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夏の敗戦が変化のきっかけに。「全国に戻って結果を残したい」と誓う北陸が福井連覇へ前進

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北陸高が1点差勝負を制して連覇に王手をかけた

[10.29 選手権福井予選準決勝 敦賀気比高 1-2 北陸高 三国運動公園陸上]

 第96回全国高校サッカー選手権福井県予選の準決勝が29日に行われ、北陸高が敦賀気比高に2-1で勝利した。北陸は11月5日の決勝で福井工大福井高と対戦する。

 この日の天気は午後から下り坂。試合開始時間に雨足が強まり、思い通りにプレーできないことは想定済で、「スタッフからは、『シンプルに正確に。基本の勝負になる』と言われていた」(DF堀圭吾、3年)北陸だったが、立ち上がりから思うようにボールを繋ぐことができなかった。

 序盤は前線へのロングボールが主体の縦に速い攻撃を志向したが、PA前まで持ち込めない時間が続いた。対する敦賀気比は雨を苦にせず、2列目のMF畑矢稜太(3年)と東佑風(3年)を中心に細かいパス回しでゲームをコントロール。機を見ては鋭い縦パスを入れて、北陸ゴールに迫ったが、「我慢する時間帯を共有できていた」と振り返る堀を中心に集中を切らさず対応を続けた北陸の守りを崩すことができなかった。

 両者、点が奪えずもどかしい流れが続く中、最初の決定機は前半26分。敦賀気比のMF佐々木泰靖(3年)が前線にスルーパスと送ると、ゴール前を抜け出した東がシュートを放ったが、GK松山蓮大(3年)に阻まれた。北陸は守護神の好セーブによって、ピンチを凌ぐと、直後の27分にチャンスが到来。右サイドを上がったDF杉村勇輔(2年)のクロスからFW妹尾隼(1年)がヘディング弾を叩き込み、北陸が先制した。

 後半に入ってからも、一進一退の展開は変わらない。6分には、北陸の左CKから杉村がヘディングシュートを放ったが、ボールは枠の外。13分には敦賀気比が左からチャンスを作ったものの、FW渡邉律(3年)のシュートは勢いなくGKの正面に終わった。

 再び試合が動いたのは26分。妹尾のクロスが反対サイドに流れると、ボールを受けた杉村が落ち着いて右足シュートを決めて北陸が突き放した。試合終盤は敦賀気比に押し込まれ、39分には東にミドルシュートを決められたが、北陸が1点のリードを保ったまま、タイムアップを迎えた。

 4年連続となる決勝進出を果たした北陸だが、今年歩んだ道のりは決して楽ではなかった。インターハイ予選は初戦こそ、武生東高に6-0で大勝したが、続く準々決勝では藤島高に0-1で敗戦。「内容よりも、メンタリティーが話にならなかった。あの試合を観ていた保護者もOBも『なんだこれ…』と口にする内容。選手権で1万人近くいる観客の前でプレーした選手が5人もいるのに、県予選で雰囲気に飲まれて、身体が動かなかったと言っている選手がいた」(松本監督)。昨年は優勝を果たした県1部リーグも、ライバルである丸岡高に2敗したことが響き、2位で終えるなど、満足することができない結果が続いていた。

 しかし、インターハイの負けを機にチームが変化をしていく。「今思うと、インターハイの敗戦があったから今がある。負けて良かったというわけじゃないけど、あの負けでチームがこのままじゃ、選手権で後悔すると思い、3年生を中心に練習から気を引き締めた」(堀)。サッカーと真剣に向き合うことで、徐々にチーム状態は向上。3年生と下級生が声を掛け合う機会も増え、チームとしての一体感が増していった。

「まだまだ物足りなさはある」と松本監督は話すが、「『自分を変えなければいけない』と自覚したことが決勝行きに繋がった」と続けるように、インターハイの頃から確実にメンタリティーは変わりつつある。「北陸高は全国でまだ一勝もできていないし、ゴールも奪えていない。先輩たちから託された課題だと思うので、全国に戻って結果を残したい。だからこそ、次の試合が大事になる」。勝って満足するのではなく、堀がそう気を締めたように、北陸はもう一つ白星を積み上げ、変化を確かなモノにする。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2017

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