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2年目の覚醒、FWから転向の国士舘大・住吉ジェラニレショーン「CBでプロに」

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1試合毎に凄みを増している国士舘大CB住吉

[6.24 第91回関東大学2部L第11節 早稲田大1-2国士舘大 国士舘大町田C]

 FWからCBへ転向したことで未来は大きく変わり始めている。国士舘大のCB住吉ジェラニレショーン(2年=日大藤沢高)。ルーキーイヤーは出番がなかったものの、今季は“守備の要”として存在感を発揮。国士舘大にとって唯一無二の存在へ成長し、天皇杯2回戦では湘南ベルマーレを相手に奮闘。その姿には多くのJクラブが熱視線を注いでいる。

 昨春に日大藤沢高から国士舘大へ進学。なかなか出番のない日々に「耐えるというか準備が大事だなと思っていました。高校(1年)のときに一度そういう試合に出られなくなった時期があったので。耐えてやるしかない。ここで腐ったらもったいないなとやっていました」と言う。それでも夏の練習試合、CB陣に負傷者が続出したために急遽DFへコンバート。まずまずの出来をみせたことで、そこからFWではなくCBとして戦う日々が始まった。

 高校3年間はFWとしてやってきただけに、複雑な気持ちもあったのかと思いきや、「中学のときに一通りのポジションをやっていましたし、別になんとも思いませんでした。やるとなったらやろうと」と飄々と語る。細田三二監督は「前に置いていても、なんだかあまり魅力がなかった。それでも時折“当たる”頭があった」とポジション変更の理由を明かした。

 経験あったとはいえ、転向直後は戸惑うことも多かった。「何がなんだかわからなかったので、がむしゃらにやっていました。中盤を動かせといわれても、自分はいつも前にいたので。どう言えばいいのかわからなくて……」と言うとおりだ。

 それでも二学年上のDF吉田健(4年=静岡学園高)やコーチ陣の助けを借り、DFとしての動きやコーチングを身体へ叩き込んでいった。住吉がDFへ転向したことを知った高校時代のチームメイトからは「CBできるの?」と連絡があったようだが、「黙って見てろよ!(笑)」と応じ、日々トレーニングへ取り組んだ。

 そして大学2年目の今季、開幕戦から前期全11試合に出場。首位折り返しの立役者となるべく奮闘をみせている。180cm、77kgの体躯を活かした空中戦での強さはもちろんのこと、一瞬の速さが圧巻。またボディバランスに優れ、フィジカルコンタクトをいとわず、粘り強く相手に食らいついてボール奪取するなど、抜群の存在感を示している。

 住吉の成長を見守る指揮官は「あのポジションをやり始めて、コーチングができるようになった。最近はヘディングも前は後ろから首を出すだけだったのが打点が立てられるようになってきた」と評価しつつ、「ただやっぱり元々FWの選手ですから、そういうのがちらっちらっと、やりたくなっちゃうんじゃないかな」と軽いプレーで裏を取られるシーンを課題と指摘。それは期待の裏返しでもある。

 本人は「クリアの部分でもう少し遠くに飛ばしたり、そういう部分が自分にはまだ足りていないなと思います。試合経験を積んで、だめなところはだめと言われてきて、FWらしさは多少は抜けてきたかなと思いますけど、でもまだ危なっかしいところはあるので、そこは練習です」と表情を引き締めた。

 FWとしてプロになることを目標に国士舘大へ進学してきたが、今では「CBでプロになるのが新しい目標です」と笑顔をみせる。「今のポジションが自分は楽しいです」と語るCBは「FWに戻れと言われたら? いや、自分はCBがいいですね」とまで言い切った。

 大学2年目で覚醒した住吉ジェラニレショーン。身体能力はもちろんのこと強心臓ぶりも一つの武器。空中戦でことごとく競り勝っていた天皇杯・湘南戦を振り返っては「めっちゃ貴重な体験で楽しんでやろうと思いました。多少の緊張はしましたけど、思い切りやる以外は何もないと。逆に縮こまってやったら、もったいないと思ったので全力でやりました」と口にする。

 DFへの転向をきっかけに大きく成長を遂げている住吉。どこまで駆け上がれるか。まずは大学サッカー界を代表するCBへ。辿り着く日は遠くない。

(取材・文 片岡涼)

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