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[関西U-16~Groeien~]磨いてきた「ボールが無い95パーセント」の考え方、動き。履正社が2点差追いつき、劇的初V!!

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優勝を喜ぶ履正社高イレブン

[8.25 関西U-16~Groeien~G1第9節 興國高 3-3 履正社高 伊勢ヴィレッジ]

 関西地域の強豪校が長期にわたるリーグ戦を通して、U-16選手の育成および指導者のレベルアップを図る「関西U-16~Groeien(育てる)~2017」は25日、最終節を行い、上位リーグのG1リーグでは2位以下に勝ち点3差をつけて首位の履正社高(大阪)と、逆転での3連覇を狙う興國高(大阪)が激突。履正社は2点をリードされながらも、後半残り10分からいずれも交代出場のFW藤原聖大とFW北浦敬介のゴールによって追いつき、3-3の引き分けに持ち込んだ。この結果、履正社が初優勝。履正社と2位の神戸弘陵高(兵庫)が今年12月に開催予定のU16 全国ルーキー交流大会出場を決めた。

 履正社の指揮を執った上原岳大コーチは「昨日のゲームが彼らモチベーション高くていいゲームやった。今までの流れでいうと良いときの次は必ず悪い」と振り返っていた。前日、首位・神戸弘陵高との首位決戦をMF有水尚の後半アディショナルタイムV弾で制していた履正社だが、上原コーチの予想通り、試合前の雰囲気から悪かったこの日の前半は1タッチプレーの連動がなく、興國MF橋本丈に先制点を許して0-1で折り返す。

 履正社は後半3分、スペースへ抜け出したFW榮龍生が豪快な右足シュートを叩き込んで同点に追いつく。だが、興國はその3分後の6分、左中間を縦に突いたFW山崎希一が切り返しから右足シュートを決めて2-1。さらに12分にはMF下村和輝のスルーパスからFW 高安孝幸が右足でゴールを破ってリードを2点に広げた。

 興國はこのまま勝てば履正社と勝ち点18で並び、得失点差で上回る。他会場の試合結果次第では2位以内が手にする全国交流大会出場権と逆転優勝の両方を勝ち取る可能性があった。

 1年生ながらインターハイ予選で先発出場していたCB田路耀介やMF芝山和輝中心にリードを守っていたが、踏ん張ることができない。履正社は後半35分、榮のアシストから藤原がゴール。1点差とすると、41分にはこぼれ球を、体勢の良い選手へと連続で繋ぎ、最後はFW藤田光亮が後方へ落としたボールを北浦が左足ダイレクトで撃ち抜く。

「コーチにゴールしか求められていないと思っていたし、僕自身もゴール以外やることはないと思っていたので思い切り打ちました」という北浦の一撃はゴール右ポストを叩いてゴールイン。引き分ければ自力での優勝が決まる履正社イレブンは同点ゴールに歓喜を爆発させた。

 その後に訪れた決定機を決めることはできなかったものの、興國にも4点目を与えずに3-3のまま試合終了。この瞬間、履正社の初優勝が決まった。上原コーチはビハインドを追う状況にも「0-0、1-0の状況で何ができるのか、0-1の状況でも何ができるのかだけ明確にみんな理解していれば、最後まで何か起こるんちゃうかと言っていた」という。その中で1年生25人全員がまとまり、個々がやるべきことを表現して2点差を追いついた履正社が劇的Vを飾った。
 
 入学以来、履正社の選手たちが特にこだわってきたのはオフ・ザ・ボールの動きの部分だ。「GKを除くと10対10でボールは1個やないですか。20人のうち、ボールを持っている人は1人で5パーセント、持っていない人は95パーセント。ボールを持っていない時の考え方と準備の仕方、味方とのコミュニケーションの質にこだわってやっていた」と上原コーチ。榮も「チームでよく言われているボールがない95パーセントの間でどれだけ仕事ができるかをチームで話していて、チーム全員で掴めた優勝だと思います」と“95パーセント“の際のポジショニングや連動の部分などやるべきことをやっての優勝を喜んだ。

 今大会に出場した1年生選手たちの多くの目標は選手権優勝、そしてプロ入り、日本代表選出だ。2年前の第1回大会の出場選手から3人(興國の大垣勇輝=名古屋、西村恭史=清水、島津頼盛=金沢)が来季のJクラブ内定を決めた。また参加18チームのうち4チームの出身選手(FW岡崎慎司=滝川二高、FW乾貴士=野洲高、FW浅野拓磨=四日市中央工高、DF三浦弦太=大阪桐蔭高)が8月31日のW杯アジア最終予選・オーストラリア戦、9月5日の同サウジアラビア戦メンバーに選出されている。

 それでも大会実行委員長の福重良一監督(東山高)は「まだまだ少ないです。もっと関西からJリーガーや代表選手を輩出して盛り上げて欲しい」と期待した。「関西U-16~Groeien(育てる)~」からJへ、代表、世界へ。1年生たちは貴重な90分間ゲームのリーグ戦経験を活かしてまた努力を重ね、夢を実現する。

(取材・文 吉田太郎)

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