発。だが、30分に退場者を出した浦和学院に対して、浦和南も諦めずに攻め続ける。そして、連続でフィニッシュにまで持ち込むと、アディショナルタイム突入後の42分には右CKのクリアを拾った左SB加藤健也(3年)の左足シュートがゴールを捉えた。だが、浦和学院GK大橋裕史がファインセーブ。最後まで走りきる力を見せ、気持ちでも引かなかった浦和学院が伝統校を撃破した。

 浦和学院が1-0で勝利。終盤、大声を出してチームを鼓舞し、ハードワークを続けていた田中は「やっぱり、チーム全員で勝ち取った勝利だったと思います」と胸を張った。攻撃陣中心に全国クラスのタレントを擁し、信太が「(森山監督の指導は)アグレッシブ、その一言です。ハートとアグレッシブ。それが一番大事だと」と説明したように、心の強さ、「人のためにどう頑張るか」という部分を突き詰めてきた浦和学院は、激戦区・埼玉を勝ち抜くだけのポテンシャルがある。

 この日、大きな壁を乗り越えたが、まだ戦いは中盤戦。決定力を欠いたシーンや、立ち上がりと終盤に相手の圧力に苦しむなど課題もまだまだある。それでも、齋藤が「大変だと思うんですけど、チーム全員で埼玉のてっぺんに行きたいです」と言い切る浦和学院が今年、本気で目標達成に挑む。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

TOP