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覇権奪還の準備は整った!勝負を分ける精神面の成長、四中工が海星とのPK戦制して決勝戦へ:三重

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四日市中央工高海星高とのPK戦を制して決勝戦へ

[11.4 選手権三重県予選準決勝 海星高 2-2(PK3-5)四日市中央工高 四日市中央緑地公園陸上]

 第96回全国高校サッカー選手権三重県予選の準決勝が4日に行われ、四日市中央工高が2-2で突入したPK戦の末、5-3で海星高に勝利した。11月11日の決勝では三重高と対戦する。

 県勢最多となる32回の選手権出場を誇りながらも、昨年の予選はまさかの準決勝敗退。「四中工は全国に出ることが宿命。準決勝で負けるのは許されない」(樋口士郎監督)と、並々ならぬ思いでこの日の一戦にかけた四中工が33回目の選手権に王手をかけた。

 ただし、「今日はやりたいことはできていない」と樋口監督が口にしたように、試合展開は決して楽ではなかった。前半は立ち上がりから、強烈な逆風での戦いを強いられ、「相手の攻撃に苦しめられた」(MF渡邊潤之介、3年)。ボールを持ったら、素早く「県でナンバーワンの選手。あの子が真ん中にいるだけで、ボールが全部おさまる」と、樋口監督が評するFW三輪翔馬(3年)と、FW櫻井天海(3年)の2トップを起点に、左のMF辻汰栄(3年)やMF矢萩ルーカス(3年)ら2列目が果敢に顔を出す海星が見せ場を作った。

 四中工は、DF内藤祐輔(3年)を中心に冷静な守備でボールを奪い、攻撃に転じたがボールが落ち着かず。前半29分にFW森夢真(1年)が迎えた決定機も活かせずに終わるなど、攻守ともに波に乗ることができない。その相手を尻目に36分、海星がビッグチャンスを作る。自陣でボールを奪ったDF山田晋平(3年)が、そのまま中央をドリブルで突破。一度、三輪に預け、ゴール前でリターンを受けてゴールを狙った。このシュートは四中工のDFに阻まれたが、こぼれ球を櫻井が押し込み、先制に成功。この1点によって、「大味なゲームでも、風下であることを考えれば前半は0-0で行ければ良いと思っていた」(樋口監督)という四中工のゲームプランを崩した。

 追いかける展開を強いられた四中工ではあったが、「ハーフタイムの選手は落ち着いていたし、行けるぞという雰囲気があった」(樋口監督)。後半開始と共に攻勢を強めると、2分には右CKから渡邊がボレーシュートを決めて、同点に追いついた。この1点で勢いに乗った四中工はFW山本龍平(2年)のスピードを活かした突破や、森の力強い突破で海星を押し込んだが、追加点が奪えず。35分には、CKの流れから、矢萩に決められ、再びビハインドを背負った。致命的な失点ではあったが、四中工の士気は落ちず、38分には右CKのこぼれ球を、森が「たまたま転がってきたので、決めるだけだった」と冷静に押し込み、再び同点。延長戦へと持ち込んだ。

 10分ハーフの延長戦でも決着がつかず、勝負の行方はPK戦へと持ち越されることとなったが、ここで四中工が勝負強さを発揮した。四中工はGK大西将亜(3年)が海星2人目のキックを止めると、5人のキッカー全員が成功。5-3というスコアで四中工が決勝進出を決めた。

「苦しい時期を過ごしている」と樋口監督が口にするように、昨年の選手権出場を逃してから、四中工は芳しい結果を残せずにいた。元々、個の能力で見れば「今年は県で三番手」(樋口監督)という見立てではあったが、1月の新人戦は宇治山田商に初戦で敗退。夏のインターハイも準決勝で涙を飲んだ。

 それでも、県1部リーグでは順調に勝ち点を積み上げ、2節を残して優勝。結果が残せないことで負のスパイラルに陥っていた今年の代にとって、大きな財産となった。「この子たちにとって、物凄く大きな自信になったと思う。これまでなら勝ち越されて、そのまま負けていた。そこから追いついたのは、メンタル的な成長を感じる」(樋口監督)。

「選手権の予選は技術、戦術ではない。どのチームも打倒・四中工で挑んでくる中で、勝負を分けるのは気持ち」と樋口監督が分析するように、精神的な成長によって、全国に出るための準備は整った。次なる相手は指揮官が「能力は県で1番」と評する三重高が相手だが、「80分戦う、ハードワークするのはうちの方が練習している」と自信を覗かせるように、タフに激しく気持ちのこもった戦いで、県の頂点を奪還するつもりだ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2017

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