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今年は自分たちのパススタイルで勝ち上がる!名門・藤枝東は後半ラストプレーで追いつかれるも、延長戦制して静岡8強入り

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延長前半9分、藤枝東高DF平出海(右)が決勝ゴール

[11.3 選手権静岡県予選決勝T1回戦 藤枝東高 2-1(延長)飛龍高 草薙球技場]

 第96回全国高校サッカー選手権静岡県予選は3日、16チームによる決勝トーナメントへ突入。1回戦8試合が行われ、ベスト8が決まった。草薙球技場の第1試合では2年ぶりの優勝を狙う名門・藤枝東高と静岡東部地区の強豪・飛龍高が激突。1-1で突入した延長前半9分に右SB平出海(2年)の決めたゴールによって藤枝東が2-1で勝ち、浜名高と対戦する準々決勝へ進出した。

 今年は伝統のスタイルを表現して全国を戦う。試合は序盤、藤枝東がボールを握って進めたが、飛龍は12分にショートカウンターからFW羽田颯(2年)が枠へ左足シュートを飛ばしたのを皮切りに、良い形のボール奪取から1年生MF江本颯汰のスルーパスやMF勝田晃太郎主将(3年)の裏へ抜ける動きなどから連続でチャンスを作り出す。

 一方の藤枝東も小林公平監督が「1年生ながらよくやっている。上手いです」と評するMF坂本康汰の長短のパスやMF松田春輝(2年)、MF山本竜輝(2年)が絡んでのパス交換などからサイドへボールを運ぶと、右の注目MF田村祐二朗(2年)と左のMF平尾拳士朗(2年)らが相手のマークを外してクロスへ持ち込む。

 藤枝東は先発のうち6人、飛龍は同9人が下級生の選手たちだったが、彼らが技術力や身体能力の高さを発揮。押し込んでいたのは藤枝東だったものの、飛龍もCB西村凌(2年)やCB岩田晃寿(1年)が良く踏ん張り、攻め返すところも見せて0-0のまま前半を折り返した。

 だが、後半は藤枝東が一方的に相手を押し込む展開となった。飛龍が引き気味に守っていたこともあったが、藤枝東は正確にボールを動かし、ややプレッシャーがかかるような局面でも巧みなボールコントロールを見せてマイボールにするなど、ほぼ敵陣で試合を進行。また、ボールを失った直後に前線から複数の選手が奪い返しに行ったことで飛龍は苦しい形でのパスが続き、攻撃が機能しなくなってしまう。

「後半はプラン通り」(小林監督)にボールを支配し続けて攻める藤枝東は23分に先制点を奪う。左サイドからDFを剥がしながら中央へ持ち込んだSB増田俊介(3年)がスルーパス。これで左中間を抜け出した田村が思い切りよく左足を振り抜くと、ボールはゴール右上隅に突き刺さった。

 失点直前に注目のエースFW斉木裕龍(3年)を投入していた飛龍も反撃。26分には右SB石原星輝(2年)の左ロングスローのこぼれに西村が飛び込んだが、藤枝東DFが間一髪クリアする。藤枝東はこの後、追加点こそ奪えなかったものの、ボールを保持して試合を進める。飛龍はゴールが遠い展開だったが、それでも後半アディショナルタイム5分に左CKを獲得。これを左SB蓮池光(2年)が蹴り込むと、斉木が抜群の高さからヘディングシュートを打ち込んで同点に追いついた。

 ラストプレーでの起死回生の一撃で延長戦へ持ち込んだ飛龍に対し、藤枝東はインターハイ予選準々決勝で同じような失点からPK戦敗退しているだけに暗雲が漂った。それでも、「ピッチの中でも『総体思い出せよ』という声が出ていた」(田村)という藤枝東は崩れない。

 延長戦でもボールを保持しながら攻めると、その前半9分、坂本の左CKをニアへ走り込んだ平出が頭で決めて勝ち越し点。飛龍も後半終了間際に右CKのこぼれにFW野毛海里(3年)が走り込んだが、シュートは枠を外れ、同点に追いつくことができなかった。

 勝った藤枝東は全国復帰へ前進。15年度は2年ぶりの選手権出場を果たしたが、1回戦で香芝高(奈良)に0-0からのPK戦の末に敗れている。藤枝東OBで当時監督就任1年目だった小林監督は「1年目はとにかく全国出たいと思って割り切ったサッカーをしていた。(内容、結果にこだわる現在は)スタッフ、選手も(積み重ねられてきた)伝統的なところを大事にしようと取り組んでいます」。最後の局面での崩しの精度や、後半終了間際に喫した失点など反省点はもちろんあるが、普段から意欲的にパス&コントロールなどに取り組んでいるというチームはトレーニングの成果が見える内容で準々決勝へ駒を進めた。

 2年前の全国経験者であるCB山口晏侍主将(3年)が「悔しいです。戻りたいです」と誓う全国舞台。そこに舞い戻るために、山口は「今回もロスタイムに追いつかれてしまったけれども、勝ち切れたところは成長している部分だと思います。プラスに捉えながら、一戦一戦決勝戦のつもりでやっていきたい」と誓った。今年、必ず全国へ復帰し、今度は藤枝東らしいサッカーで一つでも上へ勝ち上がる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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