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「ライター川端暁彦の総体優勝予想」決勝カードは長崎総科大附vs本命・昌平!

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川端氏が優勝候補に挙げた昌平高

特集企画「ユース取材ライター陣が予想する『全国高校総体優勝校』」

 平成29年度全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会の男子部門は55校による争覇戦だ。冬の選手権より単純に7校多いこともあって予想は難しい――。とはいえ、近年の大会における「傾向は」かなり明瞭になっている。

 過去10大会における傾向。身も蓋もない言い方をすると、「千葉が強い」という厳然たる事実がある。過去10大会で11校の王者(両校優勝1度)が誕生しているが、そのうち実に6校が千葉勢。07年度の市船、08年度の市船・流経大柏、10年度の市船、13年度の市船、16年度の市船――。準優勝も市船が2度、流経大柏が1度あるので、ここ10年の総体は、大体がこの2校を軸に回ってきたと言っても過言ではない。

 こうなると、今回の予想からもこの2校を排除するのはやはり難しい。特に市立船橋高の夏の大会における安定感は際立っている。朝岡隆蔵監督がポゼッション志向を強める中でボールを保持して連戦の消耗を軽減させられるようになっているのも強みだろう。流通経済大柏高もそうだが、やはり夏の大会を勝ち残るのはボールを持てるチームである。1、2回戦で波乱を起こすだけならボールを持てないチームでも十分に可能性はあるが、「優勝」となると途端にハードルが高くなる。

 また、11年度からのプレミアリーグ創設とプリンスリーグ関東の通年化という変革は当初、出場校に高体連のカップ戦とJユース相手のリーグ戦という“ギャップ問題”を与えて、この総体での番狂わせを連発させる“原動力”として機能することになった。桐蔭学園高が優勝した11年度と三浦学苑高が優勝した12年度の総体が波乱の大会になったのは偶然ではない。だが、近年のプレミアリーグに参加する高体連勢はその戦い分けのノウハウを蓄積させて対応してきており、13年度以降はむしろ上位進出校がプレミア勢で占められるようになってきている。

 今大会も大筋でこの傾向は継続すると観る。市立船橋以外のプレミア勢では、やはり青森山田高の力が頭一つ抜けている。今大会が仙台開催で、U-18日本代表MF郷家友太のような縁のある選手がいるのも決して小さくないアドバンテージだろう。優勝経験校である東福岡も当然ながら、この候補なのだが、青森山田の隣に入るクジを引いており、これは互いにとってかなり難しい。この青森山田がシードされたブロックは「今季の隠れ候補」もひしめく上に、今大会指折りのタレント集団である前橋育英高までいるため、勝ち残りの難易度はマックス。このブロックを抜けるまでには相当な消耗も予想されるだけに、ここから優勝校は出ないと観る。

 そこで「ボールを持って試合を進める力があって」「この大会での経験値があり」「最激戦区の青森山田のブロックを回避し」「千葉勢と早期に当たらない」高校を探していくと、二つのチームが浮かび上がってくる。昨年度も4強に入った埼玉の新鋭・昌平高と、同8強の名門・静岡学園高だ。どちらも「持てる」チームであり、試合を決められるようなタレントもいる。準々決勝で昨年の再戦となる可能性も十分にあるだろう。また個人的な感触としても、今年の昌平はかなり「やる」と観ている。

 というわけで、過去の傾向を重視しながら予想していくと、決勝カードはやはり流経大柏と市立船橋の千葉対決――では身も蓋もないので、違う切り口も混ぜてみよう。

 当然ながらこうした過去の傾向など吹き飛ばしてしまう勢いのあるチームが出てくるのが高校サッカーでもある。その候補となりそうなチームはいくつか思い浮かぶが、長崎総合科学大附高はちょっと面白い。昨年よりチーム力が落ちるという評価もあるが、九州内でちょっと“強すぎた”昨年のチームと違い、接戦で競り勝つ経験値も蓄えてきたのが吉と出る可能性はある。ガンガン走るスタイルを思えば、夏より冬に強そうなチームではあって、ここで推すのはロジカルではない。ただ、大会最注目のU-19日本代表FW安藤瑞季を筆頭に何かやってくれそうなパワーのあるチームなのは間違いないので、最後は自分の勘を信じて彼らを推しておこう。

 よって、今年の決勝カードは長崎総科大附と本命・昌平というフレッシュなカードと勝手に予想する。まったく異なるベクトルを持つ両校の対戦がもし本当に実現するなら、相当熱い試合となるに違いない。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。

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