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横浜FM内定の履正社FW町野は大阪予選敗退。涙、弱い部分は見せずに選手権から去る

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表彰式。履正社高は涙を見せる選手もいたが、横浜FM内定FW町野修斗(中央)は涙を見せなかった

[11.11 選手権大阪府予選決勝 履正社高 1-2 大阪桐蔭高 金鳥スタ]

 その目から涙は見えなかった。履正社高のU-18日本代表候補FW町野修斗(3年、横浜FM内定)は敗戦が決まった後もほとんど俯くことなく、前を見据え続けた。応援席への挨拶を終えた後も、涙を見せることなく、先頭を歩いてロッカールームへ。その姿から選手権への名残り惜しさは感じられなかった。

 試合後の立ち振る舞いについて問うと、町野は「弱い姿を見せたくないんじゃないですか、無意識に」とコメント。同時に「まだ実感がない」と語った。やはり、悔しくないはずがない。プロ入りする選手として、チームを全国へ導きたいという気持ちを強く抱いていた。受け入れ難い敗戦となったが、弱い姿は見せられない。プロ入りを控えた注目選手は最後まで堂々とした姿勢のまま会場を後にした。

 試合では存在感を見せた。だが、本人、周囲にとっては満足することができない決勝だった。立ち上がりから目立っていたのは守備の部分。ポゼッションで押し込もうとするチームの中で町野は、チームが失ったボールをすぐに身体を張って奪い返し、また攻撃に繋げていた。

 チームメートたちの動きが硬く、なかなか自身にシュートチャンスが訪れないまま履正社は前半36分に失点。だが、「前半で返せたら大きいかなと決められた瞬間に思った」という町野は思い通りに、前半のうちに得点を奪い返す。

 前半終了1分前の39分、履正社はMF安羅修雅(3年)の左FKを町野が頭でゴールへ押し込んで同点ゴール。町野は1-1としたことを少しだけ喜ぶと、すぐに切り替え、チームメートへ向けて手を叩いて鼓舞していた。

 後半、勢いづいた履正社は一気に勝ち越しゴールを目指す。だが、攻めきることができない。大阪桐蔭に比べると、前線の選手たちの活動量が欠けていた。そして、15分に再び失点。町野は21分、29分と決定的なラストパスを送ったが、同点に追いつくことができない。終盤はスローインも含めて町野のところにボールが集まっていたが、前線で競り勝つことができないシーンも多く、連続攻撃させることができなかった。

 それでも、最後まで諦めなかった。「責任というかマリノスの選手なんだという目で見られるので、汚いプレーとか、諦めたようなプレーは当たり前なんですけれどもダメ」というFWは、41分にPA外側で強引に左足を振り抜く。

 だが、シュートブロックされ、1-2のまま試合終了。町野は「1点じゃ足りないというか、自分が2点、3点取らないと勝てないんで悔しいですね」。味方がチャンスを活かせなかったことよりも、2点目を奪えなかった自分を責めていた。

 目指してきた舞台を目前で逃した無念。日本高校選抜メンバーとして、今年2月の「NEXT GENERATION MATCH」や同4月のデュッセルドルフ国際ユース大会初戦で衝撃的なゴールを決めてきた世代屈指のゴールハンターは、思い焦がれた選手権の舞台に1度も立てないまま卒業することになった。

 プロ入りが決まり、選手権へ向けて謙虚に取り組む姿勢も増してきたが、恩師の平野直樹監督は町野について「まだまだ」と指摘する。自分が無理してでもプレーするところ、周囲に任せるところの判断が不足。そして「プロの世界でやるんだったら、(チーム、自分自身が)悪くてもやらないといけない。悪くてもボールロストしない選手にならないといけない。まだまだ。(そして、守備や動き出しの連続など)嫌なことを嫌がらずにやらないといけない」と求めていた。
 
 選手権出場を決めて、ここからの1か月半でさらなる成長を遂げるチャンスを失った。その中で全国に出ないからこその成長ができるか。横浜FMのキャンプが始まるまでにどのような日々を送ることができるか、町野は試されることになる。

 プロ1年目へ向けて「遠慮せずに、高卒1年目だからというのは無しで自分からゴール狙って、シュート打って貪欲な姿というか、強い意志を持った選手なんだと分かってもらえるようなプレーをしたいですし、ゴールを決めたい」という町野が、選手権敗退の悔しさを充実したプロ1年目を送るための糧にする。

(取材・文 吉田太郎)
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