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[プレミアリーグEAST]U-18代表の正守護神へ。敗戦も一際存在感放った京都U-18GK若原智哉

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京都サンガF.C.U-18のU-18日本代表GK若原智哉主将は好セーブを連発した

[7.9 高円宮杯プレミアリーグEAST第8節 市立船橋高 1-0 京都U-18 グラスポ]
  
 主将としての責任感強い守護神は、試合に敗れたことを本当に悔しがっていた。だが、試合後には彼が見せたパフォーマンスに対する賞賛の声が、チーム内外から聞こえていた。

 京都サンガF.C.U-18の岸本浩右監督はチームを鼓舞し、好セーブを連発していたことに加えて「攻撃面でも起点になろうとしていた」ことを認め、視察に訪れていたU-18日本代表の秋葉忠宏コーチは試合後、挨拶に来た京都U-18の背番号1に対して「素晴らしかった」と声をかけていた。

 対戦した市立船橋高のコーチ陣も賛辞を口にしていたほどのプレー。京都U-18のU-18日本代表GK若原智哉主将(3年)はこの日、前半34分にゴール前から大きく飛び出して相手のスルーパスを阻止したほか、前半アディショナルタイムにはDFを振り切ったFW福元友哉(3年)の決定的なシュートを足でストップ。後半立ち上がりに1点を失ったものの、集中力を切らさずに直接FKやクロスなどを弾き返し、守備範囲広く守っていた若原は、後半44分にもFW西堂久俊(2年)との1対1を再び止めて、1失点で切り抜けた。

 だが、試合は0-1で敗戦。「試合運びとしてはどっちに転んでもおかしくないという試合展開で、そこで気が緩んだ瞬間に自分たちのミスから失点してしまうという形になってしまって悔しい試合にはなりました。後ろから見ていてチャンスはあるんですけど、最後のパスだったり、最後の動き出しだったり、そういう体力面でもちょっときつかったと思います。これからもっともっと暑くなっていくので、そういうところをもっともっと強化していかなければならないと思います」とチームの課題について指摘していた。

 若原はU-15日本代表からU-19日本代表まで全てのカテゴリーでの代表経験を持ち、昨年、今年と京都のトップチームに2種登録されている注目GKだ。中学時代からセービングに対する評価は高かったと言い、この日もそのセービングなどでチームを救っていた。

 この市立船橋戦はいつも以上に自分が、という思いを持っていたのだという。「きょうはいつも組んでいるCBと違うCBで、きょうの2人(尾崎優樹井上航希)は声を出したり、自分の持ち味を出してくれたと思っています。もし、それで守りきれなくて僕のところに来たのならば、僕が止めないなといけないなと思っていた。いつもはCBに助けられているんですけど、きょうは僕が止めないといけない、(普段よりも)いっぱい来ると思ってやっていました」。味方が思い切り良くプレーできるように、例えミスが起きてもフォローできるように守り、それを実行していた。

 失点についてはPAを崩され、GKが止めるチャンスはほぼないような至近距離からのシュート。だが、言い訳はしなかった。「失点の部分は自分も油断していた。しっかりと構えられていたらクロスのところでしっかり反応できたかもしれないし、もっと自分の改善をできると思っています」。以前に比べて、DFを動かす部分で成長したことを実感しているが、コーチングについてはもっと声の強弱などできることがあると感じている。評価の高いシュートセーブについてももっともっとレベルアップできる――。貪欲にそれを追い求めることで世代屈指のGKはより進化していくつもりだ。

 今年は京都U-18の勝利に貢献すること、トップチーム昇格を果たすこと、そしてU-18日本代表の正守護神としてチームを勝たせるという目標もある。昨年のAFC U-19選手権(U-20W杯アジア最終予選)ではU-19日本代表に“飛び級”招集されて参加。チームを陰から支えてアジア制覇に貢献したが、立場は第3GKで出場機会はなかった。

 だからこそ、「今年、(AFC U-19選手権の)一次予選とかあるので頑張ってそこに入って、スタメンで出るというのが今の僕の目標なので、(去年)最終予選に行きましたけれど1回も出ていない。あの約1か月間は悔しい期間でした。確かに近くでそれを見るのは良い経験だと思うんですけど、ピッチに入ることでまた違うものが見えるんで、アジア予選は絶対にスタートから出たいです」と誓う。

 同世代にはU-19日本代表としてトゥーロン国際大会に出場したGK大迫敬介(広島ユース)とGK沖悠哉(鹿島ユース)やGK猿田遥己(柏U-18)、この日対戦した市立船橋のGK長谷川凌ら実力者が多数いる。中でも大迫はこれまでも、そして今後も競争を続けて行くであろう最大のライバルだ。「サコ(大迫)はずっとずっと僕のライバルなので、今はサコの方が上だと思われていると思う。刺激もありますし、もっともっとやらなければいけないと思いますけれども、サコにも負けないところがあると思うので、そこを磨きつつ足りないところはもっともっと高めていきたいと思います」。アピールチャンスでチームを勝たせるプレーをして、より信頼を勝ち取ること。この日、力を実証していた逸材GKは、目標達成のためにまた自身を磨いてレベルアップする。

(取材・文 吉田太郎)
●2017 プレミアリーグEAST

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