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[MOM2344]青森山田MF郷家友太(3年)_得点王とプレミア連覇を両にらみ、「アイツは別格」と指揮官

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チームの3得点目を挙げた青森山田高MF郷家友太(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.3 高円宮杯プレミアリーグEAST第17節 清水ユース4-4青森山田高 アイスタ]

 点が欲しい時にこそ、点を取る――。そんな想いを抱いて大一番に臨んだ背番号10がきっちりと結果を出した。青森山田高MF郷家友太(3年)は“絶対に負けられない”清水ユースとの一戦で、終盤の2ゴールに大きく貢献。指揮官が「別格」と称える働きで、プレミアEAST史上初となる連覇の可能性をたぐり寄せた。

 勝ち点1差に迫る首位の清水ユースとの一戦は、青森山田にとって「負ければ優勝の可能性がなくなる」という大一番。しかし、前半1分に先制しながらも、「守りに入ってしまった」(郷家)ことから一気に押し込まれ、逆に3点を奪われた状態で試合を折り返す形となってしまった。

 中盤中央でニュートラルなポジションを担っていた郷家も、序盤こそ気の利いたインターセプトが見られたものの、前半はほぼ決定的な働きができず。黒田剛監督がハーフタイムにかけたという“喝”を頭の中で反芻しながら、後半に向けて反撃の気持ちを高めていた。

「2日前に静岡に入って、美味しい焼き肉を食べさせてもらった。ここまですごい距離を運転してきてもらった。そんなことをして頂いたのに、負けるのは……」。焼き肉をご馳走してくれた黒田監督、バスを運転してくれた大久保隆一郎コーチ、遠方まで応援しに来てくれた保護者など、周囲への感謝をあらためて確認し、そして決意した。「自分が得点を取って勝たせる」と。

 ここまでプレミアリーグEASTの得点ランキングトップに立つ郷家だが、直近のリーグ戦では約3か月間にわたって無得点。決して不調だったわけではなく、「チームの勝利を優先した結果、セカンドボールを回収して攻撃につなげるという働き」に徹していた。しかし、前半の3失点が入ったいま、そうはいかない。「自分が身体を張って前線に入り、強引にシュートを打つという気持ち」で後半に入った。

 そんな意気込みは、後半の立ち上がりからプレーに表れた。まずは4分、中盤でボールを奪った郷家が右に開いたMF中村駿太(3年)に展開すると、一気にゴール前へ攻め上がってクロスを呼び込んだ。そして同8分には、果敢な攻め上がりからPA右に侵入すると、強烈な右足シュートで相手GKを襲った。その後は苦しい時間もあったが、激しい競り合いからボールを少しでも前へ送れるよう奮闘した。

 そして1点を返した後の後半34分、ようやく歓喜の時が訪れる。右サイドを突破したMF田中凌汰(3年)が高いクロスを送ると、ゴール前のスペースで「来るということを信じて飛び込んだ」というヘディングシュート。「良いボールが来たので、当てすぎずに良いコースに飛んだ」という理想的な軌道を描き、ゴールネットを揺らして同点に追いついた。

 さらにその後、再び清水ユースに勝ち越されるという苦しい展開となったが、後半アディショナルタイム、MF住田将(3年)のFKに反応してゴール前に侵入。ニアサイドでGK天野友心(2年)の伸ばした手に並ぶほどのハイジャンプを見せ、再び同点ゴールを導いた。

 ボールには触れていないため、自身のゴールにはならなかったが、「たぶん自分が飛ばなかったら入っていなかったですね」と照れ笑いを見せた郷家。「うまく相手GKのブラインドになって、何か事故が起こればいいと思って飛んだ。みんなから『GKより飛んでいた』と言われたんですけど、自分の中の何か、執念のようなものが飛ばせてくれたんだと思います」。まさに、90分間を走り抜いたことを感じさせない跳躍だった。

 そんな郷家の活躍には、黒田監督も「アイツは別格ですよね」と賛辞を惜しまない。すでに来季のヴィッセル神戸加入が内定しているアタッカーについて「今でもJ3とかJ2クラスであれば急に入ってもできると思う。もっとプロだったら決めないといけないという時はあるけど、チームの勢いになる得点になった」と目を細めていた。

 この日の得点で通算9得点とし、猛追する2位を突き放して得点ランキング単独トップをキープ。さらにチームとしては、最終節のFC東京U-18戦に勝利すれば、清水ユースの引き分け以下を条件にプレミアEAST連覇の可能性を残した。「そういうところ(得点王)も意識しつつ、自分のゴールで勝たせるような準備をしていきたい」。決めるべき時に決める男が、まずは最終節で“人事”を尽くす。

(取材・文 竹内達也)
●2017プレミアリーグEAST

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