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激闘は4-3で決着!東京朝鮮が魂の連続ゴールで追いつくも、関東一がしぶとく延長戦制して東京A決勝進出!!

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延長前半3分、関東一高FW村井柊斗(右)が決勝ゴール

[11.4 選手権東京都Aブロック予選準決勝 関東一高 4-3(延長)東京朝鮮高 西が丘]

 第96回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック予選準決勝が4日に行われ、今夏のインターハイでベスト8に進出した関東一高東京朝鮮高との一戦は延長戦の末、関東一が4-3で勝った。関東一は11月11日の決勝戦で成立学園高と戦う。

 後半残り時間が7分を切って、王者・関東一が2点をリード。勝敗の行方は決したように映った。そこから脅威的な粘りを見せた東京朝鮮が魂の同点劇。それでも、昨年度のインターハイ予選と選手権予選、今年の関東大会予選、インターハイ予選と強豪居並ぶ東京都のトーナメント戦で勝ち続けている関東一が延長戦を制して決勝進出を決めた。

 変則の3-5-2システムを組んだ関東一は前半、前から出てくる東京朝鮮をいなすようにゆっくりとボールを動かしながら前進していく。そして21分には左サイドからのボールをFW貝瀬敦(1年)が落とし、注目FW篠原友哉(3年)が右足シュート。こぼれ球を貝瀬が右足で押し込んだ。

 先制された東京朝鮮はFWハン・ヨンギ主将(3年)がそのパワーで相手の守りを押し下げ、MFホン・リジン(2年)のロングスローなど高さ、強さを活かした攻撃で反撃する。だが、次の1点も関東一。36分、俊足FW貝瀬が左オープンスペースへのボールに追いつくと、PAへループパス。これを篠原が巧みなボールコントロールから瞬時に放った右足シュートで2-0とした。

 東京朝鮮は38分に右ロングスローからファーサイドのMFプ・チウ(3年)が完璧な右足ボレー。だが、関東一GK北村海チディ(2年)のビッグセーブにあって追撃することができない。関東一は後半2分にもビッグチャンス。だが、CB小野凌弥主将(3年)のヘディングシュートがポストを叩くと、その後は「前半はボールホルダーに厳しく行くところがなかったので、強調した」とカン・ジョンジン監督が説明したように、球際の強度を増し、注目MFムン・インジュ(3年)らがセカンドボールを拾って攻撃に繋げる東京朝鮮が徐々に流れを引き寄せていく。

 13分にアーリークロスからMFキム・セリュン(3年)とムン・インジュが連続で放ったシュートは関東一GK北村が圧巻の連続セーブ。それでも東京朝鮮は20分、ハン・ヨンギの左アーリークロスを右SBチョン・ユギョン(2年)がダイビングヘッドで決めて1点を返した。

 関東一は25分に中央から右前方へ流れながらドリブルしたFW村井柊斗(3年)が豪快な右足シュートを決めて3-1。このまま試合を締めるかと思われた関東一だったが、「11人だけじゃ戦えないということでチームの立ち上げからやってきた」(カン・ジョンジン監督)という東京朝鮮がスタンドを含めた一体感あるサッカーでビハインドを跳ね返す。

 34分、右スローインからSBカン・アスン(3年)が上げたクロスを前線へポジションを移していたチョン・ユギョンが頭で合わせて再び1点差とする。東京朝鮮側の赤く染まったスタンドは大興奮。そのボルテージが高まったまま迎えた37分、東京朝鮮イレブンがさらにスタンドを興奮させる。プ・チウがDFラインとGKの間へ入れたボールは関東一が身体を入れて処理しようとしていたが、強引に前に出たチョン・ユギョンが右足ループシュート。これがゴールへ吸い込まれて3-3となった。

 止まらない東京朝鮮はさらにアディショナルタイム、カウンターからハン・ヨンギがビッグチャンス。関東一を飲み込みかけていた。それでも篠原が「一人ひとりが最後まで諦めないでやるというのは試合前から心の中に留めてあったものなので、そこは全然大丈夫でした」という関東一は冷静さを失わず、その勢いを跳ね返す。

 延長前半3分、篠原が巧みなトラップからPA方向へ持ち込むと、セカンドボールの攻防から左サイドへボールがこぼれる。これを村井が右足ダイレクトで決めて関東一が再び勝ち越した。その後、東京朝鮮は同点のチャンスを作り出したが、GK北村のビッグセーブに阻まれてしまう。最後は大型DFキム・チャンミョン(2年)を前線に入れて強引に4点目を奪いに行ったが、こちらも勝利への執念を見せる関東一がボール、ゴールを守ることへの執着心で相手を上回って4-3で試合終了。ピッチに倒れ込んで悔しがる東京朝鮮の選手たちの隣で関東一の選手たちがホッとした表情を見せていたのが印象的だった。

 関東一の小野貴裕監督は「(東京朝鮮は)一番苦しいブロックを勝ち上がってきている。強かったですね。個人の能力が高かった」と相手を讃え、「今日のウチの勝ちは相当デカイ。(勝ち上がるためには)苦しまないとダメ」と苦しみながらも勝ちきったことの価値を強調していた。

 関東一は篠原や村井、そして小野監督が成長を認める2年生レフティー、MF小関陽星ら個性的な選手たちが並ぶ。また、冷静なプレー光る右SB田中大生(1年)や貝瀬らが台頭するなど、公式戦のピッチに立つための競争は非常に厳しく、この日ベンチ外でも決勝で先発していてもおかしくないような選手たちがいる。充実した選手層。小野監督が「(東京には)強いチームがいっぱいいる。相手が良い中で良いサッカーをするのは難しい」と語る中、結果を出し続けている関東一は内容が伴わなくても高いレベルで「しぶとく勝てる」チームになってきている。

 インターハイ準々決勝で前回優勝校の市立船橋高を苦しめながらも惜敗。関東一は悔しさと同時に、上を狙える手応えも感じたはずだ。篠原は「(夏は)ベスト8止まりだったのがみんな悔しかったと思うので、もっと高い目標を持った方がモチベーションにもなるし、いいと思うのでそこはベスト8以上、ベスト4、もっと上に行けるようにと思いながらやっています」。決勝戦で対戦する成立学園高も強敵。だが、苦しみながらも勝ち続けている関東一が決勝戦でもしぶとく白星を掴んで、全国で上を狙う。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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