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痛みに負けず差別に屈せず…“不言実行弾”のR・シルバ「僕からの回答はピッチで」

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後半43分に劇的決勝点を決めたFWラファエル・シルバ

[11.25 ACL決勝第2戦 浦和1-0アルヒラル 埼スタ]

 痛みを乗り越え、“雑音”も封じた。浦和レッズは後半43分にFWラファエル・シルバが優勝を決定づける決勝点。18日に敵地で行われた第1戦(1-1)の先制点に続く2試合連続ゴールで2戦合計2-1とし、10年ぶりのアジア制覇を成し遂げた。

 MF武藤雄樹からの浮き球のパスに反応したR・シルバはDFオサマ・ハウサウィとうまく体を入れ替え、PA内に切れ込んだ。迷いなく右足を振り抜き、豪快なシュートがクロスバーをかすめてゴール上に突き刺さる。「ハッキリ覚えていない」という無我夢中の一撃。「武藤選手のボールを受けて、うまくターンして、強いシュートを打てた。ゴールできたけど、その実感がまだ湧いてない」。興奮は最高潮に達した。

 優勝を告げるホイッスルが鳴ると、その目には涙が浮かんだ。「言葉にならない喜びだった」。敵地での第1戦で右足首を負傷。一時は第2戦への出場も危ぶまれたが、トレーナーと二人三脚で治療に努め、驚異的な回復力で大一番に間に合わせた。

「前回の試合で足首を少しケガして、今日の試合に出られるか心配していた。1週間、トレーナーと治療して、試合に出ることができて幸せだし、感謝している」

 4-2-3-1の左サイドハーフで先発すると、後半30分ごろからは2トップの一角にポジションを移した。満身創痍の状態だったが、「彼は個人でいける強い力を持っている」という堀孝史監督の判断で終盤は守備の負担の少ない前線に残し、カウンターからの一発に賭けた。

 この采配がずばり的中。これにはブラジル人ストライカーも「素晴らしい決断だったと思う。彼がそういう決断をしてくれて生まれたゴール。そういうポジションに自分がいたからこそ、武藤選手からのボールを受けることができた」と感謝した。

「きつい痛みだった。ケガを乗り越えることができたことがうれしかった」。身体の痛みだけではない。第1戦のあと、R・シルバのインスタグラムにはサルやバナナ、中指を立てる絵文字といった差別的なコメントが相次いで投稿され、物議を醸した。

 この日、あらためてインスタグラムでの差別的な投稿について聞かれ、「何が起きたとしても自分は同じ人間でい続けたい。起きたことは起きたこととして、自分のプレーにしっかり集中していた」と力説した。

「嫌がらせについては、個人的に受け止めてはいなかった。僕の心を傷つけてはいなかった。僕からの回答はピッチで自分の仕事を見せること。僕は子供ではない。同じレベルで返すわけにはいかない」。余計なことは語らず、すべてはピッチ上のプレーで見せる。チームをアジア制覇に導く“不言実行”の決勝点は、R・シルバのサッカー選手としての矜持だった。

(取材・文 西山紘平)

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