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久保裕也が存在価値を示すために必要な唯一無二のこととは?

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何よりも得点を求められるシーズンとなりそうだ

チーム内序列:中心選手
ノルマ:15得点
目標:20得点

■昨季の救世主から中心選手へ

 ベルギーのゲントで2シーズン目を迎える久保裕也に期待されることは、極めてシンプルだ。得点。それに尽きる。

 昨季冬にゲントに加入した久保は、半年のプレー期間で11得点を決めてみせた。ゴールを決め続けた久保の活躍もあり、ゲントはリーグ終盤に猛烈な追い上げを見せた。だからこそ、プレーオフ1進出圏内である6位以内に入り、さらにプレーオフ1突入後も3位にまで順位を上げることができたわけだ。

 その実績は当然評価されており、今季開幕時点で中心選手としての扱いを受けている。チームを率いるハイン・ファンハーズブルック監督から期待されることも、もちろん得点だ。

 ゲントは優勝を目標としている強豪と言っていい。優勝候補筆頭のアンデルレヒトとクラブ・ブルージュの牙城を崩すのは容易ではないが、実際にゲントは2014-15シーズンに優勝を果たしている。決して絵空事ではないのだ。

 強豪として、リーグでは格上としての戦いが多くなるわけだが、例えどれほど試合を支配したとしても、得点を奪わなければ勝てないし、勝ち点3を積み上げ続けていくことはできない。コンスタントに得点を取り続ける選手が必要なのだ。その役割を期待されているのが、他でもない久保ということになる。裏を返せば、いくら守備で頑張ろうが、点が取れないならば久保の出番はなくなっていく。

■多士済済のライバルたち

 強豪ゲントを率いるファンハーズブルック監督のサッカーは長短のパスを織り交ぜて繋いでいく攻撃的なスタイルだ。3-4-2-1と4-2-3-1を併用する。久保のポジションは、3-4-2-1の2シャドーの一角か4-2-3-1の3の一角。頻繁に選手のポジションを入れ替えたり、ローテーションを惜しまない監督でもあることから、久保のポジションも左、右、トップ下と試合によって様々だ。結果、ライバルは多い。

 ストライカータイプという点では、新加入の背番号9ママドゥ・シラが比較的タイプの近いライバルになるだろうか。昨季ベルギーリーグのオイペンで13得点を挙げて注目され、この夏に国内で起こったちょっとした争奪戦の末にゲントが獲得に成功した。

 ただ、彼はオールラウンダーなストライカーであると同時にワントップもできるフィジカルの強さを持っている。本来は彼をワントップに置いて久保と併用するのが理想ではあるはず。ちなみに長身屈強なワントップタイプとしては身長197cmの背番号7カリファ・クリバリがいる。クリバリは戦術的に極めて有用だが、昨季9得点。テクニック的にも得点力的にも少々物足りず、絶対的な存在に成り得ていない。

 またストライカータイプだけではなく、久保とは持ち味の違うウインガータイプもライバルになる。ゲントの誇る2大ウインガーが、背番号27番モーゼス・サイモンと背番号18番サムエル・カルーだ。爆発的なスピードを持つこの二人は、3バックの際にはウイングバックに入ることもある。

 もちろん、いわゆるテクニシャン系チャンスメイカータイプもポジション争いのライバルだ。77番ダニエル・ミリチェビッチは10番タイプ。プレースキッカーの一番手でもある。また新加入の23番フランコ・アンドリアセビッチもクロアチア人で10番タイプだ。

 また、攻守両面で運動量豊富にチームに貢献できるタイプ、つまりセントラルミッドフィルダータイプであっても、ポジション的にはライバルになりうる。例えばボランチで起用されることが多い19番ブレヒト・デジャゲレといった選手などがそうだ。

 ポジション的にウインガータイプや10番タイプもライバルになってくるわけだが、攻守両面における貢献度の高さやチャンスメイク、走力やスピードといった点で特徴のある選手は他にいる。彼らよりも久保の方が起用される順位が高い理由は、久保に得点力があるからに他ならない。

 実際、久保は監督から下がるなという指示を受けていることが多い。相手のコーナーキックなどの場面でも久保は前に残っている。守備が免除されているわけではないが、守備に関しては相手のセンターバックやボランチを自由にするな、サイドチェンジさせるなという指示が出されていることがほとんど。むしろ監督の意図以上に久保自身が試合状況を鑑みてチームメイトの意を汲んで自分の判断で下がって守備しようすることがあるくらいだ。

 繰り返しになるが、指揮官が出す指示の内容を見ても、 久保に期待されているのはあくまで得点なのである。

■得点こそが存在意義

 今季加入したシラの昨シーズンのゴール数が13得点だったことを見ても、今季の久保のノルマは15得点くらいになるだろうか。この数字を下回るようなペースだと、久保を起用する理由がなくなる。

 一方で上を見ると、昨季のベルギーリーグの得点王がウカシュ・テオドルチク(アンデルレヒト)で22得点。ベルギーリーグは不思議とシーズン30得点といった大量得点者が生まれないリーグで、20得点を超えてくれば得点王が視野に入ってくる。

 つまり、久保にとっては20得点が大きな目標となるべき数字だ。その先に、トップスコアラー、さらには理想的なステップアップが見えてくる。

文=堀秀年

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