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勝ちながら力積み重ねる市立船橋は3年連続対戦の関東一振り切って準決勝進出も、エース出場停止に

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準決勝進出を喜ぶ市立船橋高イレブン

[8.2 総体準々決勝 関東一高 1-2 市立船橋高 ひとめぼれスタジアム宮城]

 平成29年度全国高校総体 「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(宮城)準々決勝が2日に行われ、前回大会優勝の市立船橋高(千葉2)と関東一高(東京1)との一戦は、市立船橋がFW福元友哉(3年)の2ゴールによって2-1で競り勝った。市立船橋は3日の準決勝で日大藤沢高(神奈川2)と戦う。

 15年大会準決勝は2-1、16年大会では2回戦で1-0、そして3年連続の対戦となった今回も2-1で市立船橋は難敵・関東一を振り切った。過去2連敗中の関東一は小野貴裕監督が「3年間連続でということを考えてやらなかった。(前半は)流れに乗れなくても、飲み込まれるなと」と語っていたが、精神的に引くことなく戦い、力の差を見せられたという過去2大会よりも自分たちが意図したプレーを多く表現していた。

 小野凌弥主将(3年)と関口聖人(2年)の両CBを中心にDFラインを高く設定してきた関東一に対し、市立船橋は効果的な背後への配球。3トップを起点に攻めると、千葉内定の左SB杉山弾斗主将(3年)と先発に抜擢された右SB畑大雅(1年)が高い位置取りをして厚みのある攻撃を狙う。

 この日、市立船橋と同じ4-5-1システムを組んだ関東一は1トップのFW小久保佳吾(2年)が良くボールを収めてシュートチャンスを作り返す。25分にはMF佐藤誠也(1年)のループパスからFW村井柊斗(3年)の放った右足シュートがクロスバーをヒット。またこの日、ドリブルが非常に効いていたFW重田快(3年)の仕掛けなどで市船ゴールを脅かした。

 前半は0-0で終了。市立船橋は主導権を握り、杉山の突破から決定的なシーンもつくったが、大きな差を作り出していた訳ではない。それでも後半立ち上がりに王者・市立船橋がラッシュする。4分、MF井上怜(2年)のパスから左サイドを駆け上がった杉山がDFラインとGKの間へクロス。これを福元が1タッチで合わせて先制点を奪う。

 畳み掛ける市立船橋は先制点のわずか1分後に2点目を奪った。杉山の左オープンスペースへの配球を起点とした攻撃から、FW松尾勇佑(2年)が一気に抜け出してクロス。これを再び福元が鮮やかに合わせて2-0とした。0-0の前半終了後、「本当の王者だったら、ここから市船は強い」(小野監督)と警戒して後半に入った関東一を一瞬で突き放す2ゴール。だが、関東一も食い下がる。

 9分、重田が中央から左サイドへ運びながら粘ってキープ。そして、中央PA外側への折り返しを1年生MF佐藤が技ありのコントールショットをゴール右隅に決めて1点を奪い返した。関東一はその2分後に2試合連続ゴール中のエースFW篠原友哉(3年)、24分には東京都予選で全試合ゴールのFW池田健太(2年)を投入して攻勢をかけた。

 相手のチェックを掻い潜って前線へボールを運ぶ市立船橋は追加点を奪えるだけのパワーある攻撃を見せていたが、一方で「今年一番できないのはボールを奪う力がない」(朝岡隆藏監督)という課題も出て、関東一のドリブルを止めきれずにズルズルと後退してしまう。26分、関東一は重田の仕掛けから、最後は追い越す形で左中間を抜け出した池田が決定的なシュート。だが、距離を詰めた市立船橋GK長谷川凌(3年)が止めて同点ゴールを許さない。

 関東一はアディショナルタイムにもワンツーからMF小関陽星(2年)が左足を振り抜いたが枠外。入れ替わればチャンスというシーンで市立船橋MF平川孟人(3年)の決死のディフェンスで流れを断ち切られてしまうなど、最後まで追いつくことができず。市立船橋が苦しみながらも準決勝進出を決めた。

 市立船橋は平川や右SB吉田歩未(3年)に負傷があり、準決勝ではエース福元が累積警告のために出場停止と苦しい状況。阪南大高戦に続き、この試合でも2-0としながらも試合をコントロールできず、逆に追い詰められる展開となった。それでも競り勝って2試合連続で1点差勝利。我慢強く戦って準決勝まで駒を進めてきた。

 平川の負傷覚悟の守備など身体を張る部分はさすが。関東一戦は市船の強さも見せたが、朝岡監督は「まだまだその基準が低いので。阪南大戦も、きょうもそう。まだやらせないとダメ。自分からそのテンションでやれないと。ぬるいところがまだある」と厳しい。求めるレベルには達していない。だが、今年プレミアリーグ前期で最下位に沈むなど結果が出なかったチームは何とか変わろうとしている。

 杉山は「目に見えないところから変えていかないと、このチーム良くなっていかないという話になって、インターハイはそういうところから変えていこうとしています」。挨拶、服装から徹底して白星を引き寄せることのできるチームへ。「この大会を通して変わりたいという思いをスタッフも含めて選手も感じてくれている」(朝岡監督)。

 まだまだ、ホンモノの力にはなっていないかもしれない。それでも自分たちの姿勢を変え、白星と自信を積み重ねながら、名門は今後の戦いへ向けた土台を少しずつ築いてきている。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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