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大黒柱退場の苦しい展開も、逆境乗り越えた桐蔭学園が涙の神奈川制覇!

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優勝を喜ぶ桐蔭学園高イレブン

[12.3 選手権神奈川県予選決勝 桐光学園高 0-0(PK4-5)桐蔭学園高 等々力]

 桐蔭学園が逆境を乗り越えて14年ぶりとなる全国へ! 第96回全国高校サッカー選手権神奈川県予選決勝戦が3日、等々力陸上競技場で行われ、桐蔭学園高が0-0で突入したPK戦の末、5-4で桐光学園高に勝利。14年ぶり9回目となる全国大会出場を決めた。唯一未定だった神奈川代表が決まったことによって、全国大会に出場する全48校が決定。全国大会は12月30日に開幕し、桐蔭学園は18年1月2日の2回戦で一条高(奈良)と対戦する。

 全国48番目に決まった代表校は、48校の中で最も喜びの涙を流したチームだったかもしれない。ともに4人目までが全て成功したPK戦は桐蔭学園5人目のFW岩坂公陽(3年)が左足で決めたのに対し、後攻・桐光学園5人目のシュートが枠上へ外れる。すると、GK寺澤悠大(3年)目掛けて走り出した桐蔭学園イレブンのうち数人はすでに涙。ひとしきり喜んだ後、数人がピッチに泣き崩れ、ベンチに戻ったサブ組の選手たちも両手で顔を覆うなど、溢れ出てくる涙を必死に拭っていた。

 そして、後半28分に退場していた大黒柱のCB原川凌太朗主将(3年)がロッカールームからピッチに現れると、イレブンは号泣する主将とまた喜びを共有。涙を流しながら喜ぶ選手たちの姿に目を潤ませていた蓮見理志監督代行は、「本当に子どもたちがよくやってくれたなというところで、色々な人達に支えられてここまで来ることができましたし、それが最後力になったと思うので感謝の気持ちでいっぱいです」と選手、学校関係者たちへの感謝を口にしていた。

 ラスト1枚の全国切符を懸けた一戦は前半、桐蔭学園が主導権を握る。3連覇を狙う桐光学園のロングボールやロングスローに押し込まれ、左MF田中雄大主将(3年)と右MF西川潤(1年)の突破を許すシーンもあったが、決定打を打たせない。徐々にボールを支配する時間を増やした桐蔭学園は15分にパスワークからMF若林龍(2年)が決定機を迎え、直後にもCKのこぼれ球に反応した原川がゴール至近距離から右足を振り抜く。

 GK丸山拓郎(2年)をはじめとした桐光学園の好守の前にリードを奪うことができなかった桐蔭学園だが、MF金子大樹(3年)や原川を中心に狭いスペースでもボールを繋ぐ技術力の高さを見せて相手を押し込む。それでも、桐光学園は最後の突破を許さず。逆に前線での競り合いの強さや切り替えの速さを活かした攻撃でチャンスを作り返していた。

 後半も桐蔭学園がボールを保持する展開に。そして、FW森山翔介(3年)のパスで若林が左中間を抜け出すなどチャンスを作り出す。だが、桐光学園の距離感良い守りの前に、桐蔭学園はボールこそ保持しているものの、攻めあぐねてしまう。そして28分に攻守で中心となっていた原川が2枚目の警告を受けて退場すると、試合の流れは桐光学園に傾いていった。

 数的優位を得た桐光学園はサイドからの仕掛けやセットプレーから相手の守りをこじ開けようとする。だが、蓮見監督代行が「(選手たちはこれまで)苦労していることがあったので、それでもめげずにやってきたというところがあったので、正直10人でも最後まで戦ってくれるということには自信を持っていました」と振り返ったように、桐蔭学園は逆境にも全く屈しない。

 元々CBが本職の俊足FW森山をCBへ移した桐蔭学園は、競り合いに強いCB吉田剛(3年)やサイドで身体の強さを発揮していた右SB岩本卓也(3年)、ハイボールで安定した対応を見せていたGK寺澤悠大(3年)ら個々が役割を果たして守り続ける。桐光学園は延長戦でFW佐々木倫忠(3年)のバイシクルショットや田中の右足ミドルなどで相手ゴールを狙ったものの、桐蔭学園の堅守をこじ開けることができず、PK戦で3連覇の夢は潰えた。

 桐蔭学園はインターハイ予選でベスト16敗退。ノルマのベスト8入りをすることができなかったため、学校側からは選手権予選を1、2年生で戦う方針を伝えられていたのだという。3年生たちは「そこから2か月くらい何を目指していいかわからない状態で練習していた」というが、「出れると信じて、それだけを信じて」トレーニングを続行。自分たちの選手権への情熱と、周囲の支えによって出場チャンスを得た大会で厳しい戦いを乗り越えて頂点に立った。
 
 優勝したことによって、ともに高めあってきた仲間たちとあと1か月間成長するチャンスを得た。主将の原川は「自分たちは高校生の中でも苦しい状況を乗り越えてきた仲間なので、嬉しいですし、あと1か月間は身のあるものにしていきたい」と語り、「全国制覇を目指していきたい」と意気込んだ。

 蓮見監督代行は「学校の先生たちとか、OBの方とか色々な人の支えがあったので、本当に学校が一つになってこの選手権に臨むことができました。応援も凄くあって、力を与えてくれたので、恩返しして桐蔭学園を盛り上げたいと思っていた」と語り、金子は「本当に支えられているというのはきょうの応援でも感じましたし、そういう人たちのためにも全国で自分たちが頑張らないといけないと思っています」。この日、大応援に支えられながら、また逆境を乗り越えた桐蔭学園。涙で優勝を喜んだチームは、厳しい戦いの中で深めた絆と“桐蔭らしい”パススタイルを武器に全国へ挑む。

(取材・文 吉田太郎)
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