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ロッカールームで聞いた優勝の第一報。桐蔭学園CB原川主将は退場も「宝物」の仲間たちと全国へ!

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優勝を喜ぶ桐蔭学園高CB原川凌太朗主将(3年)

[12.3 選手権神奈川県予選決勝 桐光学園高 0-0(PK4-5)桐蔭学園高 等々力]

 苦しい時期に誰よりも桐蔭学園高を支えてきた主将は、優勝の第一報をロッカールームで聞いた。

 最終ラインでのゲームメークとディフェンスラインの統率、相手の攻撃を弾く部分でも存在感を示していたCB原川凌太朗主将(3年)は、後半28分に身体を張って相手の突破を止めたシーンが危険なタックルと判定されてこの日2枚目となるイエローカード。主審がカードを手にした瞬間、天を仰いだDFはピッチを後にすると、その後、「ずっとロッカーにいて、祈るしか無かった」という。

 原川からキャプテンマークを譲り受けたMF金子大樹(3年)は「正直焦りましたけれども、不安だったけれども、彼のためにも勝たないといけないと思っていました」と大黒柱不在に危機感を抱きながらも、決意していた。彼のためにも絶対に勝つ、と。その中で金子を含めたチームメートたちが奮闘した。桐蔭学園は元々CBだったFW森山翔介(3年)を最終ラインに下げて守備に集中すると、5分間のアディショナルタイムを含めて桐光学園高の攻撃を凌ぎ切り、延長戦の計20分間も無失点で終えて見せる。

 そして、蓮見理志監督代行が「原川に勝利のプレゼントをするぞ、と。原川のためにやるぞ、そして出られないメンバーたちのためにやるぞと話しました」というPK戦を5-4で勝利。ひざの怪我でチームのサポート役に回っている10番FW千葉奨馬(3年)がロッカールームへ駆けつけ、祈り続けていた主将に優勝を知らせると、原川は「本当にありがとうという気持ちで、泣き崩れました」。その後、挨拶と表彰式のためにピッチへ戻ってきた原川は号泣したまま仲間と抱擁し、そして目を真っ赤に腫らしたままインタビューを受けていた。

 蓮見監督代行は原川の存在の大きさを口にする。「色々苦労して、チームが一つになるのも大変な時もありました。でも、みんなで粘り強くやろうというところで原川が中心になってチームを一つにまとめていた。信頼できる男だと思います」。今年、3年生はチーム方針によってBチームとして神奈川県3部リーグでプレー。インターハイ予選で結果を残すことができず、選手権予選は1、2年生チームに切り替える方針も伝えられていたという。

 その苦しい状況の中で原川は3年生たちをまとめ、チームの先頭に立って前へ進んできた。そして、この日主将はチームメートに助けられて嬉し涙。「自分も支えられたし、自分も引っ張っていかなければいけない。嫌になることもあったんですけれども、本当に選手権を目指して喧嘩とかもしてきましたし、本当に勝ちたい気持ちがあったからこその勝ちだと思うので嬉しい」。

 試合後、「宝物ですね」というチームメート一人ひとりに「ありがとうという気持ちを全員に伝えました」と原川。全国初戦(対一条高)は出場停止となるが、仲間たちが勝利して3回戦で自分の出番を与えてくれることを「絶対にやってくれると信じている――」。

(取材・文 吉田太郎)
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