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先輩・大迫のように。横浜FM内定CB生駒「鹿児島城西の卒業生として、自覚と誇りを持って活躍しないといけない」

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ライバル・神村学園高FW高橋大悟(左)との決戦で敗退。鹿児島城西高のCB生駒仁はプリンスリーグ残留、そしてプロでの活躍を誓う

[11.12 選手権鹿児島県予選決勝 神村学園高 0-0(PK6-5)鹿児島城西高 鴨池]

 来季の横浜F・マリノス入団が内定している鹿児島城西高のCB生駒仁(3年)は、鹿児島予選決勝で姿を消すこととなった。

 1年時からレギュラーを掴み、これまで2年連続で選手権出場を果たしてきた。1年時は2学年上の兄・稀生(現・大阪学院大)と兄弟CBコンビを組んで話題を呼んだ。昨年は2年生ながらDFリーダーとして君臨し、ベスト16で東福岡高との九州決戦で敗れるも、185cmの大型CBとしての将来性を高く評価され、Jスカウト陣の争奪戦を加速させた。

 そして迎えた今年はキャプテンを任され、心身ともにチームの柱となった。しかし、彼にとっての高校ラストイヤーは非常に難しい1年となった。

 2月の始動時に選出されていたU-18日本代表に継続して選ばれなくなり、インターハイ予選では準決勝で鹿児島実高に0-1で敗れると、プリンスリーグ九州でも思うように勝ち点を積み重ねることが出来ず、残留争いを強いられてしまう。冒頭で触れたようにプロ入りこそ決めることことができたが、チームとしてまだなにも成し遂げてはいない。

「プリンスリーグ残留と選手権出場は絶対に果たさないといけない」。

 キャプテンとして強烈な責任感とリーダーシップを持って選手権鹿児島県予選に臨んだ。準決勝では難敵・鹿児島実にPK戦の末に雪辱すると、決勝は小学校時代から親友であり、最大のライバルである清水エスパルス入団内定のFW高橋大悟主将(3年)を擁する神村学園高と対戦。今年の対戦成績は3戦3敗と分の悪い相手だったが、生駒は大きな声で周りを鼓舞したり、的確なコーチングを見せ、DFラインを気迫で統率する。

「仁は存在感が凄くて、彼がいるだけでそっちに行きたくなくなるんです。常に彼の視界から消えて、そこから勝負しようと思っていた」と、高橋が語ったように、生駒の存在感は際立っていた。高橋の絶妙なタイミングの飛び出しや、変幻自在な動きに対し、常に目を光らせながら、鬼気迫る表情で神村学園を最後まで無得点に封じた。

 だが、2試合連続となったPK戦では残酷な結末が待っていた。後攻・鹿児島城西の1人目として登場した生駒だったが、放ったキックは神村学園GK冨吉優斗(3年)に阻まれてしまった。このセーブで『当たった』冨吉によって、鹿児島城西のキックは生駒を含めて3本止められ、8人目で決着。鹿児島城西の選手権連続出場は3でストップした。

 敗退が決まると、生駒はその場にうずくまって号泣した。それでも高橋に声をかけられると、必死で応えようとしていた。止まらない涙は、試合が終わっても変わらなかった。ロッカールームから引き上げる時、生駒の声はかすれていた。

「選手権で勝つためにここまでやって来たので、悔しいです…。自分の代で連覇を止めてしまったことが本当に申し訳ないです…」

 仲間を鼓舞し続けた喉から、必死に言葉を絞り出していた。涙を浮かべる中、話が高橋について及ぶと、少しだけ表情が緩んだ。

「本当にあいつは凄い奴です。戦っていて、凄く楽しかった…。選手権で頑張って欲しいです」。

 悔しい思いの中にも、親友に対するエールは忘れなかった。もちろん、自身の高校サッカーはこれで終わった訳ではない。後輩達が来季もプリンスリーグで戦えるように、残り試合を全力で戦わなければならない。最後にキャプテンとして責任ある結果を果たすべく、そしてその後のステージで花開くべく、彼に立ち止まっている暇は無い。

「絶対に残留をさせて、来年はマリノスで鹿児島城西の卒業生として、自覚と誇りを持って活躍しないといけないと想っています。偉大な先輩である大迫勇也選手のように。でも大迫選手はまだまだ遠い存在なので、少しでも近づけるように頑張っていきたいと思います」。

(取材・文 安藤隆人)
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