beacon

「守備のビジョン」学び、進化実感。馬目裕也は尚志のリーダー、そして岩政特別コーチのようなCBへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

尚志高CB馬目裕也(左)は元日本代表DFの岩政大樹特別コーチの指導によって進化を実感

 期待の2年生CBから強豪校のリーダーへ――。日本サッカー協会(JFA)は、継続的な日本サッカーの発展のため、さらなる普及や次世代選手の育成を促進することを目的に『JFA Youth & Development Programme(JYD)』事業を実施している。8月からはセンターバックを対象にした全4回のプレミアムクリニック『NIKE ACADEMY TIEMPO MASTERCLASS』を開催中。尚志高(福島)のCB馬目裕也(2年)と流通経済大柏高(千葉)のCB関川郁万(2年)が、特別コーチを務める元日本代表DF岩政大樹(東京ユナイテッドFC)のアドバイスを受けながら、より強固なDFになるために自分自身の中で守備の“仮説”を立て、その改善を繰り返しながら、進化しようとしている。

 馬目は今年のインターハイで2試合に先発、U-16福島県選抜にも名を連ねていたDFだ。「少しでも成長できるように」という考えと、尚志の仲村浩二監督の勧めもあって『NIKE ACADEMY TIEMPO MASTERCLASS』参加を希望。もう1人の受講者がU-17日本代表のCB関川ということを知り、「最初ビビった部分があった」というが、トレーニングの中で負けていない部分があることを実感すると同時に、岩政氏の指導によって考える習慣づけができるようになって自信を深めてきている。

 8月16日のDAY1で「守備者として極めていくのであれば、ビジョンなくして世界で勝つことはできない」という岩政氏の指導を受け、その後、尚志でのトレーニングで「守備のビジョン」を持つことを意識してきたという。「DAY1終わってからやるようになった。これまでは考えていなかった」。試合だけではなく、トレーニングから自分のプレーを一つひとつ振り返り、なぜやられたのか、相手は何を考えていたのか、もっと良い守りができなかったか、考えて、自分の強みを発揮しながら守る術を構築しようとしてきた。

8月28日のDAY2では2対2の対応や、セットプレーの際のゴール前での1対1の攻防などをサポートメンバーたちとローテーションで行っていたが、自分たちのプレーが終わるたびに岩政氏に声を掛けられて会話を繰り返していた。

 DAY3は尚志でのチームトレーニング、DAY4はJクラブへの練習参加が予定されている。残り2回に関しては個人への声がけが限られるため、岩政氏は意図的に今回のDAY2で多くの声がけをしていた。ファーストディフェンダー時とセカンドディフェンダー時の動き方、体の向き、考え方、チャレンジ&カバーを繰り返しながらチャレンジ&チャレンジへ移る瞬間を逃さずにボールを奪い取ること……。守り方は人によって様々。岩政氏は正解ではなく、守り方のヒントを与えている。

「(すぐに直前のプレーを思い返して)シチュエーションを考える。それをどうやった、またこうやったら違うことができたという仮説を立ててみる。その時に大事なのが、相手の心理まで考えられるかどうか。さっき相手が何を考えてサッカーをしていたのだろうか。ここで上回ることができれば、次また相手がこちらを上回るために考えてくる。それをまた自分が上回っていくということの繰り返しなので、その考え方が生まれるように。彼らが(守るための仮説を立てることを)習慣づけること。考え方は言いますけれど、やり方は(それぞれの特長があるため)自分で見つけるしか無い」(岩政氏)

 頭の中で対戦相手がどう仕掛けてくるのか考えて、どう守るか、妄想する。馬目は『NIKE ACADEMY TIEMPO MASTERCLASS』に参加して良かったと感じている。同年代のCBで2人だけができている貴重な経験。まだ動きに迷いがあり、躊躇するシーンも見られるが、ボールを良い形で奪う回数が増えるなど「上手くなっている」という実感があるからだ。 

 馬目はこれまで上のステージでサッカーをやることを考えていなかった。それが、この『NIKE ACADEMY TIEMPO MASTERCLASS』の中で成長、楽しさを感じ、「もっとやりたい」と思い始めている。馬目は「(岩政氏は)世代別とか選ばれないでA代表に選ばれている。自分もどうかしたら選ばれるんじゃないかと思うし、そのためには努力が必要。本当に変わりました」。これまでやったことがなかったという自主練も開始。自覚も生まれてきている。

「(尚志では)サッカーノートを書いていて、仲村監督に出した時に『オマエが一番のリーダーになれ』『そうしないと尚志は強くならない』ということを書いてあったことがありました。『3年生がいるから自分は……』と思ったこともあったんですけど、これ(『NIKE ACADEMY TIEMPO MASTERCLASS』)に参加してから自分がリーダーになろう、自分がリーダーシップとって学んだことを発信してやろうと思っています」。世界で通用するCBになるための“きっかけ”に加え、自身が変わる“きっかけ”も与えてくれた『NIKE ACADEMY TIEMPO MASTERCLASS』もあと2回。修正することを繰り返しながら、自信をつけて、まずは尚志のリーダーになる。

(取材・文 吉田太郎)

TOP