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[国体少年男子] 磨いてきた「大きな相手に勝つためのサッカー」。開催地・愛媛県が雨中の逆転勝ちで8強入り!

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後半32分、FW塩崎彰の決勝点を喜ぶ愛媛県イレブン

[10.2 国体少年男子2回戦 愛媛県 2-1 岐阜県 新居浜市営サッカー場1G]

 開催地・愛媛県が雨中の逆転勝利! 16歳以下の年代の選手たちが優勝を争う第72回国民体育大会 「愛顔つなぐえひめ国体」サッカー競技少年男子の部は2日、2回戦を行い、愛媛県が岐阜県に2-1で逆転勝ちした。初戦を突破した愛媛県は、3日の準々決勝で青森県と戦う。

 約1,000人の地元観衆の声援に応えた。愛媛県は半数が170cm以下という小柄なチーム。近藤尚稔監督(土居高)が「大男をやっつけることをテーマにやってきた」というチームが後半に相手のライン間でボールを受ける部分や、コンビネーションでの崩しなど持ち味を表現して逆転勝ちした。

 前半、相手に背後のスペースを取られたくないという意識が強くなりすぎていた愛媛県は後ろに重くなってしまい、ズルズルと押し込まれてしまった。一方の岐阜県は前線から連動した守備でMF志知遼大(京都橘高1年)やMF小宅空大(若鮎長良FC、中学3年)がボールを奪いきり、そこからチャンス。前半19分にMF伊藤寿莞(中京高2年)とのワンツーからMF宮永崇源(岐阜U-18、2年)が決定機を迎え、その後も伊藤の左足セットプレーや、宮永が絡んでの崩しで相手DFラインにプレッシャーをかけた。

 前半は0-0で折り返したものの、岐阜県は後半3分に左サイドを突いた宮永の折り返しを受けたFW横井内壮(帝京大可児高1年)が左足シュートをゴール右隅に決めて先制点を奪った。だが、前半に比べて前への意識が増した愛媛県がここから巻き返す。サイドの高い位置までボールを運んで、セットプレーを獲得。左SB長井季也(今治東中等教育学校、高1)のCKをMF谷岡昌(愛媛U-18、1年)が決定的な形で合わせるなど会場を沸かせた。

 そして21分、愛媛県は左サイドでボールを収めたFW岡本航汰(今治東中等教育学校、高1)が巧みなターンからPAへ侵入。シュートフェイントを交えたドリブルでDFを1人、2人と外して中央まで持ち込むと、そのまま右足シュートを決めて同点とした。

 登録166cmの岡本が決めた技ありゴール。「牛若丸のような選手しかいない」(近藤監督)という愛媛県がその技巧で試合を振り出しに戻した。この後もMF岡田蒼生(愛媛U-18、1年)とFW柳下将野(愛媛U-18、1年)のコンビで決定機を作り出すなど愛媛県の勢いは止まらない。

 また、愛媛県はCB大谷一真(今治東中等教育学校、高1)やCB武井邑馬(愛媛U-18、1年)ら最終ラインが「ゴール前の粘り強さが成長している。ここまで頑張ることはないくらい」と近藤監督から讃えられるプレーでゴールを死守。そして後半終了3分前の32分、愛媛県イレブンが再び観衆を沸かせた。中盤で相手のパスをインターセプトしたMF三原秀真(愛媛U-18、1年)がスルーパス。完全に抜け出したFW塩崎彰(愛媛U-18、1年)がGKとの1対1から右足アウトにかけたシュートをゴールへ沈めて決勝点を挙げた。

 身体の強さ、高さでは負けても、技術とコンビネーションで相手を上回るチームを目指してきた。鮮やかな決勝アシストを記録した三原は「(この日の)前半は蹴って走るだけだった。ドリブルやコンビネーションで剥がすプレーがないと点は取れないと思ったので、自分含めてみんながそういう意識を持ってやった結果が勝利に繋がった」と強調する。

 力任せで突破しても、逆に「やり過ぎるな」という声がベンチから飛ぶのは愛媛県の特長と言えるだろう。塩崎は「コーチたちも言っているけれど、僕たち、身長・体重は(参加チームで)一番小さいくらい。大きな相手に勝つために今まで練習してきた。ライン間やコンビネーションなどを使って最後は個人技で抜いていくサッカーをしてきました」。この日の前半は冷静さを欠いたようなプレーが増えてしまっていたが、落ち着きを取り戻した後半は相手をよく見て、コンビネーションで巧みに入れ替わったり、逆を取って崩す自分たちらしいサッカーを展開して逆転勝ちを収めた。

 三原は「一つひとつのプレーに対して歓声を送ってくれるのは自分たちの励みになりました」と改めて地元の観衆に感謝。まず1勝を挙げた愛媛県が「大きな相手に勝つための」サッカーを準々決勝でも貫いて、また観衆を沸かせる。

(取材・文 吉田太郎)
●第72回国民体育大会「愛顔つなぐえひめ国体」特集

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