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伝統校・前橋商がPK戦の末、4強入り。準決勝は宿敵・前橋育英との“群馬クラシコ”に

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前橋商高が雨中の熱戦を制して群馬準決勝進出!

[10.21 選手権群馬県予選準々決勝 共愛学園高 1-1(PK3-4)前橋商高 前橋総合]

 第96回全国高校サッカー選手権群馬県予選準々決勝が21日に行われ、04年度以来となる選手権出場を目指す前橋商高が1-1で突入したPK戦の末、共愛学園高に4-3で勝利。前橋育英高と戦う準決勝(11月19日)進出を決めた。

 苦しい戦いだった。伝統校であるがゆえの「負けられない」重圧からか、本来の力を前半から出し切ったとは言い難い。だが、積極性を欠いた前半から立て直し、後半は良さを随所に出した前橋商がPK戦の末に準々決勝突破。準決勝ではライバル・前橋育英との伝統の一戦、“群馬クラシコ”を戦う。

 試合開始前から降り続く雨の中で始まった一戦の前半は、共愛学園が主導権を握った。MF北村一輝(3年)とMF角田和優(2年)のダブルボランチが素早く正確なパスで攻撃のテンポを作る一方で意表を突くようなスルーパスも通していたほか、空中戦で強さを発揮するCB米山玲緒(3年)や前線でボールを収めるFW星野佳祐(3年)、右SH萩原一葉(3年)ら局面の多くで前橋商に勝っている印象があった。

 また、左SH大島拓也(3年)らがクロスを上げきっていたこともあってCKの数を増やした共愛学園は前半22分に先制点を奪う。大島の左CKのクリアが小さくなったところをCB奥野真太郎(2年)が豪快な左足シュートをネットへ突き刺してリードを奪った。

 前橋商も中盤に降りてボールに絡むMF櫻井優希(3年)が起点となってサイドへボールを展開。チームの鍵を握るSB高橋直希主将(3年)とMF中島怜意(2年)の右サイドからの崩しなどで反撃し、前半終盤には流れを引き寄せていた。だが、共愛学園は相手にフリーの選手を作らせず、球際でのチェックでも厳しい守りを続けて隙を見せない。

 前橋商は元札幌、甲府の笠原恵太監督が「最初ビビってしまっていましたね。向こうの勢いがあるので押し込まれるかなと思っていた」という前半を0-1で終了。それでも指揮官が「とにかく、やってきたことを出すということ。後半は良くなったかな」と振り返り、高橋も「ハーフタイムに『走れていない』と言われて、しっかりそこから走って守備から攻撃に繋げていこうとそれができていたと思います」と語ったように、後半は勢いのある攻守によって巻き返す。

 攻撃回数を増やした前橋商は18分にFW大橋洸紀(3年)が抜け出したが、共愛学園は北村がブロック。共愛学園は勢いに飲まれずに守っていたものの、23分に自陣でのミスから大橋にインターセプトされると、GKがかわされて同点ゴールを許してしまった。

 追いついた前橋商は良い形でボールを奪うシーンも増加。そしてサイド攻撃から決定機を作り出す。30分に細かいコンビネーションから抜け出した大橋が右足シュートを放ち、33分には右サイドを崩し、最後は高橋の折り返しを受けた中島が右足を振り抜く。その後も、大橋や中島がDFの逆を取るドリブルを見せて2点目を奪うチャンスを作り出していた。また、最終ラインではCB藤生春樹(3年)とCB李守文(3年)の両DFが強さを発揮するなど良い雰囲気の中で試合を進めていく。

 だが、勝負を決めきることができずに試合は延長戦へ突入。互いにシュートシーンは作り出したが、スコアは動かず、決着はPK戦に委ねられた。その2人目、後攻・共愛学園のシュートを前橋商GK帖佐和也(3年)が左へ跳んでストップする。その後全員が決めて迎えた5人目。決めれば準決勝進出となる前橋商は帖佐が右足を振り抜いたが、ボールはクロスバーの上方へ外れてしまう。それでも、切り替えて守りについた帖佐が直後のシュートを右へ跳んでストップ。この瞬間、前橋商のベスト4進出が決まった。

 次は選手権出場11回の前橋商と同20回の前橋育英が激突する伝統の“群馬クラシコ”。前橋商は1-2で競り負けた昨年など過去4年いずれも準決勝以上で前橋育英と対戦し、敗れ続けている。それだけに、高橋は「(笠原)監督に『群馬県で伝統ある高校は前商と育英だけだ』と言われている。前商という看板を背負っているので、情けないプレーはできないです。最近勝っていないので、勝ちたいという気持ちが強い。しっかりこの1か月準備して伝統校の名に恥じないようなプレーがしたいです」と力を込めた。

 年代別日本代表、日本高校選抜、J内定者を擁し、選手層も厚い前橋育英が全国でもナンバーワンクラスのチームであることは理解している。だが、アグレッシブさが出て流れを引き寄せたこの日の後半のように、トレーニングしてきたことが表現できれば十分に勝機も。強大な力に全力でチャンレンジし、大会3連覇中のライバルを止める。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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