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「平常でやり続けた」一条が2度のビハインドを跳ね返す!PK戦を制して連覇達成:奈良

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一条がPK戦を制して連覇

[11.18 選手権奈良県予選決勝 一条高 2-2(PK5-4) 奈良育英高 橿原陸]

 第96回全国高校サッカー選手権奈良県予選の決勝が18日に行われ、一条高奈良育英高と対戦した。共に2点ずつ奪い、PK戦までもつれたが、5人のキッカーが成功した一条が勝利し、2年連続8回目の選手権出場を掴んだ。

 心が折れてもおかしくない状況は一度や二度ではない。厳しい状況に追い込まれても、上を向き続けた一条が劇的な勝利を手繰り寄せた。一度目のピンチは開始すぐの前半2分に訪れた。奈良育英FW奥村空(3年)のポストプレーから右サイドを崩されると、MF瀧本秀介(3年)がゴール前に低いクロスを展開。最後は、フリーのFW山川智也(2年)に冷静に決められ、奈良育英に先制を許した。

 出鼻を挫かれた一条だったが、すぐさま反撃に出て、前半5分にPA手前でFKを獲得。キッカーのDF山原琢夢(3年)がゴール右下を狙った一撃が、ポストに当たりながらゴールネットを揺らした。

 劣勢を立て直した一条は、同点弾を機に攻勢を強め、自陣からのロングボールで奈良育英を押し返すと、FW竹島玲太(3年)とFW相坂恭杜(3年)を起点に高い位置からプレスを実施。ボール奪取からMF中井一尭(3年)とMF藤武駆(3年)の両翼がサイドを仕掛けたが、追加点が奪えず、「前半のチャンスを決めきれなくて、この流れはヤバいなと思っていた」(前田久監督)。

 後半から流れが一変し、奈良育英のペースに。一条の前田監督が「思っていた以上に止めることができなかった」と舌を巻いた奈良育英の奥村のポストプレーから、サイドを崩される場面が続いたが、「しんどい時間が来るのは、分かっていた」と振り返るMF川崎航太(3年)や山原を中心に声を出すことで、集中を保ち、失点を回避。後半17分に、瀧本の左クロスをきっかけに訪れたピンチも集中を切らさず対処したが、26分にDF池尻環広(3年)のクロスから奥村に2点目を奪われた。

 試合終盤に訪れた2度目のビハインド。会場からは奈良育英の勝利を確信する雰囲気も漂ったが、「得点を入れられるのは頭に入れておこうと話をしていた。2点目を獲られても、『俺らなら獲れる』とか『大丈夫』という声が出ていた」(竹島)と一条は諦めていなかった。後半アディショナルタイム2分にMF堀之内優輝(3年)が左からクロスを上げると、ゴール前にこぼれたボールを中井が決めて、再び同点に追いついた。

 延長戦でも決着がつかず、勝負の行方はPK戦に委ねられることになったが、一条は落ち着いたキックで5人全員が成功。対する奈良育英も4人まではキックを成功させたが、5人目のキックはGK古川裕斗(3年)がストップ。この結果、一条がPK5-4で勝利し、2年連続での選手権出場を手にした。

 一条の前田監督は「綺麗にパスが繋がれば、10秒で点が獲れる日頃から伝えているけど、その10秒を作り出すために、『次はあるかも』と信じられるかどうかが大事。焦ったり、もうアカンと思ったら失敗するけど、平常でやり続けた所が彼らの凄い所」と最後まで諦めずに戦った選手を称えた。

 優勝までの道のりも、この日の試合展開同様、決してスタートは良くなかった。初戦となった2回戦の東大寺戦で、主将のDF生成光(3年)が右ひざの前十字靭帯を痛め、戦線離脱。「生成がいないとチームに穴が開く」と山原が評するほど絶対的な存在を欠き、苦戦も予想された。だが、残された選手や代役の選手が穴埋め以上の活躍を見せ、準決勝までの4試合で16得点1失点という圧倒的な数字を残した。

 特に目を惹いたのは、守備陣の活躍だ。生成が「DFは堅いし、得点も獲る。準決勝で奥井瑞樹(3年)が決めた時は嬉しさもあったけど、悔しさとか焦りもあった。復帰しても簡単にはスタメンには戻れないと思った」と口にするように守備陣が攻守で大暴れし、連覇に貢献。この日も2失点したが、要所を防ぐ粘り強い守りが印象だった。今後はより守備の精度を上げることで、昨年度果たした同校史上最高のベスト16超えを目指す。

(取材・文 森田将義)
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