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[MOM2161]市立長野FW新井光(3年)_J2湘南内定エースに芽生えたリーダーシップ

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湘南加入が内定している新井光

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.29 全国高校総体1回戦 市立長野高2-1鹿島学園高 みやぎ生協めぐみ野サッカーグラウンドB]

 既にJ2湘南ベルマーレに入団が内定し、特別指定選手となっている市立長野高(長野)のFW新井光(3年)が、言葉とプレーでリーダーシップを発揮し、同校の総体初勝利を手繰り寄せた。

 試合後、 芦田徹監督は新井について「そうとうきてます、身体。前半は中盤のテンポが悪かったのでボランチまで助けに行きながら、最後は前線まであがっていた。結果、前線がかなり薄くなりましたが、彼には相手を見ながら味方を助けに行くときは行って、浮きを作りながらスキを突くということは常に言っていることで。考えながらよくやっています」と評す。

 その通り、鹿島学園高(茨城)にペースを持っていかれた前半、新井は本来のトップに位置しながら、時にボランチ、時にサイドと、ポジションを下げ、ボールに絡み続けた。その結果数的優位が生まれ、失点を免れることに一役買っていた。

「自分はボールに触るとリズムが出るので。ただ、後半は下がる場面があってもいいと言われていましたが、下がりすぎると攻撃に厚みが出なくなるので、我慢しながらやっていました」

 その豊富な運動量、球際の強さは、既に練習参加している湘南で鍛えらえたものだ。だが、単に走り回っているだけでは効果的な仕事はできない。ゲームの流れやプレーの流れを読む力も備わっている。

 プレー面ではっきりした成長を見せている新井だが、精神面でも大きな成長が見られたと、 芦田監督は言う。

「テンポが悪かった前半を終えてのハーフタイム、前半はシュートシーンに誰も入っていかなかった。そこで、後半はシュートシーンに入ったらゴールに向かってランニングしよう、サボらずやろう、という話になり。それを行ったのが(新井)光だったんです」

「自分が感じていることを他の選手に伝えることは、もともと苦手な人間だったのに、リーダーシップが出てきた」と芦田監督は目を細める。

 しかも新井は、この「シュートシーンに入ったらゴールに向かってランニングしよう」という自らの言葉を体現して見せた。後半20分、右サイドにボールが出る。「キョウヤ(MF小林恭矢)が抜け出した時、“ワンタッチでくるな”と思っていて、前にスペースがあったので走りこんだらいいボールがきました」とセンタリングを押し込み先制。試合の流れをガラリと変えて見せた。

「押し込まれる時間が多かったので、チャンスを見逃したら点が取れない。その一つのチャンスを見逃さずに、しっかり走りこめたのはよかったと思います」

 チームが必要としていることを察知してピッチを走り回り、仲間を効果的なアドバイスとともに鼓舞し、自ら手本を示す。まさにチームの大黒柱といっていい存在感だ。

「リーダーシップをとることは、あまり得意ではないですが、今日は強い気持ちで臨んだので。昨年(の総体)は悔しい負け方をしたので、個人的にも勝ちたいと無我夢中でした。そうしたら、自然と声が出たといいますか」

 来年にはプロになる。現時点でそれだけの逸材ということだ。だが、今も日々進化を止めていないのが新井光だ。総体で1試合でも多く試合をすればするほど、その進化は進む。いったいこの夏、どこまで成長するのか。その可能性を一番楽しんでいるのは、じつは本人かもしれない。

(取材・文 伊藤亮)
●【特設】高校総体2017

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