beacon

関川圧巻Vヘッド!薄井PKストップ!戦う姿勢と献身性、自主性表現の流経大柏が9年ぶりV王手!

このエントリーをはてなブックマークに追加

前半20分、流通経済大柏高CB関川郁万が先制ヘッド。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[8.3 総体準決勝 流通経済大柏高 1-0 前橋育英高 ひとめぼれスタジアム宮城]

 夏の高校日本一を争う平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(宮城)は3日、準決勝を行った。ともに優勝経験を持つ流通経済大柏高(千葉1)と前橋育英高(群馬)との名門対決はU-17日本代表CB関川郁万(2年)の決勝ヘッドによって流経大柏が1-0で勝利。2年連続の決勝進出を決めた流経大柏は08年以来となる優勝を懸けて、4日の決勝で日大藤沢高(神奈川2)と戦う。

 流経大柏は4月のプリンスリーグ関東第3節で前橋育英に0-3のスコアで完敗。また14年度選手権準決勝では後半終了間際の被弾からPK戦で敗れている“因縁の”相手だったが、本田裕一郎監督の言う3つのテーマ、「献身的にやりなさいというのはどのチームも当たり前で、2つめは戦うこと。最後は(声を出して)自分でサッカーをやりなさい」という部分をしっかりと表現していた流経大柏がファイナルへの切符を勝ち取った。

 主将のMF宮本優太(3年)は「プリンスで0-3で負けた相手に勝たないと決勝に行けないというところで、全員『絶対に勝ちたい』という思いがあったので、ああいういい試合ができたかなと思っています。倍返しできましたね。多分(自分たちの敗戦よりも)倍悔しいと思うので、自分たちも相当嬉しいです」と笑顔。前日の長崎総合科学大高戦に続き、見る側にも伝わるような熱い戦いをして強敵を破った。

 流経大柏は前橋育英のキーマン3人をマンツーマンマークする作戦を実行。関川が得点ランキング首位のFW榎本樹(2年)へのボールをシャットアウトしたほか、DF三本木達哉(3年)がFW高橋尚紀(2年)を常に手の届く範囲内に監視し、そしてMF宮本泰晟(3年)がMF田部井涼主将(3年)に先に自分の足が止まっても良いという覚悟で徹底マークする。

 立ち上がりはMF塩澤隼人(3年)のスペースへ飛び出す動きやMF田部井悠(3年)のミドルシュートなどで相手ゴールを脅かした前橋育英だが、山田耕介監督が「(マンマークを受けた経験の乏しい2トップは)戸惑ったんだと思います」と振り返ったように、なかなか動きの変化を加えられず、前線が機能しなかったチームは良い形でボールを動かすことができず。2人、3人がかりでボールホルダーを止めにくる流経大柏にインターセプトされてしまう。
 
 一方の流経大柏は奪ったボールをシンプルにオープンスペースへ配球。8分にはMF菊地泰智(3年)の縦パスで一気に抜け出したFW後藤大輝(3年)が決定的なシュートを打ち込むなど、少ない人数の攻撃でもフィニッシュやラストパスまで持ち込んでしまう。

 そして20分、流経大柏はU-17代表CBの驚愕ヘッドで先制点を奪う。左SB近藤立都(3年)が左CKを蹴り込むと、味方の巧みな動きによって中央でフリーになった関川がヘディングシュート。叩きつけられたボールは1バウンドしてゴール上側のネットに突き刺さるという圧巻ヘッド。会心の表情で跳躍、ガッツポーズした背番号5中心に歓喜の輪ができた。

 前橋育英も田部井悠のアイディアある仕掛けなどで反撃したものの、逆に縦パスで抜け出したFW後藤が決定的なシーンを作り出すなど、ほぼペースを握っていた流経大柏が1点リードで前半を折り返した。

 後半4分、前橋育英は185cmのFW宮崎鴻(3年)をピッチへ送り出し、前線を榎本との“ツインタワー”へシフト。すると、流経大柏は榎本、宮崎の2人を関川と右SB加藤蓮(3年)の2人で前育2トップをマークする形へ変更する。11分には高橋に抜け出されたが、左足シュートをCB瀬戸山俊(3年)がブロック。流経大柏はその後も個々がマークする相手をしっかりと捕まえ続けてチャンスを作らせない。

 そして、手数をかけない攻撃から交代出場FW近藤潤(3年)がビッグチャンス。だが、追加点を奪うことができずにいると、幾度か宮崎を起点とした攻撃、展開を見せていた前橋育英にチャンスが転がり込む。21分、敵陣での空中戦で競り勝つと、PAへ抜け出した高橋がDFに倒されてPKを獲得。だが、高橋が自ら狙った右足PKは左へ跳んだ流経大柏GK薄井覇斗(3年)にストップされてしまった。

 絶好の同点機を逸した前橋育英は22分に右足首の負傷を抱えるエースFW飯島陸(3年)を投入。1点を挽回しようとしたが、「ペース的には向こうだったかなと思います」と山田耕介監督が振り返ったように、流経大柏から流れを引き寄せることができない。流経大柏は素晴らしいアプローチと相手の懐に深く入るディフェンスを見せていた宮本優や、この日地上戦、空中戦で圧巻の強さを示した関川、対人での強さを発揮した加藤をはじめ、各選手が時に怒鳴るような声も掛け合いながら、最後まで集中力を切らさずに1-0で守りきった。

 流経大柏の選手たちがハードワークと戦う姿勢でライバルたちとの差をつくるのは例年通り。ただし、今回のインターハイ開幕前までは「おとなしい」ことに本田監督は物足りなさを口にしていた。それでも昨年のインターハイ決勝を経験している宮本優と菊地が中心となって、互いに要求し合うこと続けてチームは変化。宮本優も「要求しあったから、こういう結果が出たと思う」と頷いていた。

 目標は全国制覇。だからこそ、まだまだ満足することはない。また決勝へ向けた準備、そして決勝でも自分たちで要求し合って力を引き出し、昨年、目の前で逃した優勝旗を今年は必ず勝ち取る。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

TOP