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左胸に手を当て選手宣誓。仙台育英DF石川巧実主将が込めた3つの思い

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仙台育英高DF石川巧実主将が選手宣誓を行った。(写真協力=高校サッカー年鑑)

 28日、宮城県宮城郡松島町の松島町文化観光交流館で平成29年度全国高校総体 「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(宮城)の開会式が行われ、地元・宮城県第1代表の仙台育英高DF石川巧実主将(3年)が選手宣誓を行った。

「宣誓 復興へ歩みを続ける被災地、宮城で開催される平成29年度全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会、この舞台に立てることに感謝しています。

 ここ宮城を、そして東日本を、未曾有の災害が襲ったあの日から6年。今も、決して忘れることの無い、悲しい記憶を胸に、復興への歩みを続けています。多くの支援や励ましの言葉、家族、周囲の人に支えられ、今があります。

 人は、決して一人では無いということ、誰かに支えられ、支え合いながら生きているということを改めて思い知らされました。苦しみを乗り越えた私たちに今、できること。それはひたむきにプレーすることです。サッカーができることに感謝しなければいけません。そして、その幸せを噛み締めてプレーします。

 この夏、九州を豪雨が襲いました。一日も早い復旧と日常の生活が戻ることを、心から願っています。

 歴代の選手たちの熱い思いが込められたこの大会を、応援してくれる全ての人のために、正々堂々と戦うことをここに誓います。

平成29年7月28日、選手代表 仙台育英学園高等学校サッカー部主将 石川巧実」

 手を真っ直ぐに伸ばす見慣れた選手宣誓ではなく、右手を左胸に当てて発した約2分間のメッセージ。特に伝えたかったという思いは3つあった。震災から6年経った今も、「まだ頑張っている人がいることを凄く伝えたかった」ということ、「サッカーができることの幸せをチームメートも感じていると言っていた」ため、サッカーができることへの感謝、そして現在、九州で豪雨の被害を乗り越えようとしている人たちへ「自分たちは支援された側なので自分たちが何かできる番なんじゃないかと思って入れさせてもらいました」というエール。それらが込められた選手宣誓が終わると、大きな拍手が会場に鳴り響いた。

 城福敬監督も「大したもの」と絶賛した選手宣誓。大役を終えた石川はここから切り替えて、初戦へ向けて最高の準備をする。石川は「地元開催は監督にも言われたんですけど、50年に1回。そこに巡り会えたのは何かの縁だと思いますし、自分は選手宣誓を任せてもらって大変光栄なことでしたし、でも勝たないと言っているだけじゃ伝わる部分は少ないと思う。ですから、まず初戦。勝つことが宮城県だったり、学校にも元気、勇気を与えられると思うので勝負にこだわってやっていきたい」と力を込めた。

 今大会注目のSBの一人でもある石川はプレーでチームを引っ張る意気込みだ。「チームが勝つために戦うこと、走ることもそうですけど、DFなので、まずディフェンスでは100パーセント負けたくないですし、守備を100パーセントできた上で攻撃にもかかわっていけたら良いと思っています」と語った。

 初戦敗退した昨年は細かい部分まで研ぎ澄ましたつもりでも結果には結びつかなかった。だからこそ、より細部にまでこだわって、最高の準備をして、勝利へ徹底する。昨年の広島皆実高、13年の東福岡高と前評判の高かった開催地第1代表が重圧の初戦で敗れた例もあるが、「何としても覆したい」。これまで本番に課題を残してきたチームだが、堅守とダイナミックな攻撃など自分たちの力を出し切れれば、上位へ勝ち上がることは十分に可能だと考えている。まずは柳ヶ浦高と旭川実高の勝者と戦う初戦(2回戦、30日)で自分たちの全力を出し切り、勝って勢いに乗る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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