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「全国出るだけでなくて全国優勝を狙っていきたい」。J内定3選手擁する興國が育成にこだわる理由と冬への意気込み

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 冬の高校日本一を目指した戦いがスタートしている。大阪を代表する“育成チーム”、興國高は名古屋グランパス加入が内定しているFW大垣勇樹(3年)、清水エスパルス内定のMF西村恭史(3年)、そしてツエーゲン金沢内定FW島津頼盛(3年)と今年、Jリーグ内定選手3人を擁する注目校だ。Jクラブ内定の3選手に集大成となる大会への意気込みや彼らが着用しているスパイクについて、また指揮を執る内野智章監督に彼らが上のステージで活躍する上での武器や育成にこだわる理由について聞いた。

―内野監督、プロの世界に挑戦する3選手の特長について教えてください。
内野監督:「大垣に関してはスピードがあって、身のこなしがしなやかで、技術がある。メンタル的にも動じないですし、サッカーに対してマジメ。ボールコントロールはしなやかだけど、スピードも時速33kmを記録するほど突出している。ポテンシャルの部分も含めて、日本の中にはなかなかいてないアタッカー、自分で行けて、点も取れるアタッカーになって行けるんじゃないかと思います」

―西村についてはいかがでしょうか?
内野監督:「西村に関してはまずサイズ(184cm)です。そのサイズがありながら、チーム1、2のテクニシャンですし、デカイけれどスピードとアジリティーを持ち合わせている。細くて瞬間的にパワーが出る質の筋肉に近いので、彼も日本にいないタイプじゃないかと思います。さらに人間性も高く、心技体ともにスーパーかなと思います」

―島津の特長についても教えてください。
内野監督:「島津は線細いんですけれども、瞬間最大パワーを発揮できる筋肉を持っている。質のいい筋肉を持っていて、運動能力が高いですし、最近スピードもついてきているんですよね。3人の中で一番運動量が多いんですけれど、右足シュート、左足シュート、グラウンダーのダイレクトシュート、ダイビングヘッド…パワー以外の全てを持っているくらい。あれほど、ドリブルから質の高いシュートを打てるのは凄いですね」

―3人はプロ入りが決まってかなり時間が経ったけれど、心境の変化だったり、成長を感じる部分はある?
大垣:「グランパスに練習参加をして、はじめの方はシュートもなかなか入らなかったです。自主練をコーチとやっていた時に、シュートのスピードとか速くしなければ入らへんと分かって、シュートのスピードを上げるようにしたら入るようになったので、質が上がったかなと思います。(少し前とは)全然違います」
西村:「この1か月、チームとして結果が出なくて、自分としてもまだまだ足りないとまた改めて気づきました。その中で、個人的に自主練などを練習終わってからやってきました。最近、ゴールに直結するパスとか、ゴール前で点取るところとかが減っていた。2、3本のチャンスで、一本一本を確実に決められるように練習している。チームだけでなくて、自分としても選手権で結果を出していけるようにして、清水でまた結果を出したい」
島津:「今の自分の課題が後ろの選手から真ん中辺りで受けた時に、前向けるのに向かなかったりして、シュートチャンスを逃して来たんですけれども、選手権へ向けてこの遠征(adidas cup tokyo)で前向くようになってから、シュートチャンスを逃さないようにできてきている。自分にちょっと余裕が出て、そういうところでも前向いて行けるようにできてきている。」

―興國は毎年のようにプロへ行くレベルの選手を輩出しています。内野監督はなぜ、選手育成にこだわっておられるのか? 他のチームから違う目標を掲げてスタートし、積み上げてきたと思いますが、個を育てようと考えてきた理由は?
内野監督:「自分の選手時代の経験が影響しています。凄い上手いなと思う選手が、高校サッカーで燃え尽きていたり、そういうのを見て来ましたし、全国で結果を出したのに高校卒業してサッカーを続けている選手が物凄く少ない。結局、みんな、チームで勝つことを優先されすぎて、一人ひとりバラバラになったら意外と何もできへんなと感じていました。中心選手はある程度自由にやらせてもらって、それなりに成長させてもらえるんでしょうけれども、それ以外の選手が機械的にプレーさせられている、みんな大学行って通用しないみたいな印象がありました」

―どこへ行っても通用すると個性を身に着けさせる。
内野監督:「チームの約束事の中で選択肢が少ないプレーをすることも絶対に必要だと思うんですけれども、(興國の選手は)GKからCFまで一人ひとりが独立しているようにして、長くサッカーに関わって欲しいなと。指導を始めた当初は良いチームを作りたいなというだけでした。大阪は激戦区でシンプルに勝ちだけを目指しても勝てないエリアなので、それやったら(生徒たちが)長くサッカーできるようにしたい。そして、中学生とかに声をかけに行った時に、目標を聞いたら絶対にプロなんですよ。僕らの時代と違って『選手権優勝です』とかいう子は最近稀で、『プロになりたい』とか『海外でプレーしたい』。でも、指導者は全国制覇したいんですよね。選手たちももちろん全国制覇したいんですけれども、根底にあるのはプロになりたいという思い。僕はスペインに9年くらい行かせてもらっていますが、向こうはプロ出さないと指導者は“クビ”なんですよね。だから、『今年、トップ昇格しなかったらクビですよ』と言われた指導者が毎日の練習で何に取り組むかと言ったら、多分チームのことよりも個人のことをやるんやろうなと。でも、そこでどっちもがプロという、集団があってもいいかなと。もちろん、興國の選手が全国出たくないとか、指導者が全国出たくないとか全く無いです。全国出たいし、そのためにメチャクチャ頑張っていますから」

―興國はどこの高校よりも本気でプロになりたいと思っている選手が多い高校かもしれない。
内野監督:「やっぱり、そういうふうにしているから、プロを目指す子たちが多いのは凄く感じますね」

―トレーニングもプロになるための積み重ね。それが今年は3人のJリーガー誕生に繋がった。
「忍耐ですね。例えば、西村を前に置いて頭ですらして、大垣を走らせたらメチャクチャ強いと思うんですよ。西村はボールも収まるし。でも、西村がプロを考えたら、プロは外国人FWが多いですし、ゴツい選手も多い。西村の先のことを考えたら、CBやCFではなく中盤として育てないといけないなと」

―本人がどこのポジションならばプロになれるか、プロで活躍できるのかを提案する。
内野監督:「国体で大垣が右で結果出したからそこで使ったらいいんでしょうけれども、でもプロ行ったら右しかできへん選手は生き残れないと思います。右、左、前、1.5列目とできる選手やないといけないと思って、実際にそれをやらせている間、チームはカチッとしてこないです。その中でもトコトン勝ちに対して要求するんですけれども、まずは選手がどっちもできるようにしなければいけない。島津も1年の時は左で、2年はインサイドハーフ、そして今は前をやらせています。西村は去年、CBもやらせました。ボランチとしてプロにならせたかったから、ボランチとしての守備を鍛えるためにCBもさせましたし、逆にCFもさせました。ただし、この選手権だけはベストのポジションでやらせようと思っています」

―3人が興國の3年間で学べたことは? 興國だったからプロになれた部分もあると思うが?
大垣:「先輩にプロがいるので、本格的にプロを目指すようになりましたし、足元の技術とか、パスとか、1年生の時から1から教えてもらえるので高校に入って見直すことができました。戦術面では相手がこう来たら、こう動いてとか頭を使ってプレーするようになりましたし、周りを見てどう動いたらいいのか、スペースを見つけて背後を取ったりできるようになりました。研修旅行でスペインへ行ってバルセロナの試合を見て、メッシやスアレス、ネイマールとかのプレーを間近で、その選手たちのボールの受け方、背後の取り方を見た中で、動き出しとか学べることができたのは大きかったです」
西村:「毎日基礎の練習をして、基礎の止める、蹴るは中学校の時に比べたら凄く上がっているし、戦術、サッカーIQもついて来ている。興國は(スカウトや大学関係者など)色々な人が見に来てくれる環境。誰が見ているか分からないので、常に自分のパフォーマンスをしてきました。その中で、ミスが少なくなって、パスセンスも出てくるようになりました」
島津:「僕はあまり、ドリブルのところが抜ける選手ではなかった。でも、興國で足元のところを身に着けたから、(DFが)1枚2枚来ても剥がしてパスとか行けるようになった。今はボールを持っても失わないようになった。身体も小さい方なので、以前は背負って受けたら失っていた。でも、失わないようになったから、今、ドリブルのところで評価されたり、一番足元の部分が伸びたと思います」

―今回、3人はadidasスパイクの新色、『PYRO STORM PACK』を着用します。大垣選手は「X」、西村選手は「ACE」、そして島津選手は「NEMEZIZ」、それぞれが着用するスパイクについての感想を教えてください。
大垣:「『X』は履きやすくて試合中でも気にならないですし、ズレたりしないのでやりやすいです」
西村:「『ACE』は靴の中が結構広いので履きやすいですし、キックもしやすいので良かったです。そして、フィットするので走りやすいし、蹴ったあとも違和感なくプレーすることができる」
島津:「『NEMEZIZ』は他の靴よりもフィットしますね。アッパーは軽さもあるし、ボール蹴った時も自分の思ったところに蹴るところができる」

―選手権でそれぞれに期待するところは?
大垣:「西村に期待するところはラストパスとかスルーパスのところと、得点のところに期待しています。島津も得点とアシスト。2人は両方できるので期待しています」
西村:「(島津)頼盛は、ドリブルからシュートとかいろいろなところで受けて、動き出しとか出すのでそういうところ、大垣は自分で行ってからの得点ですね。2人ともなんですけれども、得点のところは期待しています。」
島津:「ヤス(西村)はキックの質が高いのでスルーパスのところ、ラストパスの質のところでゴールに繋げられるパスを僕とか周りの選手にしてもらいたい。大垣は足速いんで、大垣にパス出して点を決めてもらいたいです」

―最後に、選手権への意気込みを教えてください。
大垣:「僕はドリブルを見て欲しいですし、3人の連係であったり、バイタルエリアでの崩しとか見て欲しいですし、チーム的にもポゼッション、ビルドアップのところとか、GKから始まっての崩しを見て欲しい。個人的にはドリブルからゴールを決めたい。大阪予選で優勝して、全国出て、全国出るだけでなくて全国優勝を狙っていきたい」
西村:「技術のところとキックの精度とか攻守のハードワークとか見て欲しいですし、チームとしても調子が上がってきているので、勝って全国出て、優勝できるようにしたいです」
島津:「僕はみんなよりも点を取る自信があるので、そこを見てもらいたい。あと、周りとの関わりのところで走ってどこのポジションにもおるというところを周りの人に見せれたらいいなと思います。チームとしては、大阪予選で優勝して、全国でもまた優勝できるようにしたいです」

(取材・文 吉田太郎)★PYRO STORM PACKの詳細はこちら

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