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[MOM2141]浦和学院FW田中和樹(3年)_強烈過ぎるインパクト。FC東京特別指定の逸材が紙一重の戦いで得た変化

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浦和学院高FW田中和樹

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.11全国高校総体埼玉県予選決勝2回戦 浦和南高 0-1 浦和学院高 浦和南高G]

 実は、“王様タイプ”のFWなのではないかと思っていた。新進気鋭の強豪校のエースは、一早くFC東京に特別指定されてJ3ですでにJデビューも果たしている。時にボールを持つとゴールしか見ていないような動きで単独突破から、シュートを打ち込むことも。だがこの日、浦和学院高FW田中和樹(3年)が見せたのは、「チームのために」「勝ちたい」という強い思い。特に退場者を出して10人での戦いを強いられた後半終盤は圧倒的な攻撃力よりもむしろ、声や献身的な守備の方が光っていた。

「自分でもこんな声出したことあまりないんですけど、勝ちたかったので。スイッチ入っちゃいました。応援とかも埼玉の中で全然凄いと思うので、その応援とかに応えられるように頑張りたいです」。本人も自身の変化に気づいていた。全国出場を懸けた一発勝負のトーナメント戦、そして浦和南という歴史あるチームとの強豪対決。それは、今までにないほどに、勝ちたい、チームメートたちと全国へ行きたいという思いを引き出してくれた戦いになった。

 元日本代表FWの森山泰行監督も「(今日は)チームのために声かけたり、守備してくれたり。お山の大将だけじゃない。大人になりつつある」。指揮官が「まだまだ伸びしろがあると感じている」という逸材FWは、厳しい戦いを経験したことでより上に行くためには何が必要なのか、本気で考え、自身が進化するためのきっかけも掴んできている。

 この日見せたパフォーマンスは圧巻だった。動き出しの部分や本人かFC東京に合流して感じたというパススピード、守備の寄せなど改善するべき課題はある。また浦和南高に押し込まれた序盤はなかなかボールを触ることができなかった。

 だが、前半20分過ぎからは左オープンスペースから迫力ある仕掛けやシュート。1タッチのワンツーでMF小船岳清(3年)の決定機を演出するシーンもあった。そして38分には自陣でゴールライン近くで相手選手が吹っ飛ぶほどの強烈なチャージ。そこから相手選手を1人、2人となぎ倒すような突破から右サイドへ走る小船にスルーパスを通し、FW齋藤雅之(3年)の決定的なシュートに繋げた。

 父親がアメリカンフットボールをやっていたという田中は筋トレに力を入れてきたこともあって、その肉体は高校生離れしている。この日は身体をぶつけて田中のバランスを崩そうとするDFを逆に弾き飛ばして突進。「ファイトしてくるチームだったので、それに負けないように頑張りました。負けたくなかったので思い切りぶつかりに行きました」という田中の強さとスピードは特に印象的だった。

 後半26分には、敵陣でボールを受けると右サイドへ流れてスペースを作り出し、MF信太英駿(2年)へパス。信太のラストパスからFW齋藤雅之(3年)の決勝点が生まれた。貴重なゴールの起点となった田中は「本当は自分の得点とかでチームの勝利に貢献したいんですけど、自分のドリブルとかで周りの人が点を決めても嬉しいです」と微笑。昨年度選手権予選準優勝の名門校から勝利したことを喜んでいた。

 プロ選手たちの中に入っても「スピードは通用すると思います」と感じたという。課題もあるが、その強烈な武器については年代別日本代表のスタッフたちも注目している。「毎試合点取れるようになりたい。代表とかにもかかわりたいですし、日本を代表するような選手になりたいです」と語る田中にとっては、チームの全国初出場のため、自身のアピールのためにも、とても大事な夏になる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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