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強みを出すことにこだわる時期。2発の青森山田FW中村「駿太が来てくれて良かった」と仲間が思うような結果を

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後半5分、青森山田高FW中村駿太はDFに挟まれながらも強引にシュートを打ち切って2得点目のゴール

[10.22 選手権青森県予選決勝 青森山田高 11-0 八戸学院野辺地西高 青森総合]

 課題を改善することに集中してきた日々から、求めるものが変わってきている。U-18日本代表FW中村駿太(3年、山形内定)は今年3月に柏U-18から青森山田高へ加入。自身にとって初めてとなる選手権予選の決勝戦は“らしい”プレーも見せて2ゴールを挙げた。

 前半はチームがサイドからチャンスを作る中で、クロスに飛び込む動きを連続。だが、ボールがタッチラインを割ったり、目の前でGKにキャッチされたりすることが目立ち、「(GKを)外して!」と厳しい声でパスの出し手に要求するシーンもあった。

 良い形でボールを受けるシーンはそれほど多くなかったものの、ボールを持って前を向いた際は鋭い仕掛けや、視野広く周囲を活用できる強みがある。特にターンから強引に相手の前に入り込み、シュートへ持ち込む動きと得点力は世代トップクラス。前半35分にはDFとの1対1から縦へと持ち込んで右足シュートを放ち、このこぼれ球をMF佐々木友(3年)が頭で決めた。

 そして、後半開始直後には左CKから右SB鍵山慶司(3年)のヘディングシュートのコースを変える形で1点目。さらに5分には左サイドでの崩しから足下でボールを受けると、DFの間へ強引に身体をねじ込んで右足シュートを打ち込んだ。これが決まって2点目のゴール。その後、右サイドからの突破でMF瀬尾純基(3年)のゴールをアシストすると20分過ぎには“お役御免”の交代でベンチに下がった。

 本人は2得点という数字にも満足をしていなかった。確かに、もっと周囲が驚くような結果を出せる力があるはずだ。献身的にスペースを作る動きを繰り返し、チャンスメークする部分、守備でのハードワークは間違いなくチームの力となっている。運動量など課題だった部分を伸ばしてできることを増やした。その中で本人はより、「決めること」へ意識を傾けつつある状況だ。真摯に課題と向き合い、克服してきたからこそ、次のステップを踏む決意が感じられる。

「最初、(青森山田に)来た時は『できないことが多すぎる、このままじゃプロで通用しない』と(黒田剛)監督に言われていて、色々な課題を与えてもらってちょっとずつ、克服してきました。最近、監督には(課題についてではなく)『結果にこだわれ』『とにかく、オマエは決めなきゃダメだ』『オマエは決めるんだ』ということを言われている。僕の中で課題を大事にする時期から、自分のストロングを出し切ることを意識してもいいのかなという時期に入ってきていると思います。今までできなかったことが自然とできるようになっていると自分の中で思っているところもあるので、あとは結果にこだわるだけかなと思います」

 インターハイは無得点でチームは3回戦敗退。プレミアリーグEASTでも現在5得点と満足の行く成績ではない。彼には今春、突然の加入となった中で受け入れてくれた仲間たちのためにも、結果を残したいという思いがある。だからこそ、「インターハイは優勝させられなかったので、プレミア、選手権とありますけれども、最後の最後で僕が仕事をして、みんなの力で取る優勝ですけれども、『駿太が来てくれて良かったね』と本気でみんなが思ってくれる結果を個人としても出せればなと思っています」と力を込めた。

 黒田監督も「中村駿太がもうちょっと調子上がってくれば。全国行ったり、この後のプレミアでは1点の勝負になってくるので、その1点を取れる選手になってくれればいい」と期待するストライカー。今後優勝争いをしているプレミアリーグ終盤戦、そして彼にとって初となる選手権で中村は結果にこだわり、チームにとって必要な1点を決める。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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