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日本vs北朝鮮 試合後のハリルホジッチ監督会見要旨

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GK中村航輔、FW伊東純也のプレーを評価したバヒド・ハリルホジッチ監督

[12.9 E-1選手権 日本1-0北朝鮮 味スタ]

 EAFF E-1選手権の男子が9日、開幕し、日本代表は味の素スタジアムの第2試合で北朝鮮代表と対戦し、後半アディショナルタイムの劇的決勝点で1-0で競り勝った。

以下、試合後のハリルホジッチ監督会見要旨

バヒド・ハリルホジッチ監督
「少し運も味方したが、いい勝利だった。相手がしっかり形を整えて守備していたので、ハーフタイムに『真ん中でビルドアップしようとすると、相手にカウンターのチャンスを与えてしまう』と話した。『ビルドアップで引っかけられるのであれば、もっと裏を狙え』と。あまりにも未熟な形で戦った部分もあったが、最終的には勝利したので、結果は良かったと思う」

─勝利以外にポジティブなところはあったか。
「いいゲームをした選手たちもいる。特に若いキーパー(中村)がいろいろな場面で解決策を見つけてくれる姿を見せてくれた。それはいい発見だった。伊東もボールを持ったら仕掛けて相手を抜いていくことができていた。そういう選手がチームにプラスをもたらすことができる。1対1で相手を抜ける選手は多くない。初めて代表でプレーする選手も少なくなかった。多くの選手が不在なので、つくっている段階の途中のチームだ。相手はベストメンバーだった。ポジティブなことは少なくない。最後まで意欲的に、焦らずに我慢強くプレーできたと思う。相手がかなり低い位置でしっかりしたブロックをつくっていたので、プレーしにくい状況だった。背後へのボールを要求していたが、背後でもらう動きも少し足りなかった。それぞれが自分のクラブでやっているプレーをしてしまった試合でもあった。もっと前を向いて、背後を狙わないといけないと選手には要求していた。特に最前線の選手たちのプレーがあまり効果的ではなく、相手のディフェンスの良さを目立たせる結果となってしまった」

─ハーフタイムの指示が実行できなかったのは、指示がうまく伝わらなかったからか、選手に実行する力が足りなかったからか。
「選手の習慣を変えるのは難しい。例えば日本は横パスが多く、背後を狙う選手が少ない。プレースピードが足りなければ、決定機をつくることはできない。非常に低いところでブロックを形成する相手の罠にハマった部分もある。低いブロックでボールを奪ったあとのパスの質も高かった。日本代表では見られないほどの高いテクニックを持っている選手もいた。この日本代表がさらにいいプレーができるかどうかは私自身も分からない。プレースピードを上げようと要求するのは簡単だ。今野や井手口にももっと前を狙っていこうという要求をしていたが、前で受ける形もできていなかった。金崎はクラブと同じようにサイドに流れる動きが多かった。この試合ではもっと中央でプレーすることを要求していた。ただ、一回話したからといって、その習慣を変えることは難しいと思う。

 つまり、我々が準備したこと、出した指示がすべてゲームで出ていたわけではない。強調して出した指示もあるが、そこがうまくいかなかったところもある。今日は結果が良かったところも見ながら続けないといけない。もっといいプレーができると私は期待している。彼らが一緒にプレーするのは今日が初めてだ。最後の30mのところでいいパスを出せる清武タイプの選手が今日はいなかった。システムを変えることも行ったが、システムを変えることで出てくる影響もある。今日の代表のプレーはスピードが遅かったし、横パスも多かった。前線の選手もあまり背後を狙わず、引いてきて足元で受けるシーンが多かった。背後を狙う動きには連動が必要だが、連動を持たせることは簡単ではない」

─緊張関係にある北朝鮮との対戦だったが、試合に影響はあったか。
「我々は政治の話をするために、ここに来ているわけではない。このサッカーの世界で友情や信頼、喜びといったものを伝えたいと思っている。選手たち同士も握手していたし、私も相手チームと握手した。私はサッカーファミリーの一員であることに誇りを持っている。少しおかしくなっているこの世の中で、我々はこの社会の中で最も良い部分を見せる世界にいる。それは喜ばしいこと。我々は友情や喜びを伝える。欧州でもアフリカでも日本でも、どこでもライバル意識はある、私はスポーツ面のライバル意識を持って戦っている。政治は関係ない。今日の試合はデュエルで激しいものがあったが、スポーツに反するものはなかった。両チームとも称えたい。我々の政治に対する答えは、このピッチで見せた姿だ。時間をともにする、ともに戦うということだ」

─中村や伊東以外に評価できる選手はいたか。
「先ほど中村の名前を挙げたが、評価すべき内容のプレーだった。これが彼にとってのデビュー戦だった。伊東も今回が初めての招集だった。彼の仕掛ける能力や抜き去る能力など、サイドで違いを生む姿を評価したい。初めてプレーする室屋や阿部、高萩や谷口など、彼らはもともとチェックしていた選手たちで、知っている選手たちだが、こういった試合でもっと(力を)出せると思う。井手口も最後に貴重なゴールを挙げてくれたが、試合中、戦っている姿は我々が知っている姿と比べると疲労があったように思う。今野はしっかりしたプレーを見せてくれたが、クラブではセンターバックとしてプレーしている。初めて集まって初めて一緒にプレーするチームなので、あまり厳しい目で見るべきではない。代表に初めて来ている選手も少なくない。例えば室屋は5、6回、不要なファウルをしてしまった。アピールしたい中でのファウルだったと思うが、未熟さも出てしまったと思う。しかし、どの選手も2試合目ではより冷静に、よりよいプレーを見せてくれると思う。不運なことにケガで離脱した選手もいる。彼らが残っていれば、より質の高いサッカーを見せられたかなと思う。ただ、今招集している選手が今日見せたゲームより良いゲームを見せられたかどうかは私も確約できない。

 私にとって、この大会はW杯に向けての選手のテストの場でもあるので、多くの選手を見たいと思う。小林悠はクラブでたくさんのゴールを決めた。川崎では他の選手たちと連動してプレーしているが、ここに来れば別の仲間とプレーすることになるので自動化の部分が足りない。相手チームがこのような戦術で守備をすることは予想していた。だから選手にはダイレクトプレーを増やすように、ダイアゴナルパスを出すように要求していた。しかし、不運なことにJリーグのFWは背後でもらう動きに慣れていない。それは必要なプレーだが、一回話して、一回練習したからといって、そこを簡単に変えることはできない。内容には満足していないが、初戦で勝利をおさめることができた部分は素直に喜びたい。日本代表として考えたとき、全プレイヤーの中でのベストメンバーかと言われれば、私はそうは言えない。日本に何百人もトップレベルの選手がいるとみなさんが思っているなら、それは間違った考えだ。このチームの選手たちはベストを尽くしてくれたと思うし、ライオンのように戦ってくれたと思うので、非難することはできない。次の試合では選手を入れ替えながら臨みたい。機能性の部分はあまり高められないが、この大会で3勝をおさめることができればと思っている。待っている試合はさらに難しい試合だ。しかし、今日の対戦相手より攻撃的に来ることも予想される」

(取材・文 西山紘平)

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