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[adidas cup Tokyo]府リーグ戦の敗戦、3人のJ内定選手の存在が活力に。悲願の選手権出場目指す興國が鹿島学園を破る

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[9.30 adidas cup Tokyo 興國高 2-1 鹿島学園高 RKUフットボールフィールド]

 30日、強豪校が選手権予選、リーグ戦へ向けた強化並びに真剣勝負の場として熱戦を繰り広げる「adidas cup 2017 tokyo」2日目でJクラブ内定3選手を擁する興國高(大阪)と茨城の名門・鹿島学園高が激突。興國が1年生FW山崎希一と清水エスパルス内定のU-18日本代表候補MF西村恭史(3年)のゴールによって2-1で勝利した。

 興國はU-17日本代表FW大垣勇樹(3年、名古屋グランパス内定)が前日の接触プレーの大事を取って、また鹿島学園もFW橋口凜樹(3年)が負傷のために、両エースが欠場。だが、実力派同士による好ゲームが繰り広げられた。

 興國は注目ボランチ・西村が別格とも言えるようなパフォーマンス。相手に距離を詰められていても、テクニックと強さを発揮して全くボールを失わずに繋ぎ、ドリブル、スルーパスで決定機も作り出す。そして、その西村やMF芝田将(2年)、トップ下のFW島津頼盛(3年、ツエーゲン金沢内定)が小さなスペースを逃さず、1タッチを交えながらボールを動かして前進していった。

 序盤、鹿島学園はボールの取りどころが定まらず、なかなか良い形でボールを奪えなかった。だが、試合の中で改善すると、連動したプレッシングで興國アタッカー陣のミスを誘発。なかなか自分たちが主導権を握ってパスを繋ぐことはできなかったが、FW富岡大智(3年)が空中戦で奮闘し、31分にはインターセプトからMF深貝陸(3年)が出した絶妙なパスでMF向山裕麻(3年)が決定機を迎えるシーンもあった。

 だが、33分、個々が技術の高さを見せる興國が先制点を奪う。敵陣で相手のパスを読んだ西村がインターセプト。スピードを活かして一気に抜け出した山崎が右足シュートを決めた。興國は38分にも西村の配球から左サイドを抜け出した島津がPAで粘ってラストパス。飛び込んできた西村が右足でゴールを破り、2-0とした。

 西村は後半立ち上がりにも独力で鹿島学園の守備網を破ると、最後は交代出場のFW西口智大(3年)がPKを獲得。西村のキックはGKのファインセーブに止められてしまったものの、その後もFW久保匠以(3年)がクロスバーを叩くシュートを放つなど鹿島学園ゴールを脅かした。後半は互いにメンバーを入れ替えながらのゲームに。その中で鹿島学園は、FW金原朝陽(2年)の鋭い抜け出し、右SB水野志乃哉(3年)の精度の高いキックなどからチャンスを作り返す。

 そして、27分には相手のビルドアップを引っ掛けると、MF須田千聖(3年)が前目のポジショニングを取っていた相手GKの頭上を越えるロングシュートを決めて1点差とした。興國は後半、チャンスを得たサブ組の選手たちのバックパスが増えてしまうなど、攻撃のリズムが生まれず。それでも2-1で白星を収めた。

 興國は今大会、約1か月ぶりに3-4-3システムにチャレンジ。大垣、FW村田透馬(2年)不在の中でも攻撃面の良さが出ていた一方、DF村岡正梧主将(3年)やDF塩崎悠司(3年)を中心としたディフェンス面も簡単にはチャンスを作らせず、内野智章監督は「この流大さん(前日に対戦した流通経済大)と鹿島(学園)さんでスコア以外のところでいいところを見つけられた」と収穫を口にしていた。

 9月には大阪府1部リーグで大阪学院高との首位攻防戦で敗れて2位。だが、村岡は「(大阪)学院戦負けて2位で終わったんですけど、多くのものを得られて、選手権へ向けて改善してできるようになってきている」と語り、西村も「いい意味で変わるきっかけになった」と振り返る。ボールを大事にするというチームコンセプトであるが故に、ターンできる場面でボールロストを怖れてそれができず、バックパスが増えてリズムを崩してしまっていた。そこからチームは改善に取り組み、この日の先発組は前を向いてパスを繋ぎ、相手の間に入っていく部分が怖さを生み出していた。

 また、興國はJリーガー3人が誕生したことが他の選手たのモチベーションになっているという。興國は他校以上に「プロになる」という目標を持った選手たちの集まり。それが叶わなかった選手たちは悔しさもあるというが、村岡は「プロ3人出てくれたことで自分の甘さに気付かされた部分があって、悔しいのもあるんですけれども、これから大学に向けても4年後、絶対に見返すという気持ちです。いい影響、パワーになっている」と語った。
  
 プロ内定3選手を擁する興國の目標は悲願の選手権初出場。対戦相手の徹底した分析で良さを消されたり、逆境での弱さが課題となってしまっていたが、選手たちは今年こそ、それらを上回る覚悟。“育成の興國”が今年、結果も掴む。

(取材・文 吉田太郎)

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