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夏に学んだ“決めきる”ことの大切さ…尚志が粘る帝京安積を退け、4連覇を達成:福島

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尚志が4連覇を達成し、全国へ

[11.4 選手権福島県予選決勝 尚志高 3-1 帝京安積高 西部サッカー場]

 4連覇を狙う尚志高と、現校名(旧・安積商高)で夏冬通じて初の決勝進出を果たした帝京安積高の一戦となった、第96回全国高校サッカー選手権大会福島県予選決勝。尚志が堅い帝京安積の守備をなかなか切り崩せず、一時は1-1の同点となったが、終盤に力で押し切る形で3-1の勝利を飾り、見事に4連覇を達成した。

 立ち上がりから尚志がボールを支配し、攻勢に出た。「相手が引いてくるのか、前に来るのか分からなかったので、そこは選手達に相手を見て仕掛けろと伝えた」と仲村浩二監督が語ったように、最初の5分で相手が前に出てこないと判断した選手達は、左のDF沼田皇海と右のDF石川竣祐の両サイドバックを高い位置に上げて、サイドから切り崩しに掛かった。

 帝京安積の粘り強い守備に苦戦した尚志だが、仲村監督が「今週はサイドからの崩しのトレーニングばかりをやっていた」と明かしたように、再三サイドから仕掛けていくと、37分にそれが結実する。左CKからMF加野赳瑠のキックをMF長谷秀皐がダイレクトで蹴り込んで先制に成功をした。

 後半、現校名で初の全国を狙う帝京安積も反撃に転ずる。12分にFKを得ると、MF大井川竜也のキックをCB星野要人が繋ぎ、最後はFW五条方猛が押し込んで同点に追いつく。24分には、MF穂積幸希の突破のこぼれから五条方がシュートを放つが、これは尚志GK宗像利公のファインセーブに阻まれた。

 圧倒していた前半から一変し、苦しい展開に陥った尚志だったが、「長崎総合科学大附戦は忘れられない。決めれば絶対勝てたのに決めきれず、相手エース(安藤瑞季)の一撃にやられた。全国で勝つためには決めるべきところで決めきれないと、上には行けない」(MF渡辺新史)。今年のインターハイ3回戦の長崎総科大附戦で、圧倒的にペースを握りながらも決めきれず、0-1で敗れた苦い経験がここから効力を発揮した。

「(長崎総科大附戦を)見ていた人も『絶対に尚志が勝つだろう』という展開だったのに、一発の怖さを知ったし、やっぱりゴールを決めないと意味が無い。夏以降『ゴールを決め切る』ということに相当な意識を持って取り組んで来た」(加野)。

 尚志は同点にされてから仲村監督がFW中井崇仁やMF坂下健将といった攻撃のカードを次々と切ることで、ピッチに「攻めきれ」という強烈なメッセージを送ると、選手たちもそれにしっかりと応えた。後半30分、CB功刀舜也の折り返しを渡辺がヘッドで押し込んで勝ち越すと、34分にはDF石井龍平がダメ押しゴールを蹴り込み、一気に勝負を決めた。

 1-3で惜しくも敗れた帝京安積・小田晃監督は、「同点にした後に相手は慌てることなく、やることを徹底して来た。もっと粘り強さ、勝負強さを身につけないといけない。来年はこの経験を絶対に活かさないといけない」。最後は尚志の底力に屈する形となった。だが、初の決勝進出とこれまでの歴史を塗り替えただけに、来年以降、『打倒・尚志』の一番手になるべく、ここから更なる強化をして行くことを誓った。

 一方で帝京安積の粘りを退けた尚志・仲村監督は、「長崎総科大附戦は繋いで崩して戦うサッカーがしっかり出来たのに負けた。次のステップはそれを決めきること。長谷と渡辺がフィニッシュの精度を上げて来てくれたのが良かった」と、夏の敗戦を力に変えて掴んだ勝利に安堵の表情を浮かべた。

 だが、すぐに表情を引き締めた仲村監督は、こう口にした。「僕らにとって全国大会がスタート。みんな入学前から『尚志で日本一』を目標にして来ているので、それを夢のままにせずに明確な目標に据えて強化をして行きたい」。全国の頂を捉え続ける指揮官の思いは選手も同じ。選手権では『決めきるサッカー』で、目標を現実に変えるべく、尚志は新たなスタートを切った。

(取材・文 安藤隆人)
●【特設】高校選手権2017

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