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苦しい戦いで勝ち切った部分に成長の跡。履正社が昨年度全国4強・東海大仰星撃破!:大阪

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履正社高がPK戦の末、大阪ファイナル進出!

[11.5 選手権大阪府予選準決勝 東海大仰星高 0-0(PK2-4)履正社高 キンチョウ]

 第96回全国高校サッカー選手権大阪予選の準決勝が5日に行われ、履正社高が昨年度全国4強の東海大仰星高に0-0(PK4-2)で勝利した。履正社は11月11日の決勝で大阪桐蔭高と対戦する。

 3年ぶりの選手権出場を狙う履正社にとって、この日は大きな山場と言える一戦だった。対峙する東海大仰星との対戦成績は今季3戦3敗。黒星は絶対に許されない4度目の対戦は、平野直樹監督が試合後、「苦しいゲームになるのは想定内。内容は捨てた」と明かしたように、見栄えが悪くても、粘り強く白星を拾いに行くプランを選択した。

 実際、前半から指揮官の読み通りの展開が続いた。東海大仰星は後方からのロングボールで履正社を押し込み、相手エリアではMF尾花優太(3年)とMF西田幸誠(3年)の両翼、そして前線を自在に動いたFW阪本晃洋(3年)が鋭い突破を披露。外への仕掛けからロングスローやセットプレーを奪うと、競り合いに強いDF陣が空中戦に挑んだが、履正社は主力の怪我による穴を埋めたDF前園雄大(3年)やボランチのMF島里将伍(2年)が落ち着いてこぼれ球を拾うことで難を逃れた。

 パワフルな相手の攻撃に押し込まれる場面が続く中、押し返すために選んだ手段は「裏へのボールに対する対応が良くないという分析だったので、それを狙っていた。履正社らしいサッカーというよりも、勝つためのサッカー」(FW町野修斗、3年)。従来のビルドアップではなく、ボールを奪ったら、素早く前線にロングフィードを展開。「やりたいことを我慢して、今日は汚れ役になってくれた」と平野監督が称えたように、本来なら足元へのボールを好む町野が果敢に空中戦に挑み、彼のポストプレーからゴールを狙う。だが、「そう簡単にはプレーさせてもらえなかった」と町野が悔んだように、前半のシュートはわずか1本に終わった。

 後半に入ってからは、切り札として温存していたFW野口天葵(2年)を投入し、攻撃のスイッチを入れると、サイドから果敢なアタックを披露。主将のDF左居隼人(3年)が「これまでは試合で持ち味を出せていなかった」と評するMF尾登駿(3年)が右サイドから切れ味鋭い突破を繰り返したが、DF菅魁人(3年)らが粘り強い守りを見せた東海大仰星に苦しみ、思い通りにフィニッシュまで持ち込めない。東海大仰星も積極的に交代カードを切り、拮抗した展開を崩しにかかったが、スコアレスのまま前後半を終え、延長戦へと突入した。

 延長戦に入り、一番の盛り上がりを見せたのはその後半7分。左サイドを抜け出したMF東龍星(2年)が倒され、東海大仰星がPKを奪った場面だった。「PKになった時に時間を見たら、残り時間がなくて、厳しいと感じた」と左居は振り返るが、GK瀧浪朋生(3年)が足でキックをセーブ。ピンチを凌いだ履正社は素早くカウンターに転じ、相手ゴール前まで持ち込んだが、ゴールは奪えず、勝負の行方はPK戦へと突入した。ここでは4人のキッカーが成功した履正社に対し、東海大仰星は2人の選手がキックを失敗。この結果、履正社が勝利し、選手権出場に王手をかけた。

 決して格好いい勝ち方ではないが、負ければ終わりの選手権は負けないことに価値がある。平野監督は、「自分たちのサッカーで勝てれば一番良いけど、相手も我々のことを見ている。僕らが得意なのがパーだと思えば、相手はチョキを出してくるから、対策しなければいけない」と表現したように、相手に合わせた戦いでも粘り強く勝てたことは、大きな収穫。夏までは苦しい展開を勝ち切れなかったチームの成長の証でもあり、左居は「これまで3回の試合は、最後の10分、15分の所で失点をしていた。80分、または延長を含めた100分通して、絶対にゼロで抑える気持ちで身体を張れたと思う」と胸を張った。この勝ちを無駄にしないため、そして成長した姿を全国に見せつけるため、履正社は決勝戦もどん欲に白星を掴むつもりだ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2017

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